カミキヒカル特集……10分程度の動画ではあったが、ドラマや映画などの解説が主だったものだが、個人的に言えば良くもまぁー見つけて編集したものだと感心してしまった。
「カミキ? 何見てるの?」
ケーキを美味しそうに食べていたかながこっちを不思議そうに見ていた。
「ええ、YouTubeで自分の名前を検索したらこんな動画が出てまして……」
「へぇー私にも見せてよ」
かなはそう言うと俺の膝の上に座ってきた。
「……まるで親子みたいですね」
どこか憂いを帯びた目で星野あゆみはそう言った。
「実の親ではありませんが、育ての親なので間違いではないですね」
落ちないようにお腹に手を回してあげるとかなは安心するのか体重を預けて来る。
後ろからなのでかなの表情は見えないけれど、こうして甘えている事から機嫌が良いみたいで、もしもかなが猫ならば喉をゴロゴロ鳴らしていそうだ。
「……これ本当にカミキヒカル特集なのよね? 最初だけしか全然写ってないじゃない!?」
動画のサムネイルはモデルで表紙にも為っていたキツネ耳の巫女服を着ている俺であり、この人物がカミキヒカルで有る事を紹介しているが……ドラマや映画ではそんな恰好をしている訳では無いし、そもそも脇役だからあんまりファーカスされないってのも有るが……
「役になってますからね。素の私である必要はありませんし、そもそもこの方の動画に配慮してあげる必要はありません」
「普通は役になっても、どこかしら匂いは残るものなんだけど……あかねもそうだけど呆れる程凄いわよね」
はぁっとため息を吐くかなだけど……逆を言えば俺もあかねもかなの様な演技は出来ないのだ。
自分の匂いを残しつつも演技をして、評価されるというのは実は物凄い事なのだ。
何故なら……有馬かなが出演する映画やドラマは『有馬かな』を見に来ている訳なのだ。
まー俺はそう言った売れ方は変なファンが付くと嫌なので敢えてしないし、そもそも脇役をメインでやってる訳なので知名度は低いのだが……別にギャラに困っている訳じゃ無いので問題は無い
あかねに関しては俺のコネを使ってメイン級の振ってあげた結果、主演女優賞なんかとってたっけ?
話は戻すが……だからこそ、このカミキヒカル特集の動画だって再生回数はかなり少ない。
挙げられたのはつい最近って事もあるし、サムネイルはインパクトはあるかもだが……この動画の投稿主も登録者数はかなり少なく20人も居ないので、これでバズるかと言えば難しいだろう。
しかし、動画の投稿主が一体どういう気持ちでこれを上げたかはこの動画を見れば良く分かる。
10分程度の動画ではあるが、脇役メインである俺の映像なんて馬鹿みたいに多い訳だから素材には困らないだろう。
だがそれを探して編集するには膨大な時間が掛かる以上……もの凄い熱意を感じる。
恐らくだが俺の世間の評価が低いのが気に入らないのだろう。
『こんなにも凄い演技をしてるカミキヒカルはもっと売れるべきだ!』『もっと評価されるべきだ!』とか思ってそうだし、あわよくばこういった動画活動が切っ掛けで俺と知り合いたいは……考えすぎかな?
ま、別に害が無ければなんだって良いけれど……これで一番怖いのが『私がカミキヒカルを育てた!』と思い込まれる事だ。
そんな事を考えて居た時だった。
「うーん……カミキさぁ~偶には主役級でドラマとかやらない? ほら、ララライとしても上の人間が脇役ばっかりっていうのはちょっとね……」
動画を見てかなも思うところがあったようで、思わずそう尋ねてきた。
昔と比べて時間に都合は付くし、お金の問題は解決してる訳だから脇役メインである必要はもう無いし、かなも中学生で有る事から問題は無いだろう。
「……そうですね。それでは今度主役級の話が来たら考えて見ます」
「わかってる。カミキが脇役好きで主役は嫌……ってええ! 考えてくれるの!?」
……いつの間にそんなノリツッコミを出来るようになったんだ?
かなの成長を喜ぶべきか悩ましいが……
「……ええ、話が来たら考えて見ます」
「カミキが主役級を……? このあと槍でもふるのかしら?」
かなはそんな事を言い始めたが……俺が主役級やるってそんなにおかしい事だろうか?
「そう言えばニノさんやカナンさんは朝から見かけませんけど?」
星野あゆみはそう問いかける。
「ニノでしたら……このドラマの収録中ですね」
時刻は15時……そろそろ始まる訳だし、テレビのリモコンを操作してとあるチャンネルに変える。
『ヤンデレアイドル~壊れる程に愛したい~』
「な……なんですかこれ!?」
ドラマのタイトルからしてアレだけど……赤文字で書かれているだけでなく”デ”と”ド”の濁点は滴り落ちた血を連想させるものであった。
「内容としては、とある地下アイドルとそのプロデューサーとの裏で行われる恋愛模様を描いた物なんですけど……そのプロデューサーは女癖が悪く次々とアイドルの娘に手を出して行くんですか、ある日それを見られてしまいアイドルの娘に刺されてしまうというものですね」
「え!? じゃあそのプロデューサーは死ぬんですか?」
「それがねぇ~お腹に雑誌を仕込んだり、普段来ているスーツを防刃仕様にしたりとあの手この手と仕込んでしぶとく生きてるのよ。視聴者からすれば胸がスッとするって感想と今回はどうやってプロデューサーは生き延びるのかってのが気になる作品なのよ」
かなはそう言いながら俺の事を見ていた。
いや、流石に俺はそんな無茶はしないし……と思ってはいるものの現状刺されてもおかしくは無いのだ。
うん……ゆらに刺されないように気を付けないとな。
ドラマとは言え、まるで他人の様には思えないプロデューサーを見つつ俺は自重しようと考えるのだった。