カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第112話

「あっパイセンお米用意してなかったんでお願いして良いですか?」

「炊飯器は有ったけど……今回は飯盒炊爨で良いか?」

「キャンプの醍醐味ですね」

「ちょっと管理事務所に行って聞いて来る。何個持ってくる?」

「あ~3個あればお願いします」

「おう!」

 

 父さんは上原さんにお願いするとすぐさま管理事務所に向かって行った。

 

「じゃあ、私はお米研いでるわ! 12合分で良いわよね?」

「そうですね……7人なのでそれぐらいあれば足りますね!」

 

 姫川さんは鼻歌を歌いながら先ほどコストコで買ったお米を持ってコテージに行ったけど……12合で足りるかな?

 

 なんか桃太郎の冒頭みたいになってるのは気のせいかな?

 そんな中父さんは今日使う食材を吟味していており、野菜やお肉など使う分だけ出し始めた。

 

「うーん……凝ったものは夜に作るとして、今回は焼き肉をメインで行きましょう」

 

 父さんがそう言った時だった。

 

「あっカミキさんそれなら私に任せてください」

 

 黒川さんがそう言うと、父さんは一瞬考えたようだけど……

 

「分かりました。それでは黒川さんにお願いしますね。私はその他の準備をしてます」

 

 父さんはそういうと組み立て式のテーブルを手早く設置して、その上に紙皿を用意してそれが終わったら今度は少し離れた所でY状の鉄の棒を二本地面に刺して、その真ん中に薪を置き火の準備をし始めた。

 

「借りて来たぞ!」

 

 上原さんは飯盒を三つ持って来た。

 

「お米も研ぎ終わったわ」

「良し、じゃあこれにお米を移して水も適量入れてくれ」

「分かったわ」

 

 丁度良いタイミングで二人が戻って来て、準備を進め始めたが……夫婦仲いいなぁ~

 

「じゃあ、今こっちで火の準備も出来たので、この棒に通してくださいね」

「おう!」

 

 そして、全ての準備が整い、そのまま火を点けるかと思いきや……。

 

「あれ? まだ火を点けないの?」

「ええ、お米を浸水させた状態で20~30分放置した方が美味しく炊けますからね」

「へぇ~そうなんだぁ~」

「あれ?今の子って飯盒炊爨習わないですかね?」

 

 父さんは首を傾げて聞いたが……

 

「俺は林間学校でやったな」

「私も林間学校ね」

 

 上原夫妻は手際が良いので知ってるのは見て取れるが……

 

「大輝君はどうでした?」

「飯盒はやってないな……炊飯器で炊かれたご飯にカレーをかけて食べたのは覚えてるけど」

「大輝君がやって無いとなると……かなや黒川さんにアクアもやった事無いですね」

「時代だな~」

「時代ね~」

 

 大人三人組はそう言って納得した。

 

「カミキさ~んこっちはもうお肉焼き始めますね~」

 

 黒川はそう言うとトングを2本もって張り切っていた。

 

「お願いします」

「任せてください!」

 

 ……美味しく食べられるならなんだって良いかな?

 

 それからしばらくして、父さん達はようやく飯盒に火を点け始めた。

 それと同時に黒川さんも肉を焼き始めたが……

 

「あかね……何もタンだけ焼かなくてもいいんじゃない? カルビやホルモンも有る訳だし……」

「タンも良いけど……カルビが食べたいぞ」

「二人とも美味しい焼肉の食べ方はまずタンからだかね!」

 

 笑顔を向けて大輝さんと有馬にそう言うと黒川さんだけど……目は笑っていなかった。

 その時笑顔が初めて怖いものだと僕は知った……

 

 喋りながらも、神経を研ぎ澄ませて黒川さんはタンを焼き続けて……頃合いを見て全員の紙皿に乗っけ始めた。

 

「「「頂きます」」」

 

 僕と大輝さんと有馬は黒川さんに見られながらタンを口に運んだ。

 

「美味いな」

「やるじゃないあかね!」

「美味しい」

「えへへ……じゃあどんどん焼いて行くね!」

 

 褒められて嬉しかったのかトングを両手に持ち黒川さんはどんどんタンを焼いて行った。

 いや……タン以外も焼いてくれないかな?

 

「良し、ご飯も炊けたようだな!」

「ご飯欲しい人ー」

「「「「はーい」」」」

 

 焼肉にはご飯が必要だ! 異論は認めないし反論は許さない!

 

 父さんが別の紙皿にご飯をよそって皆に配り、ようやく焼肉に参戦したが……

 

「黒川さん? 何故タンだけをそんなに焼いてるんですか?」

「カルビとかホルモンは油分が多いから……片付ける時大変だと思って気を遣ってるんじゃないか?」

「それなら大丈夫だから……ホルモン焼いて♡」

「うぅ~分かりましたぁ~」

 

 先ほどとは打って違い黒川さんは渋々ではあるものの……他の肉も焼き始めた。

 

「あっフランクフルトもそう言えばあったから焼きますね」

 

 父さんはそう言うとパックからフランクフルトを取り出して空いてるスペースに置き始めた。

 

「カミキと愛梨……酒はどうする?」

「私はレモンハイ」

「私はエビス!」

「おう」

 

 上原さんは父さんレモンハイを姫川さんにエビスビールを渡すと二人はプルタブを開けて一気に飲み始めた。

 

「「ぷはぁ~焼肉とお酒は良いわね!」」

 

 二人ともパクパクと焼肉を食べてはお酒を飲んでいるけど……姫川は兎も角父さんがそんなにお酒を飲んでる所は見た事無いけど大丈夫かな?

 

 僕の視線に上原さんが気が付いたようでウーロン茶を飲みながら答えた。

 

「カミキと愛梨なら酒豪だから大丈夫だぞ」

 

 上原さんがそう答えた時だった。

 

「清十郎何一人だけウーロン茶飲んでるよ? あなたも飲みなさいよ」

「……おう!」

 

 姫川さんにグビグビ飲まされてるけど大丈夫かな?

 

「ああ、家では何時もの事だし……父さんも母さんも酔っぱらって暴れるなんて事はしないから心配するなアクア」

 

 大輝さんは念願のカルビを食べながら答えており……物凄く幸せそうだった。

 

「あっカミキフランクフルト食べても良い?」

「どーぞ」

 

 有馬はそういうとさっき父さんが有無を言わさずに置いたフランクフルト取り……その小さいな口でかぶりついた。

 

「うーん美味しい!」

 

 ……何だろう? 有馬の見た目の所為も有るけど……物凄い背徳感を感じる。

 そして、そう思っていたのは僕だけでなく……

 

「……かなちゃんかなちゃんかなちゃんかなちゃん」

 

 焼肉を焼いてる音にかき消される程小さな声だったけど……僕の耳にはしっかりと黒川さんの声が聞こえたので、思わず顔を向けると……ルビーやゴローさんがアイを見る時と同じ表情をしていた。

 黒川さんはどうやら有馬の厄介オタクだったようだ。

 

「ね……ねぇかなちゃん私の分のフランクフルト食べても良いよ?」

「あら、じゃあ頂くわね」

 

 有馬は幸せそうにフランクフルトにかぶりついた。

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