夕食もみんなで楽しく食べ終えた後はトランプでババ抜きをしたが……黒川さんがやたら強く全勝しており、父さんが負けてる事が意外にも多かった。
多分だけど賭け事じゃないのも有るし、罰ゲームもないからだと思う。
「皆さんそろそろ良い時間ですし、もうお開きにしましょう?」
父さんはそういうと時間を指して言った。
時刻は22:00を回っているが……一般的な家庭であれば子供だとしても寝るにはまだ早いし、夏休みとなれば夜更かしなんて当たり前なんだろうけど……
「おっ! もうそんな時間か……じゃあ俺とカミキで片付けておくから、先に休んでて良いぞ」
「そ……そんな悪いですよ。私も手伝います」
「ダメよあかねちゃん。夜更かしは女の敵なんだからここは清十郎とカミキに任せて私達は早く寝ましょうね」
「良いのかな?」
「良いんじゃない? じゃあ私は先に寝るわね」
「ええ、おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
黒川さんは性格的に真面目なのか後ろ髪を引かれてしまいこっちを気にしながら部屋に戻ったが……有馬は秒で居なくなった。
いや、父さんと上原さんが良いっていてるからアレだけど……ちょっと位建前というか、そう言った奥ゆかしいものは無いのだろうか?
「大輝君とアクアももう休んで貰って大丈夫ですからね」
「……分かったじゃあおやすみ」
「あっ大輝さん……うーん、じゃあ僕も戻るよ」
「はい、おやすみなさい」
……とは言えお菓子や紙コップ位しか無いので片づけはすぐに終わった。
「よし、じゃあカミキ俺も寝るから何かあればすぐに呼べよ」
「分かりました。私も朝食の仕込みと連絡だけしたらすぐに寝ます」
「おう。おやすみ」
父さんの寝床は今日もリビングなので、ソファーを倒してベットを作っていたが……途中でスマホが鳴ったようで外に出て行ってしまった。
まー父さんも父さんで忙しい人だから恐らく仕事の電話なんだろうとその時は深く考えずに僕は自分の部屋に戻った。
翌日の朝……
目が覚めると既に朝ごはんが出来ているのか、美味しそうな匂いが漂っていた。
隣のベットを見ると大輝さんも丁度目が覚めたようでむくりと起きあがった。
「おはよー」
「大輝さんおはようございます」
寝起き見たいなので、大輝さんは頭が回っていないようだけど、そのままベットから立ち上がりそのままの格好で部屋を出て行った。
「……僕も起きるかな」
大輝さんに倣い僕もベットから立ち上がり部屋から出て行った。
洗面所に行くには一旦リビングを通る必要があるので必然的に……
「アクア君おはよー」
「おはよう」
黒川さんはそう言うとニコニコしていたが……昨日とテンションが違い過ぎるけどどうしたんだろう?
「黒川さん……どうかしたんですか?」
思わずそう聞いたら黒川さんは口元に人差し指を近づけて、ソファーの方を指さす。
ソファーと言えば当然父さんが寝ている訳なんだが、2度ある事は3度ある訳で……
「……あのかなちゃんが安心しきった表情で寝ている姿が可愛くてね」
其処には父さんを抱き枕の様にして気持ちよさそうに寝ている有馬が居た。
多分夜中にトイレか何かで起きて……そのまま父さんの寝床に寝ぼけて入ったんだろう
……しかし父さんも一緒に寝ている以上一体誰が朝ごはんを作っているのだろうか?
キッチンを除き込むと姫川さんがおり、本を片手に見ながら朝食を作ってくれていた。
「……アクア君ごめんなさいね。朝食はまだ時間が掛かるからちょっとだけ待っててね」
「あっ大丈夫です」
僕はそれだけ言ってリビングに戻った。
遠目から見ていたから、何とも言えないけれど……読んでいた本は料理本であるもののケーキ系の物だったで、一体姫川さんは何を作る気のだろうか?
