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「な……何故あいつは……カミキヒカルは生きているんだ!?」
カラスの目を通して国立競技場のステージを見ると星野アイに扮して歌って踊っているカミキヒカルと宇流麻カナンの二人が居た。
「公演が始まる前にとあるファンに殺される運命だったのに一体何が……」
そこでふと気づいた。
この国立競技場内には現在カミキヒカルの関係者である姫川愛梨がヒカル命と書かれたハッピとサイリウムを装備して応援しており、そこから離れたところで息子の大輝と星野アクアは応援していたが……上原清十郎だけが一緒に居なかった。
こんな大イベントにあの男が居ないなんてことある訳が無い!
しかし……現状いないのであれば……一体どこに?
カラスを遣い隅々まで探す事数十分後……
とある倉庫にて複数の男性・女性の悲鳴に近い声が聞こえたと報告があり、私はその場にすぐさま移動したが……
「ど……どうしよう。中で一体何が行われているのか確認しないといけないのに……」
ドア越しに聞こえる音は男の野太い叫び声と女性の悲鳴に近い声にパンパンとリズミカルになり続ける……まるで”ナニ”かを相手に打ち続けている音が聞こえる。
中に居るだろう人物を対処するだけなのに……私はこの場から一歩も歩く事が出来ずにいた。
私は神様なのに……今日ほど人間が……いや、この中に居る上原清十郎を怖いと思った事は無かった。
「ふぅー中々やりがいのある仕事だぜ」
かちゃかちゃとベルトか何かを弄る音が聞こえたのですぐさま姿を消して隠れる。
その瞬間目の前にあったドアが開くと警備員の恰好をした上原清十郎が出て来た。
「おう……こっちは終わったから清掃頼むな」
無線で上原清十郎はそれだけ伝えるとまるで散歩でもするかの様に去って行った。
特段ドアには鍵は掛かっていないだろうけれど……私は部屋に入る事を辞めた。
……だって怖いんだもん。
神様とはいえ私の体はちゃんと存在しているが……この身体は脆弱だし? 隙を突かれればそれで終わりだし……やばい相手には関わらない方が良いだろう!
私は姿を現して逃げるように去ろうとした時だった。
「おっと……鍵を掛けるの忘れてた……お嬢ちゃんなんでこんなところにいるんだ? 迷子か?」
「ぎゃぁぁぁー出たぁぁぁぁぁ」
「おい! おい! どうしたしっかりしろ!」
上原清十郎が慌てて私に呼びかけるのをどこかぼんやりと眺めてながら私は意識を手放してしまった。
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ライブも終わり俺とカナンはそれぞれの楽屋に戻っていた。
勝負の結果は引き分けとなってしまったが……それはそれで良いとして最後は『B小町』も含めて『推しに願いを』を一緒に歌い幕を閉じた。
対バン形式で部外者が居るとは言え……カナンも含めて『B小町』は卒業出来た訳だし、これはこれで良かったのかもしれないな。
まーそれぞれで思う部分は有るだろうけど……結局の所丸く収まるならそれが一番良いのだ!
そんな事を考えつつアイドル衣装を脱ぎ、私服に着替えようとしたが……
おかしい
俺の服が無くなっており……何故か巫女服が用意されていた。
その隣はキツネ耳のカチューシャとキツネの尻尾もあり……間違いなく麗民さんが用意したものだろう。
内心ため息を吐きつつも、今回麗民さんには迷惑をかけてしまった訳だし、これぐらい受け入れるのが女たらしの在り方だろう。
巫女服に素早く着替えて頭にカチューシャに腰のあたりに尻尾を付けてると、丁度ガチャっとドアが開いたので、ドアの方を見ると……
「「あっ!」」
アイが居た。
アイは俺の姿を思考が停止したのか固まってしまったが……徐々に顔が赤く染まりだし、目が爛々と輝き始めたと思いきや……
「……これは誘ってるってことだよね? もう私……我慢出来ないよヒカル君♡ 散々私の事じらすだけじらしたんだもん責任取ってね?」
いや、ちゃんと別れたし一筆書いたの事忘れてるのかこのアッパッパーは!?
「ちょっとアイさん落ち着いてください」
「大丈夫私がちゃーんとリードして気持ちくしてあげるから♡」
アイはそれだけ言うと物凄いジャンプをして俺に飛び着いて来た。
リアルでルパンダイブをする奴が果たしているのだろうか?
それがアイドルでましてや二児の母親がやる事なのか……スローモーションの様にこっちに近づいて来るアイを見ながら俺はそんな事を考えて居た。
ああ、不味いな……
このまま押し倒されたら俺は間違いなく……アイを抱く事になるだろう。
理由? そんなのは……事故で押し倒されたならばまだ理性は保てるが、故意であるならば話は別だ。
「いっただきま~す♡」
果たして頂かれるのがどちらなのか教えてやる!