ファミレスでの食事と宿題を終えて家に帰る道中で考える。
僕は一体アイの何を知っているのだろうか?
まずアイを調べる前に知っている事を思い浮かべる。
名前は星野アイで年齢は今年で確か……29歳になるのかな?
苺プロに所属してる『B小町』の不動のセンターでアイドルとしては完璧で究極らしい……
・料理は別に得意じゃないけど、下手では無い。
・家事も出来なくは無いけれど……仕事が忙しい為おざなりになってしまう。
・結構ずぼら
・人の名前を覚えられない駄目な人
・考えるよりも先にその場に沿った事を言う。
・かなり抜けていて失言が多い
・嘘つき
・仕事に対しては真摯に向き合って努力してるが、結果的に家庭はあまり顧みない
・完璧主義者?
・ギャンブル好き
努力していると言えば聞こえは良いけど……顧みない事でマイナスだから結果的に良い所が何一つないし、ギャンブルに嵌る典型的なダメな母親だった。
小学校の時のクラスメイトに母親の良さを聞いた事があるけど……大体が口うるさいとか言うけれど、何かあればちゃんと話を聞いてくれるって言ってたな。
アイは話は聞くけど……勉強の事は分からな過ぎて誤魔化して逃げるし、学校の行事とか行く行く言うわりにはやっぱり仕事が重なってしまい来た事は一度もない。
……いや、アイドルなんだからそもそも来たら大変な事になるし、僕もその時から子役の仕事をしているからその辺りは十分に理解しているつもりだけど、結局忙しくて来れなくなるのだからそんなこと気にしなくても良いのに、家に帰ると泣きながら謝って来る。
それがまた鬱陶しいことこの上なかったけれど……今考えるとアレはアイなりの母親としての行動なのかもしれないが、別に家でいつも会ってるのに学校でも我が子に会いたいと思うものなのだろうか?
……うーん、アイだから僕はこう思っているのかな?
良し、これを父さんと置き換えて考えてみよう。
父さんは……そもそも約束を破らないから来ると言ったら何があっても必ず来るし、仕事を言い訳に約束の反故は絶対にしない。
あれ? 置き換えて考えるも……そもそも前提条件が破綻してるから無理だった。
これだけでも父さんの良さが分かるのに……なんでアイは父さんと別れたんだろうか?
父さんの見た目が女性っぽいからかな? 実際は仕事の都合で女装もするみたいだし、それは仕方なの無い事だから責めるのは違うと思う。
でも、もしも……父さんの女装を見てアイのプライドをへし折ったとかならば分からなくもない。
カリスマモデルとしての顔もあり、その中には女装した姿の特集も組まれていた事もある。
その時は名前を変えてヒカリちゃんとしてのモデルなんだが……名前以外は何一つ不明の美少女だった。まー普通に男の状態でのモデルも売れているみたいだし、時折性別が行方不明なるけれど……父さんはれっきとした男なのだ。……男だよ?
うん……男だよね?
男って何だっけ? まーいいや!
とりあえず、父さんは家庭的で仕事も出来て収入もびっくりする程あるし、何より運が強い!
大してアイはあまり家庭的では無く、仕事人間みたいな部分がある。収入は一般的には多い部類だけど……『B小町』を解散した後はどうなるかと言えば、ガクッと下がるだろうし、女優になったとしても主役しか出来ないだろうし……一番マズイのがまさにそれだ。
確かにアイが出ればドラマや映画の視聴率や興行収入は期待できるが……じゃあ10年後あるいは20年後にはどうなるかと言えば、キャストから嫌われる女優NO1になる。
何故なら主役しか出来ないからスポットライトは独り占めだし、他のキャストは居ても居なくても変わらない存在になるからだ。
そんな扱い辛い女優を誰が起用するのだろうか?
僕が監督なら絶対に使わないな。
考えが逸れた。
詰まるところ……アイは父さんに何一つ勝る所が無いから別れた可能性がある。
別段父さんは完璧主義者では無いけれど……優先順位だけは絶対にブレないのだろう。
しかし、アイはアイドルとして完璧主義者なのでその場その場で最適解を選ぶ癖がある。
言い換えれば、父さんは不利な状況に陥ったとしても見捨てないが……アイは完璧なアイドルで有るが故に自身が不利になる選択は選べない……のかな?
