カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第101話

 中学生になってから僕を取り巻く環境はガラリ変わった。

 まずは一人暮らしをするようになったから、掃除・炊事とやる事は多くその上で生活するにあたって、生活費に関しても基本は自分でやりくりする事になったが……それには理由がある。

 そもそもの話……アイから僕に対しての愛情があったのかを確認する為には”当たり前の環境”から抜け出すのと、”孤独を知る事”が必要みたいだ。

 

 それを知る為に一人暮らしする事になったんだけど……

 

「よっ!アクア元気か? コレおかず余ったからおすそ分けだ」

「大輝さん……ありがとうございます。本当に助かります」

 

 隣に住む上原さんの息子の大輝さんがちょくちょく様子を見に来てくれて、こうしておかずを分けてくれたりするのだ。

 

 大輝さんから受けとったタッパーを見て見ると結構な量のから揚げとキャベツの千切りが入っていた。

 この量なら……明日のお昼ご飯にも回せそうだな!

 

 上原さんのおかげで食費に関して言えば、予定よりも大分浮くので……本当に助かるのだ。

 家に居た時はゴローさんが家事を率先してやっており、料理も作ってくれていた。

 アイはと言えば……仕事が忙しく帰りは遅い事もありあまり夕ご飯を作ってるイメージが無いけれど、それでも朝ごはんはちゃんと用意してくれていたな。

 実際料理に関して言えば、父さんの家に住むようになってから、父さんやニノさんから簡単な物を教えて貰ったけれど……手っ取り早いのはもやしとケチャップとマヨネーズがあればなんとでもなる事を一番に理解したし、朝は忙しいからパンとバターで十分なのだ。

 

「……それにしても、臆病者だっけ? アクアも一山当てれて良かったな」

「僕なんてまだまだですよ……それを言ったら大輝さんは今ドラマに出ずっぱりじゃないですか?」

「まーなって言いたいところだけど……この業界は実力だけじゃどうにもならないから、アクアも余裕があれば制作陣と仲良くした方が良いぜ」

「確かに……事務所の社長もそう言ってた」

「だろ? 俺も尊敬している人に昔そう教わったからな。この業界は嘘に塗れているがそれでも人である以上行動だけは嘘を吐けないんだぜ」

「行動だけは嘘を吐けないか……なんか深いですね」

「本心か打算かはさておき、結局の所最後にモノを言うのは義理と人情だからな」

「……ですね」

「じゃあ俺は帰るぜ」

「大輝さんありがとうございます。あと愛梨さんと清十郎さんにもお礼を伝えてください」

「わかった伝えとく」

 

 大輝さんはそう言うと自分の家に戻って行った。

 

「……大輝さんは両親に愛されてるんだな」

 

 もしも、父さんとアイがくっ付いて居たら僕は愛されているのか悩んでいたのだろうか? と考えてしまうが……少なくとも父さんが居る以上は悩む理由が無い事に気が付く

 だからこそ疑問に思う。

 

「何でアイは父さんと別れたんだろう?」

 

 思わず声に出してしまったが……愛に餓えてるアイが父さんと別れた理由がさっぱり分からない。

 父さんが実は借金まみれでギャンブル依存症でDV野郎のクズなら話は分かるけれど……女たらしって事以外は誠実で尽くすタイプだし、借金は無くてギャンブルだって嫌いみたいだけど……やむに已まれぬ事情がある時だけは手を出すみたいだけど基本負けないし、普段は絶対にしないから問題は無いだろうし、煙草は吸ってる所は見た事無いけど、お酒は飲むみたいだし……女たらし以外欠点は無いけれど、その女たらしなのがダメなんだろうな。

 

「……ってマズイ遅刻する!」

 

 ふと時間を見ると時刻は17時を回っており、苺プロに行く時間になっていたので、慌てて準備をして家を飛び出した。

 

 

 

「おはようございます」

 

