カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第132話

 その日劇団ララライにて激震が走った。

 

「ず……ズルいわ! なんで私だけ……こんなの……こんなの……裏切りじゃない!?」

 

 髪の毛を掻きむしり、泣き崩れてしまった愛梨パイセンを見て俺や上原パイセンは……

 

「じゃあ明日なんですけど一緒に撮影現場に行きませんか?」

「そうだな……あっ確か喫茶店のクーポンがあったし、朝飯はどうだ?」

「良いですね」

 

 愛梨パイセンの事は放置して明日の段取りを付けていた。

 それと言うのも……懇意にしてる監督からドラマのオファーが来て、主役の打診もあったので、今回は二つ返事でOKを出したからだ。

 監督からすると受けて貰えると思って無かったようで、物凄く驚かれたのだが……それはまあ……良いだろう。

 そして、このドラマで上原パイセンは丁度嵌り役みたいなのもあったので俺がねじ込んだ形だ。

 

「あの……2人とも一体何があったんですか!? 愛梨さん泣いてるじゃ無いですか!」

 

 あかねはそう言うと愛梨パイセンの背中を撫でながらこっちを見ているが……

 

「あかねちゃん聞いてよ! 清十郎とカミキが今度放送する火サスの刑事ドラマに出演する事になったのよ! 監督にお願いしたのに……『予算が足りないから愛梨ちゃんはまた今度』って断られたの」

「そ……そうなんですね」

 

 目に涙を溜めて愛梨パイセンは悔しそうにこっちを見ているが……あかねはオロオロするばかりだった。

 

「うぅ~ドラマでイチャイチャするカミキと清十郎の二人を私は一体どういう目で見れば良いのよ!」

 

 フラットに見てくれれば良いんじゃないかな?

 

 その時はそんな風に考えてララライを後にしたが……『予算が足りない』ってどういうことなのか俺はそれをもう少し考えて見るべきだった。

 

 

 

 次の日

 

 

 朝早くから俺のスマホがブルブル鳴り震えていた。

 スマホを見て見ると上原パイセンからラインで着いたと連絡が来ていた。

 朝ごはんは用意してるし、一応書置きも残してるから問題は無いと思う。

 俺自身準備は既に終了しているし、カバンを取りドアを開けると……

 

「よう、カミキ迎えに来たぞ」

「上原パイセンおはようございます」

 

 案の定上原パイセンが居た。

 

「まだ時間は有るし、じゃあ朝飯食ってから撮影現場に行くぞ」

「うっす」

 

 そんなやり取りをしている時だった。

 隣の部屋のドアがガチャリと開く音が聞こえた。

 お隣さんではあるものの、生活時間はお互い違うので会うのは数日振りだったりする。

 

「あっヒカル君に上原さんおはよー」

 

 アイはそう言うとにこにこと笑顔でこっちに来た。

 

「おはようございます」

「おお、アイちゃんおはよう……じゃ行くとするか」

「ええ、それではアイさんまた今度」

 

 俺と上原パイセンはアイに背を向けて立ち去ろうとしたが……

 

「ちょーっと待ったぁ~」

 

 アイに肩を掴まれてしまった。

 まだ時間に余裕があるとはいえ……無駄に過ごす必要は皆無なのでアイの方に向き直りお引き取り願おう。

 そう思い口を開こうとしたら……

 

「あのねヒカル君……私も共演者なんだ♡」

「えっ!?」

 

 一瞬思考が止まったが……その時に昨日愛梨パイセンが言った言葉が脳裏をよぎった。

 ……『予算が足りない』ってそういう意味か!

 

「私も一緒に行っても良いよね?」

「俺は構わないけれど……カミキどうする?」

 

 その時俺は首を縦に振ったのか返事をしたのか覚えていないが……気が付くと上原パイセンの車の後部座席に乗っており、俺はアイに抱き着かれてされるがままになっていた。

 それから、上原パイセンの運転する車に揺られる事数十分経過した……

 

「二人とも着いたぞ」

「え~もう着いたの~」

 

 アイは口を尖らせて上原パイセンに抗議するが……

 

「ああ~お楽しみの所悪いなアイちゃん……とは言え撮影現場じゃなくて、喫茶店なんだが? アイちゃんは朝ごはん食べたか?」

「……あーそう言う事ね。朝早かったから私も食べて無くてお腹ペコペコなんだぁ~」

 

 一瞬の間があったが、アイは空気を読み同意を示すが……俺はそれよりもこの喫茶店の名前が気になってしまう。

 

 喫茶店『キャッツ♡アイ』……一体どっちだ? レオタードの美人三姉妹か……はたまた筋骨隆々のスキンヘッドのサングラスか……もっこり男が実在する以上後者の可能性が高いのだ。

 実際問題上原パイセンはもっこり男を見た事があるようだし、その時に身体能力なのか、一物のデカさなのか……あるいは両方かは分からないが勝てないと悟った程の人物だとか……

 

 上原パイセンとアイは楽しそうにしているが……俺は内心不安で胸がいっぱいだった。

 

「ここは最近見つけた俺のお気に入りの一つでな。カミキもきっと気に入ると思うぜ……両方の意味でな」

「両方の意味でですか?」

「おう!」

 

 力強く頷く上原パイセンの言葉をそのまま受け止めれば……恐らく美人3姉妹の方だ!

