カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第148話

 俺が撮影現場に着くと既に裏方の人達は忙しなく動いており、その奥の方では監督と脚本家が打ち合わせをしていたが……難しい表情をしていた。

 

「おはようございます」

「ん? ヒカルちゃんおはよう……ちょっと相談事があるんだけど良いかな?」

「……何でしょう?」

 

 俺がそう答えると監督は少しばかり困った顔をしているが、一体何があったのだろうか?

 スポンサーの件は片付いているし、視聴率も軒並み高いのでなんら問題は無い筈だけど……

 

「いやー実は……今回尺がちょっと余りそうだから、警察署内で神条咲とのイチャイチャしているシーンを入れようと思って脚本家と相談しているんだけど、中々良いアイディアが思い付かなくてねぇ~ヒカルちゃん何かアイディア無いかな? この際口説き文句でも良いんだけど?」

「……口説き文句で良いのなら、幾らでもありますよ」

 

 この時の俺は自分の評価がどれ程高くなっているのか理解しておらず、また……アイの心にクリティカルをぶち込んでいたとは夢にも思わなかった。

 

「よーし、ヒカルちゃんもやる気ムンムンみたいだし、アイちゃんとセイちゃんに許可を取ればイケル!」

 

 やる気ムンムンって……まーご要望には応える方針だから良いけど

 

「おはよーございまーす」

「おっすー」

 

 そんな事を考えて居たらアイと上原パイセンも入って来た。

 

「アイちゃんとセイちゃん今日はちょっと予定に無かった撮影入れても良いかな?」

「俺なら構わないぞ!」

「流石セイちゃん……アイちゃんはどうかな?」

「う~んあんまり遅くなるのはなぁ~」

 

 二つ返事で上原パイセンは答えたがアイは……まぁ事務所に居ればアクアやルビーも居る以上……仕事とは言え、あんまり遅くなるのは嫌なのだろう。

 その顔には笑顔を張り付けて、どうやって躱すか考えて居るのが手に取る様に分かるが……

「……神裂光と神条咲のイチャイチャしているシーンを入れたいんだよね~」

「まっかせて下さい監督!」

 

 先ほどまでの誤魔化す気は何処へやらアイは食い気味に答えてくれた。

 

「アイちゃんもやる気ムンムンで良いね! 良しじゃあ早速そのシーンから取ろうか! 一応言っておくけどキャラクターを壊さないならある程度は自由で良いからね」

「監督さんは話が分かるね!」

 

 神裂光も女たらしだし……まぁ問題無いだろう。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 警察署内のとある部屋にて、とある2人が現在暇そうにしていた。

 少し前までは警察の花形である捜査一課に所属していた敏腕刑事『神裂光』

 今は姿が見えないが、暴力団対策課に所属していた武闘派刑事『神原アキラ』 

 最後に捜査一課に配属されたのにすぐさま左遷させられた『神条咲』

 この三人が所属する事になった部署が特殊捜査課と言う常識では計り知れない事件を扱う部署なのだが……

 

「こう……何も無いと暇ですね光警部補」

 

 日常的に事件自体はあるものの、オカルト染みた事件など基本有りはしないので新人の神条がそう不満を零してしまうのも無理は無いだろう。

 

「事件が無いのは平和の証だよ咲」

 

 咲をそう窘める光だが……分厚い本を読みながらコーヒーを嗜む姿は光の容姿も相まって絵になるもので、一瞬ではあるものの咲は目を奪われていたが、すぐさま我に返りに年下の上司に不満を告げる。

 

「そうは言っても光警部補……事件が起きないと手柄が上げれないですし、昇進だって出来ない訳ですから給料も上がらないじゃないですか~」

「……私は東大卒で元々キャリア組でしたので新人の咲とは違ってそこそこ良いお給料貰ってますけどね」

「一人だけズルいです光警部補!」

「学生の時に頑張った結果だ。咲も頑張って国家公務員総合職採用試験をクリアすればキャリアに成れるぞ」

「あんなの合格出来る気がしないよ!」

 

 年齢で言えば光よりも咲の方が一つ上なのに性格面に関しては子供っぽい所があり、少々不満げにしていた。

 

「……とはいっても他の部署からの応援も要請されていないからしゃしゃり出る訳にも行かないし、事が起きたら馬車馬のように働く訳だから今は待機で問題無い」

 