 事務所に到着すると斎藤社長はコーヒーを飲みながら寛いでいた。

 

「おう……早速で悪いけどアクアの今後の動きだけどよ。映画が結構好評みたいで、アクアへのオファーが殺到しているからそれの相談をしたいんだが……いいか?」

「勿論です!」

 

 あの映画は……初めて主役をやった事もあるけど、仕事を受けた時のメンタル的にも丁度良かった事もあり、いつも以上に感情が乗ったのだ。

 

 しかし、斎藤社長は喜び半分困惑半分と言った何とも言えない表情だった。

 

「ただ……今までアクアがやって来た役と違って主役のカリスマ性が強いのがちょっと……心配なんだよな」

「……カリスマ性ですか? アイを見て育って来たので多少なら大丈夫ですけど……」

「あーそれがアイドルとはまた違ったカリスマ性でなぁ~しかも本格的な技も必要になってくるんだよな。一応練習期間もあるにはあるんだが……」

 

 斎藤社長はそう言って台本を渡してくれたので、首を傾げながら台本をパラパラと捲り確認したが、これは……ちょっと練習した位じゃ無理だと悟った。

 

「アカギ……ですか?」

「ああ、麻雀漫画の金字塔で有名なんだが知ってるか?」

「一応タイトルは知ってますけど……麻雀はネットゲームでやってるだけなので、イカサマなんて無理ですよ?」

「……大丈夫だ。序盤のイカサマは捨て配から三元牌を抜き取るのと捨て配弾き位だから問題ないだろう」

 

 簡単に言うけど、実際はそんなに甘く無いだろうし……

 

「……ちなみにカミキもダメギの平山幸雄として出るぞ」

「ダメギ……?」

 

 ダメギって何?

 

「まぁー主人公であるアカギの偽物で、本人とちょっとした勝負をするんだが……そこでアカギに負けて見苦しい言い訳をしたからダメギと言われてるキャラだな」

「そんなキャラをなんで父さんは引き受けたんだろう?」

「……出演時間が短いからだろーな」

 

 斎藤社長がぽつりと漏らした言葉が恐らく正解なのだろう

 

「分かりました。アカギ役引き受けます」

「ああ、頼むぞ。後もう知ってるかも知れないが、ルビーの件だけど……」

「苺プロに所属したんでしたっけ?」

 

 確かアイが話を付けてアイドルになったんだっけ?

 

「ああ、まだレッスン中でライブも何も無いけれど……どう思う? アクアは売れると思うか?」

 

 斎藤社長はおかしなことを聞いて来た。

 ルビーが売れるかどうかは本人の気質次第だから何とも言えないけれど……

 

「僕はアイドルに詳しくありませんから、わかりませんけれど……斎藤社長から見てどう思いますか?」

 

 斎藤社長は眉間をもみほぐしながら答えた。

 

「……正直言うと実はかなり難しいと思っている」

「それは一体どうしてですか?」

「……本来公平に見る立場なんだが、どうしても俺はルビーに期待し過ぎてしまうんだ。実際にアイドルとしての才能があるからこそ余計にな……後、アイの娘だからって事もあってもっとイケるだろう! と飛躍し過ぎちまって……」

 

 僕には分からないけれど……リビングで歌って踊ってた事が功を奏したってことかな? 

 

「だが……アイが現役のアイドルでいる以上はルビーにとっての評価厳しいものだと思うし、もっと言えば同じ事務所だからこそ難しいだろうな」

 

 そりゃそうだ。

 アイが現役でいる以上ルビーに勝ち目は無いし、そもそもルビーを起用する必要性が全くないのだ。

 アイのバーターであったとしても、代わりはニノさん達が居る以上はアイの劣化以下のルビーではお呼びにすらかからないだろう。

 それをどうにかするのが社長の腕の見せ所ではあるけれど……今現在アイより尖った部分が無いルビーはしばらくアイドル仕事は無いだろうな。

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