カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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ルビー回!


第134話

 私星野ルビーはママと同じ苺プロに所属して念願のアイドルに成れたけど、未だにテレビの仕事は無く、漠然とレッスンを受けていた。

 そんなある日『B小町』が解散する日が来てしまった。

 同じ事務所に居るから、解散をするのは知っていっていたけれど……まさかメンバーの年齢が30に近くなってきたのが理由とは思っていなかった。

 確かに30歳以上のアイドルの女性はあまりというか殆ど居ないというのが現状だけど……ママやニノさんは29歳だけど未だに現役アイドルに引けを取らない美貌を持っているから問題無いんじゃないかなって思うし、私と先生は『B小町』が解散したときは思わず号泣してしまったほどだ。

 ママのファンなら当然悲しいことではあるだろうし、解散してしばらくはどの番組も『B小町』の話題でいっぱいだった。

 特にネットでは物凄く惜しまれており、『アイクライシス』と呼ばれる社会現象にまでなっていたけど……私や先生はママと一緒に暮らしているからそこまでのダメージは無かったし、そもそもママがあんまり気にしていなかったのもある。

 

 それから数日が経過した時だった。

 

「アイにドラマのオファーが来ているがどうする?」

 

 斎藤社長が事務所のソファーに座って寛いでるママにそう尋ねるとママは興味なさそうにしていたが……

 

「うーん。アイドル卒業したばかりだし、しばらくはゆっくりしたいかなー?」

「斎藤だって言ってんだろうが! ……全く長い付き合いなんだからそろそろ覚えてくれてもいいだろうに……」

 

 斎藤社長はぶつぶつと文句を言ってるけど……いくらママが人の名前を覚えるのが苦手とは言え、斎藤社長とは15・6年ぐらいの付き合いは有るだろうからこれは一種のお約束芸だとおもうし、ママに弄られるなんて寧ろ特別枠なんだから斎藤社長はもっとママに感謝すべきだね!

 

「ほらほら壱護も拗ねないで……ちなみにアイさん共演者にはカミキさんも居るけど本当に断って「やる!」あら、良かったわ。じゃあ先方には私から伝えておきますね」

 

 ママはカミキヒカルの名前を聞いたら食い気味に了承してしまい、その返答に気分を良くしたミヤコさんは鼻歌交じりにデスクに戻って行った。

 認めたくは無いけれどママにとってカミキヒカルは唯一無二の存在なのかもしれない。

 勿論我が子である私や家を飛び出したアクアに献身的に支えてる先生の事も愛してるのは間違い無いけれど……カミキヒカルに対して言えばそれ以上の感情というか執着を感じる部分が時折見え隠れしているのだ。

 

 私にとってカミキヒカルは血縁上父親ではあるものの……イマイチ信用出来ない男だ。

 聞けば普段は役者の仕事をしているみたいだけど、その他にもモデルや時たまカナンさんのYouTubeにも出てお金を稼いでるが……はっきり言って役者の仕事をしていると聞いてはいるものの、出演作品が一体なんなのかさっぱり分からないし、スタッフロールに名前はあるものの何処に出番があったのかさえも分からない謎の人物だ。

 ネットでカミキヒカルを検索した事はあったけれど……情報が殆ど出回っておらず、一般市民には顔と名前が浸透していないのだ。

 そんなカミキヒカルだけど収入に関して言えば、先生やママの収入をかなり上回っているのだから世の中不公平だと思ってしまう。

 私みたいなママの遺伝子を十分に受け継いだと言えるこの容姿を以てしても、未だにアイドルの仕事は無いのに……木っ端役者のカミキヒカルは一体どんな手を使ってお金を稼いでるのだろうか?

 そんな事を考えて居た時だった。

 ドアがガチャっと開けられる音がしたので、そっちに目を向けると双子の兄のアクア入って来た。

 

「おはようございます」

 

 久しぶりに見たアクアは身長も高くなっており、Tシャツにジーンズとラフな格好な事もあり、同年代の男子と比べて筋肉質な体になっているのが見て取れる。

 アイと認めたくは無いけれど父親のカミキヒカルの遺伝子を受け継いる所為か、その外見は芸能界でも屈指の美男子であり役者としての実力も高い為、将来を有望されている。

 転生者である私とは違いママの……いや、正しくアイの息子なのだ。

 その為か努力を惜しまない性格だし、実はかなり負けず嫌いな一面もある。

 

「おお、アクア呼び出して悪いな!」

「いえいえ、ところで今日はどうしたんですか?」

 

 どうやらアクアを呼び出したのは斎藤社長の様だけど……一体どうしたのだろう?

 

「ああ、実はバラエティー番組のオファーが来ているがどうする?」

「バラエティー番組ですか? やった事無いので難しいですし、そもそも僕は面白いコメントなんて出来ませんよ?」

「ああ、その辺りの受け答えは俺がちゃんと教えるから大丈夫だし、ああ言った番組はある程度の筋書きがあるから大丈夫だ」

「……それなら良いですけど? ちなみに役者の仕事はどうなってますか?」

「それに関しては心配いらないぞ。映画業界で『臆病者』の評価が高いから今ギャラの交渉も込みで選び放題だぜ。だからそっちに関しても任せろよ」

 

 先ほどのママとのやり取りとは打って変わり、アクアの前では頼れる社長なんだけど……

 

「あの~斎藤社長……私のアイドルの仕事は?」

「ああ……ルビーはそうだなぁ~ダンスに関しては合格点だけど歌がまだまだだし、ソロだとどうしても粗が目立つから使いにくし、誰かとグループを組めればまだ良いんだがな……」

 

 斎藤社長の言う通りダンスに関しては自身があるけれど歌は……未だに60点を超える事が出来ないのだ。

 一応先生と一緒にカラオケに何度も行って練習してはいるものの、どうやら私のアイドル道は険しい道になりそうだった。

 ……やはり、ロリ先輩を無理矢理にでも抱き込むしか無いだろう!

 『ピーマン体操』は根強い人気があるようで、オリコンチャートにも未だに名前を連ねているのだ!

 しかし、私がどんなにお願いしてもロリ先輩は首を縦に振らないから困ってしまうし、一体どうすればアイドルに成ってくれるのかな?

 そんな事を考えつつもその日はママと一緒に家に帰った。

 

 ママのドラマ出演が決まってから更に数日が経過した。

 ある日ドラマの撮影から帰って来たママは目を爛々と輝かせており、時折顔を赤く染めて自分の唇を指でなぞっていたけれど一体どうしたのだろうか?

 私は見かねてママに声をかけるも……

 

「ママどうしたの?」

「あっ!? ううん何でもないよ。夕ご飯すぐに作るから待っててね」

「う……うん」

 

 ママが幸せそうなのは良いことだし、その様子を見て先生は嬉しそうではあるものの、どことなく寂しそうな憂いを帯びた表情をママに向けていたのが少し気になった。

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