「ところで黒川さん上原パイセン何処に居るか知りませんか?」
「ちょっと分からないです」
「そうですか……ありがとうございました。稽古頑張ってくださいね」
「はい!」
黒川との話は切り上げて俺は稽古場を後にした。
アクアが家に居た以上映画の撮影はしてないと思うが……あれで上原パイセンも中々忙しいからなぁ~
……かと言って俺も時間はあるけど、夜からモデルの仕事があるし……家に戻ってもやる事は特に無いしなぁ~
最近大輝君にも会えて無いし、ちょっと寂しい……
……っと内心ため息を吐きつつ俺は稽古場から出た時だった。
『~~~♪』
スマホからピアノの伴奏によるGet Wildが鳴り始めた。
やっぱりGet Wildは良いね。
アイもこういうのを聞いて楽しめれば良いと思うが……目的と手段がごちゃごちゃしてる今じゃあ楽しめないだろうし、アクアの件もあって情緒がぐちゃぐちゃっぽいし……やっぱ無理かなー?
スマホを取り出して表示を見るとゆらからの電話だった。
『ヒカルさん出るのおっそーい』
「すみません。何かありましたか?」
『私お仕事までの間時間空いてるのでどこかで会えませんか?』
「もちろんです。何処に行けば良いですか?」
『私が通ってる大学まで迎えに来て欲しいなぁ~』
「わかりましたすぐに向かいますね」
『うん』
恋愛リアリティーショーへてゆらと付き合い既に3年が経っていた。
ゆらは俺達の事情を知ってる事もあり、子供が居る事に関して言えば昔からの付き合いなので大丈夫だし、女関係で言えばそもそも姉のアヤセと関係を持っている事もあり、今更ではあるが……
同棲していると為れば、話は別なのでニノとカナンとかなの説明がちょっと……いや、かなり手間取ったが……最終的には体で理解して貰えたから良しとしよう。
……というか、俺は何時も手籠めにして相手に無理やり納得させる手段を使っている訳なのでいい加減にしないと、いずれ刺される可能性がある。
「さて、ゆらの大学までそんなに離れて居ないし、20分位で着くかな?」
バイクに跨り俺はゆらが待つ大学に迎えに行った。
大学の入口に着くとゆらは既におり、女優として活躍してるゆらの周りには人が多くいたが、幸いナンパをするやつはおらず、遠巻きに見ているだけだった。
まーこれも番組効果とSNSにアップしてる事で世間では熱愛報道をされているから、変な虫が近寄る事はないのだろう。
「あっヒカルさーん」
こっちに気が付いたゆらが手をブンブン振って歩み寄って来た。
まるで犬みたいな反応で可愛らしく、しっぽがあればちぎれる位ブンブン振ってそうだな。
「お待たせしましたゆらさん」
「んーん、そんなに待ってないよ~。それじゃあ何処に行く?」
「アヤセさんのお店はどうですか?」
「良いよ」
「じゃあこれ被ってしっかり捕まってくださいね」
「うん♪」
ゆらにヘルメットを渡してバイクの後ろに乗せる。
ビッグスクーターだから身長が低くても問題無く乗れるし、2人乗りも楽ちんだな。
俺の後ろに乗ったゆらはしっかりと両手を俺のお腹に回して抱き着くように捕まったので、背中にゆらの胸が当たる。
こういうのを楽しむ為に俺はバイクに乗っていると言っても過言じゃないが、荷物が多いとバイクだと不便だし、車は車で天気が悪い時や荷物がある時は便利だが……触れ合いが無いのがちょっと残念なのだ。
まーゆらは彼女なのだから、ホテルに連れ込んだところで問題は無いけれど……付き合っているとは言え、週刊誌には気を付けないといけないのは変わらない。
ゆらは女優なのでアイドルの様にうるさく言われる事は無いけれど……やっぱり男性のファンが多い事から炎上する可能性は少なからずあるのだ。
炎上してめんどくさいのが事務所との問題なので、そこをないがしろにする訳にはいかないので、ゆらの事務所の代表とは少しばかりお話もして、譲歩して貰っている以上は俺も歩み寄る努力はしている。
「お姉ちゃん元気かなー?」
がっちり抱き着いている状態なので、ヘルメット越しでもゆらの声は俺に届いた。
「毎日会ってる訳ではありませんけど、アヤセさんは元気でしたよ」
「そうなんだ!」
そうこう喋っているとアヤセの経営している小料理屋に着いた。
バイクを駐車場に止めてお店を見ると電気は付いてる事から今日は営業しているようだ。
「おねーちゃん元気ー?」
ゆらは元気そうにお店の中に入って行くので、俺もゆらに続いてお店に入った。
中はこじんまりとしており、カウンター席のみで8席位しかないが……
アヤセはキャバクラ時代に大分稼いだので、貯金は有るだろうし……儲けよりも趣味に近いのだろう。
「あら、ゆら久しぶりね。それとヒカルも一緒なのね」
「ええ、開いてますか?」
「ふふ、勿論よ。お酒飲む?」
「今日はバイクで来てますし、この後お仕事もありますので……」
「ゆらはどうする?」
「私も仕事だから辞めておくよ」
「……一応居酒屋でもあるんだけど」
アヤセはそう言うと困った顔をしていたけれど、飲酒運転で捕まる訳には行かないし、そうなれば仕事先にも迷惑なのだから仕方ないのだ。
「じゃあ麦茶くださいね」
「麦茶は安いのよね~」
「私も麦茶で良いよ」
「はぁ~今用意するわ」
アヤセは困った顔をしながらそう言うと後ろの業務用冷蔵庫から麦茶を取り出して、コップに注いでくれた。年齢だけで言えば30代の筈だが、その美貌は衰える事はせずに今なお輝いている。
「じゃあ、メニュー良いですか?」
「ヒカルはどうせ何時もと同じ物でしょ?」
「そうです」
「ゆらはどうする?」
「私はサンドイッチとオムライス♪」
「はーい承りました」
アヤセはそう言うとすぐさま料理に取り掛かってくれた。
アヤセは業務用冷蔵庫からポテトサラダを取り出すとすぐさま皿に盛りつけて、そのままどんぶりを手に取り炊飯器を開けると熱々のご飯をよそってくれた。
「じゃあ先にポテトサラダとライス大盛ね」
「ありがとうございます。ゆらさん先に頂いてますね」
「え~私のが来るまで待ってよヒカルさん」
「……わかりました」
実際猫舌だから熱いお米はすぐに食べれないし、待つことは問題じゃない。
そんな事を考えて居るうちにゆらが頼んでいたオムライスとサンドイッチもすぐさま出て来た。
「じゃあ頂きまーす」
「頂きます」
この料理の様にとは行かないまでもアイ達も真の意味で家族になってくれればなと思わずにはいられなかった。