普段からおかずのおすそ分けをして貰っているので、料理の腕を疑っている訳では無いが……不安になってしまう。
僕は一抹の不安を感じながら洗面所に向かった。
洗面所から戻ると丁度有馬と父さんも起き始めたようだ。
「かなちゃんはおはよー」
父さんに抱き着いている所を黒川さんにバッチリ見られている有馬だが、それで恥ずかしいと思う期間はとっくの昔に過ぎ去っている。
「……あかね? 人の寝顔をニヤニヤして見てるのは良い趣味とは言えないわよ?」
「にっ……ニヤニヤなんてして無いもん! 目に付く場所で寝ているのが悪いんだよ」
「……ふむ、確かに黒川さんの言う通りですね。分かりました。次機会があれば私は車の中で寝ますね」
「す、すみません!カミキさんに言った訳では無いんです」
父さんがソファーで寝ている事は周知の事だから、有馬を責めれてば必然的に父さんを責める事になる。
「じゃあ私も次の機会があればカミキと一緒に車で寝るわ」
「車中泊は若干きついから……今度はみんなで川の字で寝るか?」
いつの間にか上原さんと姫川さんもリビングにやって来ており、結構な量のフレンチトースト山の様に出来ており、テーブルの中央に置かれていたが、それを見て父さんが真っ先にしたのは……
「あっ……パイセン。すみません寝坊しました」
「うん? 気にしなくても良いわよ。そもそも仕込み自体はちゃんとしていたから時間はさほど掛からなかったしね」
「おう、せっかくの旅行なんだからカミキものんびりしても良いんだぞ」
「うっす」
父さんと上原さん達の関係性が僕には眩しく見えた。
下準備をしていたと言う事もあり、姫川さんが作ってくれたフレンチトーストは大変美味しかった。
有馬が父さんにアーンのおねだりをして食べさせてる姿をまるで、聖母の様に見守る黒川さんは一体どんな目線で見ているのか気になるけれど、触れると面倒な事になりそうだったので、スルーした。
大輝さんは美味い美味いって言いながら無心で食べて居た。
旅行中は意外と大輝さんも良く食べていたけど……上原さんや姫川さんは大食いでは無いのだ。
酒は馬鹿みたいに飲んではいたから、もしかしたらその所為で入らなかっただけかも知れないが……少しだけ気になった。
「良し、じゃあ荷物を片付けて帰るぞ」
上原さんの言葉に僕たちは自分達の荷物を纏めて車に積み始めた。
「……忘れ物が無いか確認してきますね」
「おう頼んだ」
父さんはそう言うと最後の確認をする為にコテージの中に戻って行った。
しばらくすると父さんが戻って来た。
「問題はないですね」
「おう、じゃあ……運転はどうする?」
「……上原パイセンお願いしても良いですか?」
「任せろ!」
旅行の最後に年齢確認をされるのは嫌だと思ったのか父さんは上原さんに運転をお願いして僕たちは軽井沢を後にして東京に戻った。
☆☆☆
私達は今『B小町』の解散全国ツアーを行っていた。
この全国ツアーが終わったら私達はアイドルを卒業する訳だけど……
「ニノはアイドル卒業したらやっぱり女優になるの?」
「そうだけど? 高みーはどうするの?」
「私? 私は……今付き合ってる彼氏と一緒になろうかなって考えてるよ」
「ふーんメイは?」
「私は事務所の方でネット部門をやってるからそっちに行こうかな? ほら、新しく入ったぴえヨンが今物凄く人気出てるみたいだしね」
「へぇーありぴょんは?」
「私はモデルの方に行こうかな? 苺プロはそっち方面でやっていた訳だし、それならまだ大丈夫なハズ?」
「私は振付師かな? ダンスは得意だし、YouTubeで配信しながらやって見ようかな?」
みんなが皆芸能界に残る訳では無いけれど……それぞれが各々の道を歩き始めようとしていた。
『B小町』のグループで不動のセンターと呼ばれてはいるものの……私とメンバーとの会話は既に無く、あったとしても業務連絡や挨拶程度だ。
あからさまな無視やいじめなんてされてはいないけれど……それでもやっぱり疎外感は感じる。
私はみんなと違いアイドルを卒業したらマルチタレントとして活躍する気満々だし、色々な仕事も舞い込んでいるから、これからも頑張って子供達の為にももっとお金を稼がないといけない。
今は一人暮らししているアクアだっていずれは私の元に帰って来るはずだ。
だって家族は一緒に暮らすものだし、それこそが幸せなのだから……
そんな事を考えて居た時だった。
ヒカル君からラインの通知が来た。
今ヒカル君はアクアを連れて軽井沢に旅行に行っていた。
ヒカル君と一緒ならトラブルが起きても大丈夫だと思い私も了承した。
……だけど親としては心配なので、ヒカル君に旅行中のアクアの写真を送って欲しいとお願いもしているのだ。
「私が付いて無くて寂しがってないかなー?」
送られて来た写真に写るアクアはとても楽しそうにしていたけど、私が最後にアクアの笑顔を見たのは何時だったっけ?
家に帰るとゴローさんもルビーも暖かく私を迎い入れてくれた。
だから、2人には喜んで貰えるように『
……でも、アクアは『
何故ならアクアは嘘を吐かれるのが嫌いだから……
だけど……私にはもう何が嘘で何が本当か分からない……
アイドルの幸せは掴んてると思うけど……母親の幸せは一体どこにあるんだろう?
「アイ?、ホテルに到着したぞ」
斎藤社長がそう言うといつの間にバスはホテルに到着していた。
どうやら私は考えすぎていたようだった。
「ありゃ? もう着いたんだー?」
「ああ、もう他のメンバーは降りてるぞ。まだ全国ツアーは始まったばかりだから頼むぞ」
「分かってるよー佐藤さん」
「斎藤だっつーの!」
斎藤社長と何時ものやり取りをしつつ私もホテルに入り宛がわれた部屋に入った。
夕食はお弁当で済ませてお風呂に入ってたら既に時刻は22:00を回っていた。
明日も早い事からすぐにベットに身を預けて、寝ようと思ったけれど……笑顔のアクアが頭から離れず、気が付いたら私はヒカル君に電話をしていた。