「ただいま」
「あっおかえり~」
「ヒカル君お帰りなさい。今ご飯作ってるんだけど食べる?」
部屋に戻るとかなとニノがエプロンを付けて出迎えてくれたが、その様子から察するにどうやら二人で夕食を作っているみたいで、良い匂いがこちらまで漂っていた。
先ほどおでん屋でそこそこ食べたとは言え……若干食い足りない部分があるし、まぁ良いだろう
「ええ、かなとニノがせっかく作ってくれた訳ですし頂きますよ」
俺がそう答えると二人はにんまり笑顔になった事からかなり嬉しそうだった。
「ところであゆみさんはどうしてますか?」
アイが仕事に出かけている時ならばバッタリ会う事も無いし、そもそもアイは外に遊びに行く事が無いので、一度家に帰ったら出かける事は無いだろうから問題は無い筈だ。
「ああ、あゆみさんなら……」
「はぁはぁ……ただいま帰りましたぁ~」
後ろを振り向くと……ジャージ姿で荒い息を吐いてるあゆみさんが丁度帰って来た。
最初に出会った時の老け込んだ姿はどこへやら、今じゃあ30後半と言っても過言では無い位に若返っていた。
まぁ~実際問題色々と心労だったり、アイに対して罪悪感なり合った訳なので老け込んでしまうのも無理はないのだが……
流石アイの母親という事もあり、アンチエイジングや運動をし始めた結果見事な変身を果たしたようだ。
正直な所を言えば、何も知らない状態で20……いや、10年程早く会っていたら確実に俺は手を出していただろう。
「どうかしましたか?」
こてんと首を傾げてあゆみさんはそう尋ねて来たが……”もっと早く出会っていたら抱いてましたね”なんて言えるはずも無く……
「いえ……あゆみさん汗掻いてるようなので、先にお風呂どうぞ?」
「いえ、私なんか後でも大丈夫ですから……ヒカルさんどうぞ」
じゃあ間を取って一緒に入りますか?って思わず言いそうになった自分は果たして正常なのだろうか?
「夕食はまだ時間かかるからゆっくりお風呂入ってても大丈夫だよ」
ニノはそう言うとかなもコクコク頷き同意を示し始めた。
しかし時間に余裕はあるとは言え……ここであゆみさんと譲り合いしていたら、その時間が無駄な訳だし……先に入るとするかなぁ~
「……分かりました。それでは私が先にお風呂に入りますね」
「「「どーぞどーぞ」」」
俺がそう言うとあゆみさんと一緒にニノとかなまで某トリオの芸人みたいにそんな事を言い始めたのを聞き流しつつ俺は浴室に向かった。
1番風呂は俺が! というルールは儲けていないけれど……何時からかそういう風になってしまっており、寧ろ2番目が誰が最初に入るかで話し合っている事がある。
まー大抵の場合はニノが譲ってかなが2番目に入って最後にあゆみさんの番になっている。
カナンの協力の元みんなの目を盗んでニノとは一緒に入ってる事もあるし、逆にカナンとはこの前みたいに深夜に一緒に楽しむ事もあるので今の所は問題は無いが……かなが16歳になった時どうなるか分からないのだ。
最近は結構な頻度でベットに潜り込んで来るようになったし、身体的な接触も増えてきているのもそうだが……かな自身も成長して来ており、身長は俺と同じくらいだが……体は女性らしい肉体になりつつあるのだ。
つまり何が言いたいかと言えば……かなに対してのフィルターがそろそろ機能しなくなり始めているのだ。
セックス自体は小学校低学年の時からだけど、中学に入ってからは学校の女子とヤッていた訳なので、現在中学2年生のかなはセンサーに反応している状態なのだ。
はぁ~っとため息を吐きながらも、俺は服を脱ぎ浴室に入る。
仕事の絡みもあるので、アイの事は無下に出来無し……かと言って、プライベートではかなとの接触を避ける事なんて出来る筈も無く、現状流されるままになっていた。
シャワーの蛇口を捻ると、勢いよく熱いお湯が出始めたので、それを浴びぼ~っとしていた。
やっぱり……あの時楽屋でアイをイカせたのがそもそもの間違いだったのだろう。
その結果アイは俺への期待がギュンって高まってしまったのは行動を見れば分かる。
どんなに心地の良い事を言っても……人は……いやアイは容易く嘘を吐く。
しかし、言葉は嘘であっても行動だけは偽る事は出来ないのだ。
その思惑はどうであれ……自身が行った行動の事実は決して偽る事は出来ない。
ドラマの撮影でキスシーンはあるものの、舌を入れろなんて指示は無いのにアイはチャンスとばかりにやってくるし、撮影終わりに一緒に食べに行くことも有る訳だが、それだって嫌なら断る筈だし、そもそも誘う事も無い筈だ。
これが芸歴が浅い子ならば、心証を良くして仕事を回して貰う為に体を張ってやるなんてことは多々あるが、アイに限ってはその必要がないのだ。
知名度も人気もある元アイドルで仕事だって選り取り見取りなはずだ。
そんな訳で、これは現状アイの気持ちを弄んでしまった俺が招いた事だから、責任は取らないといけないが……俺にはゆらが居る訳だし、そのゆらも先日ベットの上で説得して了承は頂いてるから、問題は無いが……そもそも俺はアイの事をどう思っているのだろうか?
アイが妊娠した時に結婚しようって言った言葉は決して嘘じゃない。
寧ろ別れを告げられた時は悲しかったし、大輝君の事を言われたので腹が立った事も事実で、その結果一筆書かせた訳だ。
まぁー腹が立ったって事はそれだけ俺もアイに対して本気だったんだなって今更ながらに思うが、そこからまさかこんな関係になるなんて夢にも思わなかった。
そして、現状だが……アイを抱くのはゴローさん次第だが、許可さえあれば構わないがよりを戻すのはどう考えても無いなって思考になる。
アイの性格が気まぐれな猫そのものなので、枠に嵌るのは問題無かっただろうが枠に縛られるのは無理だろう。
『ヒカル君と一緒には居たいけど結婚する気は無いかなー?』ってアイなら言いそうだし、そもそも『結婚の必要性って何?』って普通に聞いて来そうなんだよね。
必要性って言われるとアクア達は義務教育とは言えもう大きくなっているから、意味合いは薄くなっているし、国からの制度も受けられるようになるって言っても、アイ自身も結構稼いでる訳だからその線での説得は無理だし……
アクアには申し訳ないけれど……結論アイとの復縁は無理だな!
俺がそう心の中で結論付けた時にアクアの『そんなぁ~』って声が聞こえた気がしたが……きっと気のせいだろう。
シャワーの蛇口を締めて、俺は湯船に浸かる。
入浴剤が入ってる所為か、気持ち良く……その時少しばかりではあるが、心が軽くなった事を実感したが……ある事を思い出した。
あっ……アクアにアイの母親である星野あゆみが今俺の家に居る事を伝えるのを忘れてた。
本当は今日アクアに言うはずだったけど……アイとルビーが居た以上は言える筈も無く、そのままにしてしまったし……いや、風呂から出たらアクアに連絡するとしよう
そんな事を考えつつも……気が付いたら20分近く湯船に浸かっていた俺だった。