ざわ……ざわ……
赤木しげる……実在の人物では無いが、麻雀を知らない人でもキャラだけは多くの人が知ってる有名なキャラだ。
一応漫画は全巻購入して時間があるとき読み込んでいるけれど……コレ本当に出来るのか? と思わずにはいられないのが僕の感想だ。
赤木しげるの凄さは運気もそうだが、相手の深層心理を瞬時に見抜く能力だ。
「おーい授業始めるぞー」
先生がクラスに入って来たため、一旦漫画を仕舞い授業に集中しよう。
「っとその前にこの前のテスト返すぞー名前を言われたら取りに来るように!」
出席番号順で、テストの返却をされている以上僕に返されるのは大分後ろの方だけど……返却されて人達は自身のテストの点数に一喜一憂していた。
中学でも取り分け偏差値の高い学校だけど、その箱の中でもやっぱり競争はある。
みんながみんな家庭環境が良い訳では無いだろうし、習い事や部活などに力を入れてる生徒もいる以上は成績も振るわない結果になってしまうのも仕方のない事だけど……それを言われるのだけは我慢出来ない。
「次星野~」
「ハイ」
アレコレ考えて居たら、いつの間にか僕の番になっており、テストを受け取りに行った。
「星野……お前は満点だ! この調子で頑張れよ」
「ハイ」
先生はそう言うと嬉しそうにテスト用紙を渡して来た。
僕はテスト用紙を受け取って席に戻ると、隣に座っていた女子が話しかけて来た。
「星野君芸能人なのにテストで満点って凄いね! 私なんてギリギリ平均点超えた位だよ~。一日何時間勉強してるの?」
「仕事もあるからそんなにしてないよ。……強いて言えば30分位かな?」
「ええ~30分ぐらいなの!? 私なんて毎日1,2時間位勉強してるんだよ? もしかして何かコツでもあったりするの? もしよかったら私に教えてくれないかな?」
彼女はそう言うとワイシャツを着崩して、上目遣いで聞いて来たが……
「……コツ? 見て・聞いて・書いて覚える位しかないと思うけど?」
「ええ~!?」
彼女は大げさに驚いて見せたけれど……僕は小さい時から役者として活動しているからか物覚えはすこぶる良い自信はある。
それでも……父さんみたいに台本全部丸暗記なんて出来ないけれど、それでもある程度関係のあるキャラなら自然と覚える事は出来るようになったのだ。
小さい時は父さんみたいな『役者殺し』になって僕も有馬や大輝さんみたいに売れてやると息巻いていたが……役者を続けていくうちに僕には出来ないと言う事だけは理解出来た。
「そうだ! 星野君放課後良かったら一緒に勉強しない? 私星野君となら……良いよ♡」
彼女の雰囲気はまるでニノさんやカナンさんが父さんに対して誘っているような空気を出し始めた。
正直、中学生になった訳でそう言った事も知識として知っているし、僕だって興味は当然あるけれど……
芸能人なのでスキャンダルは怖いし、この間の映画がかなりヒットしてしまった以上そう言った事は注意しないといけない。
……多分父さんなら気にもせずに堂々と行くだろうけど、なんでスキャンダルになっていないのか物凄く気になるが、父さんだからとしか言えないし……
「ごめんね。今仕事が忙しくて遊んでる時間が無いんだ……時間がある時こっちから誘っても良いかな?」
「ううん。全然大丈夫だよ♡ じゃあ星野君時間がある時誘ってね♡や・く・そ・くだよ♪」
残念そうに微笑みながら彼女に告げると、彼女は好意的に受け取ってくれた様で僕の手を握り締めてきた。
中々アグレッシブな彼女だけど……多分、そういう事だよね。
そんな事を考えつつも、授業は授業なのでこっちも真面目に受けないといけない。
でも……ちょっと位は火遊びしたいなと思ってしまうのはダメなんだろうか?
~~~~~~~~~
ルビーは学校指定のジャージに着替えて苺プロの稽古場でダンスやボイスレッスンを受けながらも聞いて来た。
『B小町』が売れるまではまだ事務所も小さくてスタジオを借りてそこで練習していたけれど、今じゃあ事務所も大きくなったから、こうした稽古場もあるし昔と違い練習がしやすくなったけど……
「ねぇママ。私何時になったらライブ出来るかなぁ~?」
「……そうだね。ソロでやるにはちょっとパンチが弱いからまだまだ練習が必要かな?」
ルビーは才能があるようで、ダンスも歌も上手だし十分アイドルとしてやっていけるけど……今ルビーが踊ったのは全部『B小町』の物であってルビーのオリジナルは何一つないのだ。
「ええ~だって私歌も踊りも大丈夫だよ?」
「こう言うのは日々の特訓がモノを言うんだよ。えーっと継続はパワーなりだっけ?」
「それを言うなら力なりだよママ」
「あれ? そうだっけ? ま、いいやじゃあまた最初からステップの練習だね」
「はーい」
素直にダンスの練習をするルビーは贔屓目に見ても才能があるし、トップアイドルに成れるのも間違いないと思うけど……でもそれは苺プロじゃ無ければの話だ。
私が苺プロでアイドルをやっている以上ルビーを見る人は0人……とは言わないけれど少ないだろうし、そうなればルビーには悲しい思いをさせてしまう。
これが大手であれば、私とルビーはライバル関係になるので、やり方次第で盛り上げる事も出来るけど……私とルビーが親子関係である以上は他所の事務所に所属なんてさせる訳には行かないし、絶対に秘密なのだ。
苺プロが潰れると私だけじゃなく……役者として頑張ってるアクアにも迷惑が掛かる。
ルビーもそうだけど、私はもうアクアにこれ以上失望されたくない。
でも……私はどうすればアクアに喜んでもらえるのか分からない。
ファンやゴローさんやルビーは『アイドル』である私を見せれば物凄く喜んでくれるけど……アクアはそうじゃない。
私は容姿も恵まれて居るから、ちょっとした仕草なんかでも男性から視線が集まるけれど……アクアやヒカル君は『アイドルのアイ』を見ておらず、『星野アイ』と向き合おうしている。
それに応えて来なかった私は……母親失格なのかな?
「あ~もう無理~ママ飲み物取って~」
「……うん? あっ……ちょっと待って今持って行くよ」
汗をだくだくとかいてるルビーの声にはっとして、カバンからスポドリを取り出してルビーに渡すと、よっぽど喉が渇いていたのかルビー結構な勢いで飲み始めた。
「んぐ……んぐ……ぷはぁ生き返る~」
「そんなに一気に飲むと体に悪いよ」
「大丈夫だよママ」
ルビーは可愛らしく笑顔を向けて来た。
その笑顔は『星野アイ』では無く『アイドルのアイ』に向けられたものだ。
だから……私は今日も嘘を吐く
何故なら私は愛されたいから……
「じゃあ、少し休憩したら練習再開しようね」
「うん」
本当の『星野アイ』は臆病で弱いから愛される訳が無い。