カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第105話

 手に汗を握り固唾を飲みながらもカナンさんの活躍を見ていると……ふとある事に気が付いた。

 

 有馬はテーブルに肘を置きながら学校の教科書を読みながら空いてるほうの手でお菓子食べており、父さんとニノさんはいつの間にか消えていた。

 

「あれ? 父さんとニノさんは?」

「アクアがテレビに集中している時に二人で買い出しに行ったわね」

「……マラソンは気にならないのかな?」

 

 画面越しでも分かるくらい大量の汗を掻いてはいるがカナンさん息切れはしておらず、いまなおトップを独走しているカナンだけど……勝負の世界に絶対は無いのだ。

 

「そうは言っても……これはカナンの優勝で間違いないでしょ?」

 

 有馬の言う通りでカナンさんと2位の人の距離は大分距離があるし、今なお距離は離れて言ってるのだ。

 

「……あんなにガッツリ脂っこいもの食べたのによく走れるね」

「食べなきゃ力は出ないって言ってたけど……朝からうどんとかつ丼食べれるんだから、一体どんな消化能力しているのかしら?」

 

 それは父さんにも言える事だけど……

 

『まもなく20キロ地点到着になりますが……今のところタイムはなんと50分45秒です。このままのスピードを維持できれば2時間の壁を超える新記録が誕生します!』

『いやはやこれは驚きましたが、しかしこれから折り返しなので現実的にスピードの維持は難しいでしょう』

 

 番組の司会者と現地にいるリポーターの人とのやり取りではここからカナンさんのスピードが落ちてしまう事を言っていた。

 そして相変わらずカナンさんのツイッターは今なおコメントが増えていた。

 約20キロをまだと捉えるか、それとも残りと捉えるかで大分意味合いが違うが……少なくともスタートの段階では”フルマラソンで1位なんて舐めてる”とか”常識的に考えて無謀だ”と多くコメントされていたが……半分を走った段階で少しづつ応援のコメントが目に付くようになった。

 そんな事を考えて居たらドアを開く音が聞こえた。

 恐らくニノさんと父さんが買い物から帰って来たのだろう。

 

「あっ父さん。今カナンさんが半……」

「やっほーアクア」

 

 顔を向けるとそこには大量のビニール袋を抱えて父さんとニノさんと満面の笑みを浮かべるアイとアイドルにはなったがデビューはしていないルビーが居たが……ゴローさんが居ないのは今日は泊まり込みの仕事かもしれないな

 

 そんな風に頭の中で考えて居るとルビーは有馬の所に行き……

 

「ロリ先輩!私とアイドルやりましょうよ」

「ルビーもしつこいわね~。そもそもなんで私がアイドルなんてやらないといけないのよ。役者と偶にモデルの仕事が有るから私は忙しいの」

「役者なんかよりもアイドルの仕事の方が輝けるし、すぐに有名になれますよ!」

「国民的な子役になったから知名度は今もあるわ」

「うぐぐ……じゃあ、アイドルに成れば今より稼げますよ?」

「アイドルの中抜きがえぐいのは知ってるわよ? それにお金なら役者の仕事だけで十分に稼げてるしね」

「先輩の見た目なら私に見劣りしませんよ!」

「結局見た目だけじゃない! もっとないの私の誉めれる所って!?」

「だって……私先輩の事あんまり知らないし……学校も違うから頭が良いか悪いかもわからないです」

「……少なくともルビーよりはマシよ」

「私だって勉強すれば学年トップも夢じゃないもん!」」

 

 お隣同士で年齢も近いし何より芸能界で働いてる有馬はルビーからすれば確かに欲しい逸材かもしれないが……

 勉強すればトップに成れると考えてる楽天的な思考じゃ無理だと思う。

 

「じゃあルビーの成績表見せなさいよ。それでもし私の中学1年の時の成績より上だったら考えてあげるわ」

「本当!? じゃあ今すぐ持ってくる!」

 

 ルビーは水を得た魚の様に目を輝かせて成績表を取りに行ったけど……ルビーの中では有馬の成績は悪い事になっているのだろうか?

