カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第111話

 車に揺られる事3時間弱……

 座席は大きく座り心地良いし、今車内に居るのは演技好きなメンツなので……

 

「私はやっぱり役者が演出に口出すのはどうかと思うけど……」

「それはそうよ……でも、言われた事をそのまま演じるのと自分の考えを込めるのじゃあ演技の質が変わって来るわ!」

 

 特に前の席に座る有馬と黒川さんは出発直後の百合の空気は何処へやら、今じゃあバチバチやり合っていた。

 

「「カミキ(さん)はどうおもうのよ(思いますか?)」」

 

 しかし、声を揃ってしまう辺りは仲が良い

 

「是非カミキ先輩の考えを俺にも教えて欲しいものだ」

 

 上原さんも楽しそうに父さんに聞いたところで父さんが軽く咳払いをして答えた。

 

「こほん……今から言うことは実績もそうですけど、あくまで信頼関係が有るのが大前提ですからね?」

「分かってるわよ」「も……勿論です」

 

 其処は揃わないのか……

 

「口出すって……言い方はちょっと不味いので、演出家にはあくまでお伺いを立てる形ですね。『この場面なんですけど……こういう演技ってどうでしょうか?』って言い回しが必要です。そうじゃないと喧嘩売ってる事になりますからね」

「最悪てご……もが」

「パイセンは黙ってサンドイッチでも食べながら運転してくださいね」

「モグモグ」

 

 上原さんは一体何を言おうとしていたか分からないが……バックミラー越しに父さんにサンドイッチを食べさせて貰えて喜んでいた。

 

「えー話を戻しますけど……金田一さんみたいに話が分かる演出家ばかりではなく、尖った人も多くいますので、その時はサッと気持ちを切り上げて現状出来る最高の演技をしてとっとと帰るだけです」

「いやいや、金田一は口出ししたらかなり怒りますよ?」

「私は怒られた事はありませんけど?」

「そう言えば……カミキは唯の一度も怒られた事無いわね。何かコツでもあるの?」

「それは私も気になるわ」

「……不思議と兄さんは怒られて無いんだよなぁ~」

「うん? 俺も金田一さんには怒られた事無いぞ」

「……清十郎はカミキから言われてるからね」

「……おう」

 

 父さんの立ち位置が全く分からない!

 

「……そうですね。私は金田一さんとは長い付き合いですし、性格は良く分かっていますから、見るべきポイントを抑えております。なので、気にするだろうなって部分を注意しているに過ぎません」

 

 うん? 父さんが言った事は納得が出来ても理解が出来ない?

 

「……つまり金田一さんをメソッド演技で再現してるってことですか?」

「そうですよ? だってその方が手っ取り早いですからね」

 

 手っ取り早いからって……そんな事を出来るのは父さん位なんじゃ?

 

「アクアは関りが無いので分からないと思いますが……金田一さんの演出家としての力はララライに所属してる人は分かりますよね? ならばそれを他のドラマや映画なんかに持ち込んでやれば……作品の質は上がるし、自身の演技力は向上するし、撮影時間だって短縮出来るし、収入もアップと良い事尽くめですから、やらない手はありませんよ」

 

 ふつーはそんな事出来ないんだけど?

 

「結論を言えば……私達に出来るのはまず言われた『役』を完璧に熟す事で、そのために考えを伝えるのは間違っていないって事で良いわね?」

「……そうですね。後は言い方に気を付けるぐらいです。黒川さんも基本はメソッド演技をしますよね?」

「はい、役への理解がしっかり出来れば、その役を自身に落とし込めるので……自分なりに調べてますね」

 

 黒川さんはそういうと照れながら答えた。

 

「……しかし、メソッド演技は難しいですよね。自身の解釈と一致するキャラと舞台ならば非常に強力な武器になりますけど、演出家や脚本もそうなんですけど舞台であれば時間が足りない為、キャラの性格が変更になって不一致なんてことはよくある話ですし……そうなれば逆に足枷になります」

「……そうなんですよね。原作ありきだと特にそう言った事があります。そう行った時カミキさんはどうやってますか?」

「……演じるにあたって私の感情は関係ありません。監督がそれでヤレと言うのであれば、それでも結果を出すのがプロです」

 

 それってかなりのブラックなんじゃないかな?って思わずにはいられないけど……

 

「……時代に合わない古臭い考えですが、だからこそ私は役者として今なお仕事があるのです。『このキャラはこんな性格じゃない!』『キャラの改変は悪いことだ!』……色々と言いたいことはあるだろうし、それ以上に言われる事もありますけれど……役者をやっていて一番気持ち良いのは、今まで批判されていたものが……いざ公開されて見れば、意見がひっくり返り絶賛された時が最高に気持ちが良いのです」

「確かにそうね。公開する前は散々ボロクソ言って来たのに……公開後は気持ちが良いほど手のひらを返された時は、何とも言えない達成感があるわね」

 

 姫川さんはそう言うと父さんに同意していた。

 

「まぁーしかし、こんな考え方は老害みたいなもんだし……それで潰れる奴も大勢いるのも確かだ」

「……そうです。しかし、芸能界に限らず……社会はそういうものです。業界って言葉がある以上。ライバルのいない全く新しい仕事を0から作り出せたとしても、需要があれば似たような仕事をやる会社が出てきますし、そうなればクオリティーの高い方が生き残ります」

「まっ競争社会だから仕方ないけどな」

「そうね……こればかりは仕方ないわね」

 

 確かに需要が無くなれば……淘汰されるのは仕方が無い事だ。

 

「私も一時期仕事が無かったし……その辺りは良く分かるわ」

 

 有馬はぽつりとそう言ったけれど……

 

「私は子供の時かなちゃんにやりたい仕事殆ど取られてたんだけど?」

「そんなの知らないわよ! それはあかねの実力不足でしょ?」

「ごふぅ」

 

 この憎きパプリカは相変わらず口が悪い!

