父さんに色々相談した結果大分時間も過ぎていた。
「アクアもう結構良い時間になりましたのでそろそろ寝ましょうか?」
「そうだね。父さん……相談に乗ってくれてありがとう」
「いえいえ、私で良ければ何時でも相談に乗ります」
そう言って僕と父さんはコテージに戻った。
父さんはリビングのソファーの背もたれを倒してベット状にして、肘置きを枕代わりにすぐさま寝始めた。
僕も部屋に戻って寝るとしよう。
結構良い時間だから大輝さんも寝ているかもしれないし、音を立てないように移動して部屋に戻った。
案の定部屋は既に暗くなっており……大輝さんはぐっすり眠っていた。
僕もベットに潜り込み目を閉じるとすぐさま眠気がやって来たので、心地よい眠気に身を委ねた。
「……!! 二人とも起きて! 大変なの!」
部屋のドアをどんどん叩く音と黒川さんの声が聞こえる。
まだ寝足りない気がするけど……窓からは朝日が差し込んでいた。
一体何時なのかと思いスマホで時間を確認すると現在の時刻は7:30……まだ慌てる時間じゃない筈だ。
寝ぼけつつも向くりと起き上がり隣のベットを見ると寝ている筈の大輝さんは居なかった。
大輝さん……ものぐさなイメージがあるけど意外と早起きなのかもしれないな。
そんなことを考えつつドアに向かい開けると……ダークブルーの可愛らしいパジャマを着た黒川さんがおり、物凄く慌てていた。
「アクア君大変なの……かなちゃんが部屋からいなくなったの!」
黒川さんの言葉に思わず頭を抱えてしまいそうになった。
「あ~それなら大丈夫ですよ」
「な……なんでアクア君はそんなに落ち着いているの?」
それは有馬とも一緒に暮らしていたからだし……
有馬の奇行も知っているのだ……
「有馬なら多分カミキさんと一緒に寝てる筈だよ」
「嘘!?」
「嘘って言われても困るけど……まぁ大方寝ぼけてカミキさんの寝ているところに潜り込んでるから大丈夫だよ」
「……それってカミキさんとかなちゃんって出来てるんじゃ?」
これはどっちだ? かなちゃんかなちゃん言ってるから有馬に対しての友情なのかそれとも愛情じゃ無いけれど……ルビーがアイを見ている目に近い気がする。
「……それは当人同士が決める問題であって外野がとやかく言うものじゃないんじゃないかな?」
とは言え……有馬が父さんと結婚して母親になるのはかなり気まずいし、もしそうなれば僕はもう有馬の事をパプリカ呼びは出来なくなるだろう。
「とりあえず……かなちゃんの安否を確認するのは当然だからアクア君着いて来て!」
言うが速く黒川さんは僕の手を引っ張りながらリビングに歩き出した。
……と言っても大した距離がある訳も無いので、父さんが寝ているソファーベッドを見ると、毛布で隠れているが父さんの胸元に赤い頭がすこしはみ出ていた。
「Zzz」
「Zzz」
父さんも有馬も幸せそうに寝ている事だし、そっとしてあげよう……
「喜んで良いのか……悲しんで良いのかわからないよぉ~」
黒川さんは膝から崩れ落ちたけど……こんなのはどの家庭にもあるありふれた光景なのだと思う。
ただ年齢的には若干アウトチックな気がするけれど……父さんからすれば有馬は子供だし問題は無いだろう
「……有馬も無事見つかったようだし、僕は2度寝するよ」
「待ってアクア君! 少し聞きたい事があるんだけど……?」
何だろう……有馬の所為で僕に飛び火した気がする。
ほっぺをフグの様に膨らませて私怒ってますと黒川さんは子供の様に表現しているけど……学校の噂で聞いた人物像とは大変違う
もっと内気な子だって聞いたけれど……有馬に対しての感情は激重なのはなんでだ?
「黒川さん……もう一度言うけど僕は眠いんだ」
「うっ! ご……ごめんねアクア君私ちょっと舞い上がってたみたい」
そう言うと黒川さんはしゅんと項垂れたけれど……あれでちょっとなら、本気の時は一体どうなるのだろうか?
「……今度からかなちゃんにはGPS付けなきゃ!」
黒川は有馬の専属ボディーガードかな?