 幾ら警察とは言え部署が違えばやり方も違うし、そんなところにノコノコ出て来られた日には大量の始末書との格闘が始まってしまうのだ。

 しかし、現状は二人とも暇を持て余しており、真面目とは言い難いものの元捜査一課の光も本を読んでいる始末だ。

 光がチラリと咲を見ると頬杖をついて口を尖らせていた。

 

「はぁ~それではちょっとしたゲームでもしましょうか?」

「ゲームですか?」

「ああ、それじゃあ俺の正面に立ってくれ」

「う……うん」

 

 光に言われるがまま咲は机から立ち上がり、対面する形となった。

 

「じゃあ、ゲームだけど……心の準備は大丈夫か?」

「こ……心の準備!? 何かびっくりさせる気なの?」

「……結果的にはびっくりするかもね」

「わ……わかった。すぅーはぁー……良し、大丈夫だよ」

 

 咲はそう言うと二度三度深呼吸をして自分を落ち着かせて答えた。

 その答えに満足した光は身振り手振りを交えて説明を始める。

 

「よし、じゃあまずここにスクリーンがあると想像して、そこに図形を投影するんだ。例えば正方形とかね」

 

 咲はまるで目に見えないスクリーンを想像し、そこに三角の図形を想像した。

 

「……うん、想像出来たよ」

「じゃあ、別の図形を思い浮かべてそれで前の図形を囲ってくれ」

 

 光に言われた咲は先ほど浮かべた三角の図形をぱっと浮かんだ円で囲い始めた。

 

「出来たけど……」

「ここからが本番だ。今咲が想像した図形を集中して俺の中に送ってくれ」

 

 ゆっくりとした動作で咲の視線の先に一指し指を立てて、自身の眉間を指し示した。

 

「心を開放して俺に送るんだ」

 

 光の言葉に咲は半信半疑になりながらも集中し自身の考えた図形を言われた通りに送り始めた。

 

 5秒……いや、10秒が経過した位で光は徐に答え始めた。

 

「見えて来たぞ……咲が想像した図形は三角形が円で囲まれている」

「な……なんでわかったの!?」

 

 驚愕の余り思わず叫んでしまった咲だったが、その反応に気分を良くした光はニィっと笑い答えた。

 

「咲の心の鍵を開けたってのもあるけど、こう言った深層心理を読み取れれば事件解決にも役立つからな」

 

 年下の上司に良いように当てられてしまい咲も悔しかったのだろう。

 何とかして、この憎たらしい年下の上司の鼻を明かしてやりたい気分になった咲は思わず無茶ぶりを言い始めた。

 

「じゃ……じゃあ、私が今思っている事を当てて見てよ!」

「”どうせこんなの何かしらのトリックがあるに決まってるし。じゃなきゃ相手の心なんて読めるはずが無いもん!”……ってところだな」

 

 間髪入れず即答されてしまい咲は驚きの余り口をパクパクさせてしまったが、その反応こそが何よりの証拠と言わんばかりに光は楽しそうにしていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「カァーット。良いね~良いよその反応!」

 

 撮影が終わり、ハッとしたけれど……今ヒカル君がやった事は正しく私の心を読んでいた。

 顔が熱い! それこそ火が出る程に!

 やっぱり私の事を一番理解しているのはヒカル君だったけど……だけど心を丸裸にされたようで、物凄く恥ずかしい!

 

「大丈夫ですかアイさん?」

 

 先ほどまでは神裂光に成り切っていたけれど、今は元のヒカル君に戻っており何時もの様にぽやぽやしているんだけど……

 

「あぅあぅ」

 

 口から出るのは意味をなさない声だったけれど……

 

「ヒカルちゃん……俺知らなかったけど……あんな事出来たんだ?」

「飲み屋のおねーさんにやるとバカウケするんでおすすめですよ」

「いやいや、そんな事出来ないよ~」

 

 監督さんはそう言って笑い始めたけれど、ヒカル君? 安易に飲み屋の女性にそんな事をしたら勘違いさせちゃう訳だし? と言うか被害者を増やすのは良くないと思うんだけど?

 これはまごまごしている場合じゃ無い事は確かだし、私もゴローさんから早急に許可を取らないといけない理由が出来たね!

 

 ま~ヒカル君も男だし? そう言った事は仕方が無いけれど……カナンやニノにゆらちゃん達がちゃんと発散させて上げれていない以上は私が体を張らないといけないね。

 

 これは決して私の欲望だけの問題じゃないし? 寧ろ元カノとしての務めと言っても過言じゃ無い筈!

 

 待っててねヒカル君♡

 

 気が付いたら私はヒカル君を見ながら舌なめずりしていた。

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