父さんは眉間を揉みながら考えてくれたが……
「……割らせるとなれば脅すか? でも仮に上手く行ったとしてもそうなればアクアがクビになるし、刑事罰は避けられなくなる。懐柔しようにも苺プロは経営危機に陥ってる訳じゃ無いから無理だし……」
なんか怖い事を考えて居るけど大丈夫かな?
「うーんアイさんの過去を知る人物……あの可愛らしい見た目とは裏腹に友達は一切いない。だけど……アイさんも人間である以上は……あっ!」
どうやら父さんは何か思いついたようだけど、何故人間ってワードで案が思い付いたのか……それが分からない。
「アクア……嘘吐きのアイさんも我々と同じ人類であるのは確かです」
「流石にそれは分かるけど……」
物凄く真面目な顔してる父さんだけど……物騒な事を言ったかと思えば今度は素っ頓狂な事を言い出した。
「……同じ人類で有る以上はアイさんにも両親は存在してる筈です」
「いや……うん……確かにそうだけど……」
何で父さんは逆に親の存在に……ってそう言えば父さんは両親が居ないんだった。
そう考えると……父さんは今までどうやって生きて来たのか不思議で仕方が無い。
「私がやるとちょっと不味いのですが……アクアなら戸籍を調べる事が出来ますので、役所に行ってみてくださいね」
「え!? 父さんやってくれないの?」
「ええ……やってやれない事はないんですけど、バレたら犯罪になります」
「……そうなんだ。ちなみに僕だと何で大丈夫なの?」
「今回の場合アクアはアイさんの子なのでアイさんの両親の戸籍を調べるのは問題ありません」
「父さんだとなんで駄目なの?」
「私とアイさんは公的には赤の他人ですから……正当な理由が無い場合見る事は出来ません。もし、それをやるのであれば……アイさんの親類を騙る事になりますので捕まれば刑事罰に問われます」
父さんは僕の父親なのに公的には赤の他人と言われて少なからずショックを受けてしまった。
「……ちなみにアイさんはゴローさんと結婚する気は無いんですかね?」
「……多分しないと思うよ」
「……そうですか」
正直な事を言えば結婚するメリットが一体何なのか僕には分からないけど……世間では愛し愛された人同士がするものの筈だよね?
「結婚するメリットって何かあるの?」
「……メリットですか? まー言ってしまえば結婚は一種の契約ですから、浮気やそう言った事をした際には慰謝料を請求する事が出来ます。これが唯の彼氏彼女の関係であれば出来ない訳ではありませんけど請求は難しいですね」
それを聞いて思ったのは父さんは結婚したらダメな人間だと思った。
少なくともニノさんやカナンさんは許してくれるかもだけど……ゆらさんやアヤセさんは浮気は許さないと思うし……最悪刺されるじゃないかな?
「それ以外で何かあったりする?」
「私もそれほど詳しい訳では無いですけど……色々な制度を受けれた筈なので、一般的な家庭であれば家計が助かりますね」
「ちなみに家はそういうの受けれるかな?」
僕がそう尋ねると父さんは困った顔をして見せた。
「出生届けは役所に必ず出してるはずなので受けれるとは思います。それにしてもアイさんは隠し通せてると思っているようですが……実際は世間にバレてはいないだけで、役所で働いてる人は把握してると思いますよ」
「そうなの!?」
父さんの言葉に僕は驚きを隠せなかった。
「住民票は……ゴローさんに協力して貰えれば恐らく問題はありませんけど、先ほど言った出生届には『星野愛久愛海』と記入されてる筈です。別段『星野』なんて苗字は珍しくもありませんけど、星野の姓を名乗ってるのにそこに雨宮吾郎が関わるとなれば”何か”があると思われるので、裏を取るのは確実です」
「……し、知らなかった」
「まぁ違反していなければ問題はありませんが……結局の所アイさんがゴローさんと結婚していれば解決する問題なんですけど……今更な部分はありますね」
父さんはため息を吐いて答えた。
何と言うか……我が家は色々と爆弾を抱えており、アイがアイドルを卒業したとしても今度は不発弾として何時までも残りそうだ。
「……ちなみに父さんはアイと結婚する気はあったりする?」
「え!? アイさんとですか?」
まるで寝耳に水みたいな事を聞かれて父さんは驚いて居たけれど……そう言えばアイと別れた時に一筆書かせたのは知っているけど……別れた理由に関しては聞いて無いな。
「アクアには申し訳ありませんけど……別れる前なら兎も角、今更アイさんと結婚する気はありません」
「理由を聞いても大丈夫?」
「アイさんは自分の幸せは追求しますが……子供の幸せに関しては無関心とまでは言いませんけど、あまり考えていませんからね。だからと言って家庭を顧みない仕事人間かと言えばそういう訳ではなく、良い人振る傾向があります」
父さんの言ってる事の意味は一緒に生活していた僕には良く分かる。
学校行事の参加に対して軽く二つ返事をするけれど……仕事が忙しくて結局来ないないなんてことは多々あった。
家の事は仕事が忙しいからあまりやらない……でも、僕も一人暮らしをするようになってからは良く分かるし、責める事はしない。
「……でもやっぱり誤魔化すのは良くないよね」
「……そうですね。アイドルなので嘘を吐くのは仕方が無いかもしれませんが、日常生活でも誤魔化してばかり居れば、ファンでもない限り信用を失います。しかし、アイさんにはそれが分からないのです。だから『嘘は愛』なんて訳の分からない事を平然と言えてしまうのです」
「……それが気になるんだ。嘘を吐かないなんて普通の事なのにそれをましてや『愛』なんて言えるのなんてやっぱりおかしいもん」
「……確かにアイさんは『異常』ですけど、擁護施設に入るとなればそれ以前の生活環境も決して『普通』な訳がありませんし……これは是非ともアイさんの両親にお話しを伺いたいですね」
どうやら父さんもこの件に噛んでくれるようだ。
「じゃあ僕の方で戸籍を確認するよ」
「お願いします」
暗礁染みたアイの過去だけど……当初の目的と違い怖い物見たさもある。
一体何が見れるのか不謹慎だけど、ワクワクしている自分が居た。
あかねちゃんの探偵能力と考察(ネタばれ注意)
・台本に星野アイの母親星野あゆみの名前がある。
・台本には過去に窃盗で捕まった事が明記されてる事から前科持ち
・あかねちゃんのパパは警察関係者(小説情報?)
・パパを通して調べて貰う事は不可能では無い(なお職権乱用ではあるが……)
アクアがあゆみの家から帰る時あかねが居たのはアクアにGPSでも仕掛けてたか……警察仕込みの張り込み術を会得していたか……あるいは両方かも……