あんまり深く知ると厄介な事になりそうだから僕は部屋に退避しようとした時だった。
入口のドアが開く音が聞こえた。
黒川さんが大騒ぎしたからすっかり忘れて居たけれど……そう言えば大輝さんも居なくなってるんだよな。
「……ハァハァあ~疲れたぁ~。シャワー浴びてもうひと眠りするかぁ~」
外で運動をしていたようで、汗をだくだく掻いた大輝さんが丁度戻って来た。
大輝さんの様子を見るガッツリやっていたようだ。
「……大輝さん部屋に居ないと思ったら運動していたんですか?」
「ああ、アクアおはよう……ま、日課のジョギングだな。やっぱり体力が無いと役者は務まらないしな」
旅行中とは言え……大輝さんはストイックだった。
演技力もそうだけどこういった陰ながら努力もやっているのを見ると僕も負けて居られないな。
「じゃあ悪いけど俺はシャワー浴びて来る……黒川覗くなよ?」
「私はそんな事しません!」
内気でおしとやかって一体なんなんだろう?
黒川さんを見て疑問に思ってしまった。
それから部屋に戻り僕は二度寝した。
目が覚めた時……美味しそうな匂いが漂っていた。
時間を見ると10時になっていた。
「ふわぁ~良く寝たぁ~」
起き上がり隣のベットを見ると大輝さんは……やっぱりおらず恐らく下に居るのだろう。
僕もお腹が空いた事だし……リビングに向かった。
リビングに着くとテーブルにはかなりの量の料理が既に置いてあり、みんな既に揃っていたが……
「おはよ~」
「アクアおはようございます」
「アクア少し寝過ぎなんじゃない? 大丈夫?」
パプリカは飽きれたような目で僕の事を見ていたけれど……
「……有馬の狂信者に気持ち良く寝ていたら起こされたからね」
「ちょっとアクア君! 私はかなちゃんの狂信者なんかじゃないよ!」
いや、厄介ファンよりも質が悪いからね
「……それは悪い事したわね」
「かなちゃん! 元はと言えばかなちゃんが部屋に戻って来ないから私心配しただけなんだよ」
「……いや、そもそも心配される程の事じゃ無いわよ」
「逆にあかねちゃんと一緒の部屋の方が心配になるわね……」
「そうだな……有馬と同じ部屋になった事で舞い上がった黒川が何かしないとも限らないからな」
「ちょっと上原さんに姫川さん私はそんな事しません!」
黒川さんは物凄く否定しているけれど……それはそれで怪しいものだ。
「……ところでカミキさんは?」
「ああ、カミキなら……」
上原にそう尋ねると丁度父さんが料理を持って来た。
「私がどうかしましたか?」
長い髪を後ろで纏めてエプロンを装着している事からどうやらこの料理は全部父さんが作ったようだ。
「兄さんお代わり!」
「わかりました。ちょっと待ってくださいね。アクアの分のご飯もよそって来ますね」
「お願いします」
そう言うと父さんは再度キッチンに行ってしまった。
「やっぱりカミキの料理は美味しいわね」
かなは僕の方を見ると勝ち誇ったように言って来た。
確かに一人暮らしをしているから、日常的に父さんのご飯を食べる機会は減ったから仕方ないけれど、それは今言うと……
「か……かなちゃん私だって料理出来るんだよ!」
「へぇそうなんだ。興味無いけど……」
有馬は興味が無いようで素っ気無く返事を返した。
「あの~2人ってどういう関係何ですか?」
「見たまんまだな……うちの劇団って同い年の子なんてあんまり居ないからってのも有る」
まー同じぐらいの年の子が居れば仲良くしようとは思うけど……相手が有馬なのが可哀そうだな。
「基本的には有馬に構って欲しくて黒川がちょっかい掛ける形だな」
それって好きな子に意地悪しちゃう小学生男子じゃないかな?
「……殴り合いの喧嘩をする訳ではないですし、子供のじゃれ合いですから大丈夫ですよ」
そう言うと父さんが有馬の隣に座りご飯を食べ始めた。
「ちょっとカミキ! あかねは兎も角私まで子供扱いしないでよね」
「なんで私は良いの!」
「ハイハイ二人とも喧嘩して無いでご飯食べましょうね」
「「……うぐぐ」」
父さんがそう言うと二人は思う事は有るだろうけど一旦は静かになった。
「あっカミキ! そこのウィンナー食べたいからアーンして」
有馬はそう言うとウィンナーを指さしておねだりし始めた。
確かに有馬の位置からだと取りずらいだろうけど……
「……わかりました。では……アーン」
「あ……アーン♡」
顔を赤く染めて口を開く有馬に父さんはゆっくりとウィンナーを運んだ。
それを美味しそうに有馬は食べており、物凄く幸せそうだったけれど……
不思議な事に……その光景を見ている黒川さんは有馬以上に幸せそうだった。