なら父さんと別れた理由は……アイドルとしての答えなのかもしれないな。
そこまで考えて居たら気が付くと家に着いていた。
色々と考えてしまったけど、こんなのは結局の所確証のない推測だ。
だけど……パズルのピースが嵌る様に僕の中のアイの人となりが見え始めて来た。
そんな時だった。
スマホから着信を告げる音楽が聞こえて来た。
ポケットから取り出し見て見るとカミキヒカルと表示されていたから慌てて出る。
「あっもしもし父さんどうしたの?」
『もしもし、アクア今大丈夫ですか?』
「勿論大丈夫だよ」
『良かったです。来週何ですけど2泊3日でキャンプにでも行きませんか?』
来週? 確か予定はなかったけれど……
「ちょっと待ってスケジュール確認するから」
『分かりました』
スケジュール帳を取り出して確認すると特に仕事も入って無かったし問題なし!
「うん。特に仕事も入って無いから大丈夫だよ。ちなみに父さん以外に誰かいるの?」
僕がそう尋ねると父さんから思わぬ人物の名前が聞こえた。
『ええ、私とかなと上原さん達と後は劇団ララライの後輩の黒川あかねって子もいますね』
黒川あかね? 確か僕が通っている学校の先輩にそんな名前の子がいた気がする。
テストの点は基本100点とか言う化物染みた頭の良さもそうだけど……なんか役者の仕事もしてるみたいな事を聞いたことがある気がする。
「そうなんだ」
『では来週の月曜日に迎えに行きますね』
「わかった。何か持って行くものってある?」
『そうですねぇ~食べ物や飲料なんかはこっちで用意しますし、着替えぐらいですかね?』
「そうなの? じゃあ寝袋とかは?」
『コテージに停まりますので寝るところは大丈夫ですよ』
「へぇ~コテージなんだぁ~」
キャンプは一回も行ったことが無いから物凄く興味が出て来たし、パプリカが居るのが気になるけど……父さんと一緒なので物凄く楽しみだ。
『周りの景色も良いのできっと楽しめますよ』
「うん、じゃあ父さん月曜日ね」
『はいではおやすみなさい』
「おやすみ~」
スマホの通話を切って僕は有る事に気が付いた。
「あれ? そう言えばカナンさんの名前は言われて無かったな何でだろう?」
そう思ってカナンさんYouTubeチャンネルを見ると丁度重大告知が出ていた。
どうでも良いけど……YouTuberの重大告知って大抵重大でも何でもないんだよね。
そんな事を思いつつも重大告知の動画を見て僕は驚きを隠せなかった。
「カナン我々は信じてました」
「ええ! フルマラソンで1位信じてました」
『出たなリアル兄貴共』
『この見た目で迫られたこえーけど、こうやってストレートに信じてるって言われるのは悪い気はしないだろうなカナンちゃんも』
「そうよ私はちゃんと結果も出したし、新記録もついでに更新して来たわ!」
『フルマラソンで1時間50分をついでと言うカナン嬢に驚きを禁じ得ない』
『同じく』
『同じく』
『世界記録がついでかぁ~』
色々なコメントが流れて居るけれど……カナンさんは一体どこに向かっているのかな?
「そこでフルマラソンで1位を取ったカナンには国立競技場でB小町と対バン形式で勝負して貰います」
『何ですと!?』
『何ですと!?』
『何ですと!?』
「勿論カナンが勝つ事を我々は信じております」
「ええ信じておりますとも」
『リアル兄貴たちは今日も鬼畜だった』
『兄貴達……実に良い笑顔だ』
『俺達はカナンちゃんを信じてる』
「……燃える展開じゃない。良いわ対バンでも何でもやってやるわ」
カナンさんの目はまるでマグマの様に燃え滾っていた。
「流石カナン……そう言ってくれると信じておりました」
「ええ、ええ、信じておりましたとも……ちなみに負けた方はギャラ無しの赤字確定になります」
「上等!」
いやいや、上等って……そりゃカナンさんは良いけど苺プロが飛ぶと僕も困るし、勘弁して欲しいんだけど!?