 僕はルビーを可哀そうな目で見送った。

 

「はぁ~さってと成績表何処に置いたかなぁ~」

 

 有馬は面倒くさそうに立ち上がり自分の部屋に入って行った。

 

「ねぇアクア? かなちゃんってもしかして頭良いの?」

「ルビーと違ってちゃんと宿題はやってるようだし、学校のテストだって大体90点越えだよ」

「え!?」

 

 アイは驚愕の表情を浮かべて居たけれど……有馬から勉強をしない言い訳は聞いた事がない。

 どんなに仕事が忙しくても、やれって言われた事は必ずこなすのが有馬かなだ。

 あの性格だから優等生って訳では無いけれど……小さい時から芸能界に居た訳なのでそう言ったプロ意識は高く、そこは見習うべきところだ。

 

「持って来たよ~」

 

 そうこうしているとルビーが満面の笑みを浮かべて自身の成績表を持って来た。

 ルビーが自主的に勉強している姿が全く想像出来ないからか、僕の中でルビーの成績表は体育以外はダメな気がしてならない。

 

「あ~あったあった。じゃあ先にルビーから見せなさい」

「はい。じゃあ先輩のも見せて」

「どうぞ」

 

 ルビーから受け取った成績表を見た有馬は驚愕の表情を浮かべており、ルビーも有馬の成績表を見て驚愕していた。

 気になったので、有馬の後ろに回り横から見て見ると……ほとんど1だった。

 いや、これでよく誇らしげに成績表を持ってこれたものだ。

 

「こ……こんなのおかしいよ! 先輩の成績表がまさかこんなに良い訳がないのに~」

 

 ルビーはかなり悔しがって居たけれど……何故勝てると思ったのか理解が出来ない。

 

「……あんたこのまま行くと勤め先無くなるわよ?」

「大丈夫芸能界は学歴不問だし!」

「アイドルで売れなかったらこの先どうするのよ?」

「え……え~っと……」

「まぁ~まぁ~ルビーは私がちゃんと面倒見るから大丈夫だよ」

 

 アイは苦笑いしながら答えたけれど……

 

「あのね……ルビーこういうことは冗談でも言う事じゃ無いけれど、アイさんがどんなに頑張っても親は子供より先に死ぬのよ? その時アイさんの遺産でルビーは生活するかも知れないけれど、その遺産だっていずれは無くなるしその時のルビーは良い歳したおばさんになる訳だけど……その時は既に働き口は無くて最後は路頭に迷う事になるわよ」

 

 有馬が言ったルビーの未来だけど僕からしても容易く想像出来てしまい、ホームレスになって公園のベンチで一人寂しくしてる老婆となったルビーが見えてしまった。

 

「……いやいや、ロリ先輩何言ってるんですか? か、仮にアイドルで売れなくても見た目が良い私なら仕事なんて幾らでも……」

「……学歴不問の仕事はそんなに多くはありません。現場仕事か後は夜のお仕事ぐらいですし、別段それだけなら問題は有りませんけど……世の中はルビーが思っている以上に悪い人が居ますから、騙されて借金地獄に陥り最後は風俗に落とされて終わりですね」

 

 まさか父さんがルビーに一つの地獄を教えるとは思わなかったし、それを聞いたアイとルビーは顔を青ざめさせた。

 

「……で、でも高学歴だけが人生じゃないってカミキさん言わなかったっけ?」

「……言いましたが、聞かれた時にちゃんと説明して相手に納得して貰える自信があれば良いですけれど、ルビーの場合は良識がある人ならば決して首を縦に振る事はありませんし、肯定した場合は危ない人確定ですね」

「がーん」

 

 いや、今更落ち込んだところで仕方ないよ。

 だってやるべきことをやらなかったルビーがいけない訳だし……

 

「たっだいまー♪」

 

 あっカナンさんが帰って来た。

 

「カナンさんお疲れ様です」

「んっふっふ……どうだった私の活躍は? 見事1位を取ったし新記録も作って来たよ」

 

 カナンさんはニマニマ笑いながら聞いて来たけれど……

 

「あっルビーちゃんの話に夢中だったから見てなかったわ」

「な……なんでぇ!? 私の一世一代の大勝負だったんだよ!?」

 

 カナンさん物凄く動揺していたが……

 

「まー毎日フルマラソンしてるからカナンが勝つと思ってたしね」

「……そーだけどさぁ~。カミキはどう思う? 私頑張ったよね?」

「え? ええ、カナンは頑張りましたね」

「でしょ? じゃあさ……今日はご褒美欲しいなぁ~♡」

「分かりました」

 

 カナンさんが帰って来たことでさっきまでの雰囲気は無くなった。

 

 しかしルビーのアイドル人生は難しそうだけど、何一つ同情は出来なかったし……僕自身それに対して何も思わなかった。

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