カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第104話

 中学生になって初めての夏休みなので今日は父さんの家で朝から晩までゆっくりまったり過ごそうと思い朝一で向かった。

 

 勿論連絡は事前に入れてるし、その日は父さんも仕事を休みにするって言っていたが……

 チャイムを鳴らすとすぐさまドアが開き、父さんが来たと思ったが……

 

「あーアクアいらっしゃーい」

「有馬……その格好はどうにかならないのか?」

 

 夏という事もあり、有馬はラフな格好で出て来たが……目が半分閉じて居る事から寝ぼけているのかな?

 

「……外に出る時はちゃんとしてるから良いの」

 

 有馬はそう言うとフラフラしながらも洗面所に入って行った。

 有馬が起きたタイミングでチャイムがなったからそのまま出て来たようだ。

 

「お邪魔しまーす」

 

 僕も何時までも外にいる訳に行かないので、中に入ると美味しそうな匂いが漂って来た。

 リビングに入ると可愛らしいエプロンと三角巾を頭に巻いて、ニノさんが丁度朝食の準備をしていた。

 世間では『B小町』と言えばアイの一強のイメージが強いけど……僕から言えばニノさんの年齢を感じさせないその見た目と料理の腕なんかは正に理想の母親像なのだ。

 良妻賢母って言葉は恐らくニノさんの為にある言葉だし、広辞苑にもそう記載するべきだ。

 

「おはよーアクア君朝ごはん今から作るけど食べる?」

「食べます!」

 

 思わず食い気味で答えてしまったが……ニノさんの料理を食べれるならお金を払っても構わないレベルだから仕方がない

 そう考えると父さんの家を出た事に関しては早計だったと思わなくも無いが……これが失って初めて気が付くと言う事なのだろうか?

 

「おはよー今日の朝ごはんはなにー?」

 

 そんな事を考えて居たらカナンさんも起きて来たが……ホットパンツにランニングシャツとかなり薄着で出て来た。

 

「カナンは今日が勝負の日だから消化に良いうどんだけど?」

「えー!? ガッツリしたものが食べたいのにー」

 

 カナンさんはそう言うとかなり落ち込んでしまったが、そもそもフルマラソンの日にそんなガッツリ食べたら途中で走れなくなるし、そうなれば1位なんて無謀も良い所だと思ってしまう。

 

「……ガッツリ食べた結果負けたらどうするのよ!」

 

 ニノさんの言い分が正しいのは誰が聞いても分かるが……

 

「その選択をしたのは私なんだから……その時は明るく負けて泣いてやるわよ。だけどこのフルマラソン……どーも負ける気がしないのよね」

 

 何て言うかカナンさんは相当自信があるようだけど、フルマラソンで1位ってそんなに甘い物じゃ無いし、陸上選手だって確実に勝てるとは言えない筈なんだけど……

 

「おはようございます」

 

 そんな事を考えて居たら父さんが起きて来た。

 父さんも結構ラフな格好をしており、髪もポニーテールしていた。

 

「あっヒカルさんからもカナンに言ってあげてくださいよ」

「カミキに言われたって私はガッツリ食べたい!」

 

 ニノさんとカナンさんに朝から詰められてる父さんだけど……

 

「カナンがガッツリで良いなら……」

「ええ~」

「さっすがカミキ!」

 

 ニノさんは驚愕の表情を浮かべて、カナンさんは父さんに抱き着いて頬っぺと頬っぺをすり合わせていた。

 一体父さんが何を考えて居るか分からないが……ガッツリ食べて負けたら自腹キャンセルなの忘れてないよね?

 

「じゃあそのうどんは私が食べるわね」

 

 いつの間にかちゃっかりテーブルに座っていた有馬がカナンさんのうどんを取ろうとしたが……

 

「そのうどんも私のよ!」

 

 有馬の頭を掴んで止める辺り……結構ガチ目なカナンさんだけど、レース中に吐かない事を祈るばかりだ。

 

 その後朝食を食べ終わってカナンさんはすぐさま出かけて行ったけど……

 

「……カナンさん大丈夫かな?」

「仮に自腹キャンセルになってもカミキが払ってくれるわよ。この間競馬に行ったみたいだしね? いくら勝ったのよ?」

 

 有馬はそう言うと父さんの膝の上に座り始めた。

 有馬も身長が割と低い小柄だけど……やっぱり父さんも身長が低く有馬に背もたれみたいに寄りかかられると結構厳しそうだった。

 

 まー父さんが競馬に行ったのならば勝つのは必然だし、問題は幾ら勝ったのかが気になる。

 じっと父さんを見ると……観念したのか有馬を抱きしめながら父さんは答えた。

 

「いえ……予想だけはしましたが当たる感覚が全くしませんでしたから、競馬場には行きましたが、馬券は購入しませんでした」

「「嘘だ!!」」

 

 思わず有馬と声を揃えてしまったが当たる感覚がしないって……一体どういうことなのだろう?

 もしかして父さん不調なのかな?

 そう思って父さんを見ると普段と同じ笑顔だった。

 

「……ま、ギャンブルはやらないに越したことはありませんからね。そろそろフルマラソンが始まりますし、見ましょうか?」

 

 父さんはそう言うとテレビを付けてリモコンを操作してフルマラソンの番組に変えた。

 

『さーまもなくフルマラソンがスタートします』

『今回は例年よりも参加人数が多く、Youtuberや芸能関係の人も参加されておりますね~』

『はい……現場ではドーム公演を何度も行っているアイドルのカナンさんが初参加で1位を取れなかったら国立競技場のライブを自腹キャンセルと言う事で注目を集めておりますね』

『いやいや、フルマラソンを甘く見ているんでしょうか? 42.195キロですから1位なんて普通に考えて無謀なんじゃないんですかね』

『そうなんです! 現在カナンさんのツイッターは大炎上しており、キャンセルする位なら他のアイドルに無償で譲れとか書かれてますね』

『それに対してのカナンさんのコメントがこちらで……”私が1位を取ったらてめー等全員四の五の言わずにファンになれ!”です』

 

 フルマラソンの番組なのに内容がカナンさんの話題でいっぱいだった。

 アナウンサーが言った事が気になりカナンさんのツイッターを見て見ると物凄い量の批判コメントが書かれているし、実際に”私が1位を取ったらてめー等全員四の五の言わずにファンになれ!”ってカナンさん本人がこんな事書いてるけど……メンタル的に大丈夫なのか心配になる。

 

「父さんコレ大丈夫なの? カナンさん1位取れなかったら不味いよね?」

 

 父さんにそう聞くも……(。´・ω・)ん?って顔で返された。

 

「……どん底のどんを経験したことがあるカナンからすればこの程度のコメントなんて気にもなりませんよ。寧ろ燃えてますね」

 

 父さんはニコニコしながらそう答えたけれど、何を根拠に父さんがそんな事を言ったのか分からないが……

 

『さーそれでは今フルマラソンがスタートしました! 先頭は勿論名だたる選手……いえ、カナンさんがトップを走っております!』

『これは……最初だけ先頭を走って後で失速するパターンもありますね』

『今大会の台風の目のカナンさんは果たしてこのまま逃げ切る事が出来るのだろうか!?』

 

 そこで一旦CMが挟まったが……ここまで続きが気になった事が果たしてあっただろうか?

 手に汗を握りつつ僕はCMが明けるのを今か今かと待ち構えていた。

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