 おら、なんだかワクワクして来たぞ!

 

「ヒカル君? さっきと違ってなんか嬉しそうじゃない?」

「ええ、初見のお店って……何て言うか好奇心を刺激されますからね」

「ふーん」

 

 アイは何かを感じ取ったように俺の事を見ているけれど……俺は何一つ嘘を言って無いから好きなだけ疑えば良いさ。

 

 そうして俺達3人は喫茶店『キャッツアイ』に踏み込んだ。

 ドアを開けると店内にカランと音が鳴り響く、カウンターに居た人物は……筋骨隆々のサングラスの男性でも、レオタードの美人三姉妹でも無く……普通に美人の女性がカウンターにおり、見た感じ年は俺と同じか……少し下位かな?

 

「いらっしゃい。席は好きな所に座って貰って構わないわ」

 

 店内を見渡すと平日で朝早い事もあり、他のお客さんは居なかった。

 

「おう、じゃあカウンター席にしようぜ」

「わかりました」

「うん」

 

 上原パイセン・俺・アイの順番でカウンター席に座る。

 

「メニューはこちらよ。決まったら声掛けてね」

 

 そう言ってメニューを渡されて見て見ると……やたらと料理が大きく見える。

 まー実際の料理はそこまで大きく無いだろうし、拡大していると思っていたが……

 

「あっカミキとアイちゃん一応言っておくが……このメニューに載ってる写真はマジで見たまんまだぞ」

「本当ですか?」

「ああ……運動してなかったら少しばかりきつかったぜ」

 

 上原パイセンはそう言うと苦笑いしていたが……運動を隠語みたいに言うな!

 

「……ふーん、じゃあ私この卵サンドにするね」

 

 アイはそう言うと写真に掲載されてる卵サンドを選んだ。

 

「ここの喫茶店はこの『小倉サン』がオススメだが……カミキはどうする?」

 

 上原パイセンはそう言うが……

 

「小倉さん?……誰ですか? 食べ物ですか?」

「いや……人名じゃなくてれっきとした食べ物だ。群馬県名物で正式名称『小倉サンドイッチ』でこれが中々美味いんだ」

 

 小倉……つまり……あんこかぁ……食えねぇな!

 

「上原パイセン? 俺あんこは無理ですよ?」

「ん……あ、そうだったな。悪い今のは忘れてくれ……」

 

 俺がそう言った瞬間だった。

 

「ええ~! ヒカル君あんこ食べられないの!?」

 

 アイは物凄い驚いていた。

 

「ええ、どうにも私の口に合わなくて……」

「基本甘党なのに……あんこ以外にも餅とかもダメなんだよな」

「あのもちもちした触感がどうにも……」

「それじゃあお正月のお節料理とかどうなの?」

「ほぼ駄目ですね」

「それって人生の半分損してるよヒカル君」

「大丈夫です。その分女性にモテてますからバランスは取れてます」

「ヒカル君? 浮気は良くないよ」

「それは当事者の問題であって第三者にどうこう言われる筋合いはありませんね」

「ぐぬぬ……あっ……じゃあ私は当事者だよね?」

 

 アイはそう言うと目を爛々と輝かせてきたが……

 

「あっすみません。ナポリタンと照り焼きサンドお願いします」

「タイミングおかしくないかな!?」

 

 いや、注文まだしてなかったし……

 

「は~いちょっと待っててね」

 

 美人店員さんはそういうとクスクス笑いながら料理を作り始めた。

 

「二人とも料理が来るまで台本の合わせしないか?」

「うっ……あっ……ハイ」

「そうですね」

 

 上原パイセンの提案に流石のアイの機先制されたようで、バックから台本を取り出した。

 

「それにしてもこのタイトルは凄いよな『特殊捜査員:神裂光のオカルト事件録』ってカミキの名前もじり過ぎだよな」

「……確かにそうですね」

 

 神を切り裂く光って中二病みたいなネームだよなって言いたいけれど……俺の本名が神木輝だけに笑ってはいられない。

 売れるにしろ売れないにしろ名前でいじられるのは確定した気がする。

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