 

「かなちゃんだっていきなりピーマン体操以降は売れなかったのに……」

 

 黒川さんは有馬にそう言い捨てた。良いぞもっと言ってやれ!

 しかし……僕の思いとは裏腹に父さんがフォローし始めた。

 

「かながピーマン体操以降売れなかったと言うのはちょっと違いますよ黒川さん」

「え!?」

「厳密に言えば……かなが所属していた事務所はあくまで『子役』の事務所ですし、対象年齢が超えてもかなに対しては少なからず仕事もありましたので、事務所としては温情がありました」

「そ……そうなのかなちゃん?」

「そうよ。カミキが今言った通り、私の年齢が逸脱したからこその結果で、……私の実力は多少はあるかもしれないけれど、一概にそれが原因って訳じゃあ無いわよ。まーその後は劇団ララライに入って役者の仕事や偶にモデルもやってるけどね」

 

 このパプリカにも色々な事があったのか……

 

 そんな事を考えて居たらいつの間に車は高速道路を折りており、軽井沢に到着していた。

 

「『役者殺し』なんて言われてる私が言って良い事ではありませんけど……仕事を取った取られたは言いっこなしです」

「……でもそれってズルく無いですか?」

「僕も正直言えば……ズルいって思う」

 

 実力以外の部分で仕事を干されるのは……この業界に長い事居るので理解は出来るけどやっぱり納得は出来ない。 

 

「……黒川さんには以前言いましたけど、ズルをしている以上はそれ以上の利益を出さないといけません。しかし、覆せる何かがあれば……それはチャンスに他ならないです」

「……私も子供じゃないので分かってますけど……」

 

 黒川さんはそう言うけれど……

 

「皆がみんな同じ努力をして同じように褒められる世界なんてつまらないじゃないですか?」

「うっ! 確かにそうですけれど……」

「これは私の極論ですけど……価値があるのは1位だけで良いと思ってます。」

「ええ!?」

 

 これには僕もびっくりした。

 

「これは昔のお話ですけど……とある高校のクラスでテストがあり、80点を取った子が自分よりも点数が低い子を馬鹿にしてました。馬鹿にされた子は当然悔しがりますよね? そんな時に先生がクラスに入りましたが80点を取った子はなおも言い続けてましたが……その時先生はその80点を取った子に対してなんて言ったと思いますか?」

「……そんなこと言ったらだめとか?」

 

 黒川さんはそう答えたが……父さんにんまり笑って答えた。

 

「違います。その先生はこう言いました。『80点ごときで自慢してるんじゃねー! 良いか100点だ! 100点だけが価値がある! それ以外は大した差は無い』と」

「ええ!?」

「……今の時代じゃ絶対にアウトよね」

 

 ……不適切にも程があるよね。

 

「それでも80点を取った子は納得しませんでしたが……先生は続けて『0点も80点も俺からすれば大して変わらん!』って言いました。そこまで言われてしまえば80点を取った子は何も言えずに席についてしまいましたとさ」

 

 父さんがそう締めくくると上原さんと愛梨さんは笑っており……

 

「昭和ねぇ~」

「間違いなく昭和だな! よしっと着いたぞ」

 

 そう言うと車は目的地である軽井沢コテージに着いた。

 

「……ちなみに80点の子はその後のテストで100点取ったの?」

「どうでしょう? まーテストで100点を取るにはかなりの努力が必要ですから、馬鹿にするのはどうかと思いますけど自慢する位は良いと思います。さて、じゃあ私は手続きして来ます」

 

 父さんはそう言うと車を降りて管理事務所に向かって行った。

 

「良し、じゃあ一旦荷物下ろすぞ~」

 

 上原さんの言葉を聞いて各自荷物を運び出したが……

 

「清十郎? まだイケる?」

「おう! 任せろ」

 

 カバンと荷物を山の様に抱えていた。

 

「お待たせしました。今手続き終わりましたのでこっちのコテージに運んでください」

「おう!」

 

 上原さんは男らしい返事をしたけれど……あの細い身体の何処にそんな力があるのだろうか?

 

「大輝君すみません。鍵渡しますのでドア開けてくだいね?」

「わかった」

「カミキさんはどうします?」

「私はバーベキューのセットしてますね」

 

 父さんはそう言うとテキパキと準備をし始めた。

 

 バーベキューなんて父さんがやっているところ見た事無いけれど……慣れ等手つきで準備を進めており、薪や鉄板なんかはすぐさま終わり……椅子や簡易的なテーブルの容易にコストコで買った大量の食材も出し始めた。

 

「おっカミキ意外と手際良いな! 俺がやろうと思っていたのに……」

 

 あの大量の荷物を運び終えて上原さんは戻って来たけど……全くどんな体力してるんだこの人?

 

「大輝君達はどうしました?」

「ああ、荷物の整理をしてたけど……まぁすぐ来るだろう?」

 

 上原さんはそう言うとクーラーボックスからお酒を取り出して父さんの前に置いた。

 

「じゃあ、皆戻ってきたら乾杯しましょうね」

「おう!」

 

 10分後には全員戻って来たのでバーベキューを行うべく火を点けた。




焼肉奉行あかね……降臨
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