初手大根かぶりつきと元アイドルとは思えない行動したアイは……お冷を飲んだ事でなんとかやけどはしなかったものの……口の中がヒリヒリするのか少しばかり涙目になっていた。
その姿は言ってはなんだが可愛らしく、思わず抱きしめたくなるほどの物だったが、そんな事をしてしまえば歯止めが利かなくなり、最後までヤッてしまう事になるのでここは堪えなければ!
自分の紙皿に視線を無理やり戻して、大根だけでなく他の物も食べやすいように割りばしを上手く使い切り分ける。
そうして置けば先に切り分けた大根なんかは食べやすい温度になっているのだ。
「モグモグ……やっぱりおでんはここの屋台が一番美味しいです」
俺がそう言うと大将は心底嬉しそうにしていた。
「相変わらず嬉しい事言ってくれるなぁ~はんぺん食うか?」
「頂きます」
「おう」
大将はトングではんぺんを二個も掴み俺の紙皿に置いてくれた。
「大将……ありがとうございます」
「おう」
大将にお礼を言うと鼻の下を指で擦りだしたことからどうやら照れてしまったようだ。
それにしてもおでんを食べているとお酒も飲みたくなるが……歩いて帰れない距離では無いけれど、住んでるマンションまで少しばかり距離があるし、何より車を置いて帰る事になるのはちょっと困る。
代行で帰るのも手だが、どうしたものか……
そんな事を考えて居ると不意にアイが俺の服の裾を引っ張って来たので、顔を向けると……
「ね……ねぇヒカル君? あーんして欲しいなぁ~」
あーん……ねぇ……まぁそれぐらいだったら良いか
「……良いですよ」
俺は返事を返して、アイの紙皿を引き寄せようとしたが……
「……出来ればヒカル君のが良いんだけど?」
何故?っと思わなくも無いが……恐らく先ほどのかぶりつきでちょっとばかしトラウマめいた物が出来たのかもしれないな
「……わかりました。じゃあアイさんの箸を貸してください」
「私は……ヒカル君の使っていた箸でも良いけど?」
俺自身は別段間接キスなんて気にもしてないけれど……顔を真っ赤にして言うアイを見ると物凄く意識しているようなので、なんとなく辞めた方が良い気がする。
「……わかりました。それではアイさんの箸を借りますね」
「ヒカル君のいけずぅー」
口を尖がらせてアイはそんな事を言うが……何と言うか徐々にハードルを下げられているような? そんな狡猾な一手の様に思えてしまった。
ドラマ内でもアイとのキスシーンはそこそこ多いが、カメラにバレないように舌を入れて来るし……これがアイとの関りさえなければ楽しめるのだが、当事者で元彼という位置づけである以上は気が気じゃ無いのだ。
「アイさん……あーん」
とりあえず、小さく切り分けた大根をアイの箸で掴み口に運ぶと、まるで餌を待っていたひよこの様に口を開けて今か今かと待ち構えていた。
「あ……あーん♡」
大根が口に入るとアイは美味しそうに咀嚼し始める。
そしてその様子を見ている大将がつぶやいた。
「二人は付き合っているのか?」
「いえ、付き合っていないですね」
「やってる事が付き合いたての甘々カップルだが……」
大将の言わんとしていることは分からんでも無いし、こんな事彼女のゆらにもした事無いからバレたら本当にどうなるか分からんな。
「この大根味が染み込んでて美味しいです」
「そ……そうかい。ちょっとばかしアレだけどやけどしないように気を付けてくれよ」
「はーい。じゃあヒカル君今度は私があーんしてあげるね♡」
アイはそう言うと卵に割り箸をぶっ刺して俺の方に向けて来た。
「私は自分で食べれますのでお構いなく」
「なんでよ!」
そんなバラエティー番組みたいなノリで熱々の卵は食べれる訳が無いし、食事に面白さは求めて無いからね。
そんなやり取りをしつつもアイと屋台のおでんに舌鼓を打ち、その日は遅い時間にはなったものの帰宅した。
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学校が始まり早くも数日が経過した。
私はギリギリではあったものの、何とか宿題を終わらせる事が出来たし、先生とのマンツーマンでの勉強会というのもそれはそれで悪くはなく……寧ろ夏の良い思い出になった。
お医者さんであるゴロー先生は年齢もあるので、少しばかり眠たそうにしていたけれど……多分大丈夫だ。
そんな訳で学校生活も現在無事に遅れているが……
「ねぇねぇ『特殊捜査員;神裂光のオカルト事件簿』見た!?」
「勿論見るに決まってるじゃん! 何てったってあのアイがヒロインで主演してるドラマなんだから見るでしょ!」
クラスの話題はママが出ているドラマの話題で持ちきりだった。
娘であり、ファンでもある私としてはこう言ったママの話題が出て来るのはとても嬉しいものだ。
「あんた何言ってるの? 私は神裂光を演じてるカミキ様一点推しよ!」
「あれ? この前までモデルの鳴島メルトがあーだこーだ言ってなかったっけ?」
「そんな昔の事は忘れたわ! 私はあのメイド服姿の可愛らしい神裂光を心の底から愛してるのよ! 彼になら私の処女を上げても良い位だわ」
「……鳴島メルトに嵌ってた時も同じ事言ってたじゃん。まーあのメイド服姿の神裂光は確かに可愛かったし、なんて言うか抱き締めたくなるほどの物だったわね」
「そうそうそうなのよ! 私気になってカミキ様の事を調べたんだけど……聞きたい?」
「……そこまで言うって事は聞いて欲しいって事でしょ?」
「分かってるじゃん! 良いカミキ様ってね……ガチの東大卒で在学中にミス東大選ばれた程の美貌の持主なんだよ!」
「はぁ!? 東大卒ってドラマの設定だけじゃなくてリアルでも東大卒で……しかも、ミス東大なの?」
二人の女子の話し声は大きく私の耳にまで届いていたけれど……一瞬でママの話題が無くなって、カミキヒカルの話題にすり替わっていたのは少しばかり腹立たしい
しかし、確かにカミキヒカルは頭が良いは事実だし、芸能界で長い事生きて来てる訳だから、コネなんかは特に強いようだ。
ロリ先輩なんかも仕事が途絶えなくなったのはカミキのおかげって言ってたなぁ~
「ほら、コレがミス東大の時の姿なんだけどね」
「カミキヒカルは確か男の筈だけど……ってこれメイド服着てるアイじゃない!? カミキじゃないじゃん」
「ううん……まぎれも無くこれはカミキ様よ! メイド服でアイに見えるけれど私にはしっかり分かるわ!」
メイド服を着たアイなのかカミキなのか……娘である私なら見分ける事は容易いし、なにより二人の女子の会話が気になってしまい私は二人に話かける事にした。
「ねぇねぇ私にも見せてー」
「あっルビーちゃん! ルビーちゃんも見てよこのカミキ様の可愛らしいメイド服姿を!」
「いやいや……絶対カミキじゃなくて、それはもうメイド服を着たアイなんよ。ルビーちゃんは確か苺プロに所属してるからアイには会ってるだろうし、分かるよね?」
二人からそう言われつつも私は受けとったスマホを見るとそこには……黒い可愛らしいメイド服を着た紫かがったロングヘアーを靡かせる私のママ……星野アイが写っていた。
「……えっとアイだよねこれ?」
「ほらやっぱりアイじゃん!」
「いーえここの胸元をちゃーんとみてくださーい」
スマホを操作してメイド服の胸元を拡大するとそこには……カミキヒカル22歳と名札は付けられたいた。
「「嘘だ!!」」
思わず叫んでしまった私は絶対に悪くない筈だ!