カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第151話

 鬼ころし……確か由来の元は酒好きの酒吞童子を酔わせて退治した逸話が元になった酒ではあるが、今じゃあどこのコンビニでもスーパーでも見かけるメジャーなお酒だが……今俺が飲んでいるこれは……なんだ?

 

 鬼ころしと言えば、基本辛口だが……今飲んだこれはほどよい甘さに鼻腔をくすぐる軽快な香りがしており、俺が知ってる鬼ころしとは違う。

 

「どうヒカルさんコレ美味しくないですか?」

「……とても美味しいですけど、これは一体?」

 

 俺がそう尋ねるとゆらはしてやったりとした顔をしており、ネタ晴らしを始めてくれた。

 

「これは『黒田藩正宗 鬼ころし ゴールド』って言って福岡県で作られてる鬼ころしで私のとっておきなんだ。ほどよい甘さにこの香りも良くって、ご飯なんかにも合うから最近は何時も飲んでるんだよね」

 

 そう語るゆらは実に楽しそうにしていた。

 

「ねね……ヒカル君私にも一口頂戴」

 

 アイはそう言うと俺の腕を掴み上目遣いでおねだりして来たが……

 

「それならこっちのグラスに注いであげますよ」

 

 ゆらはそう言うと手早く小さめのグラスを取り出して鬼ころしを注いだ。

 

「……ありがとうね」

「いーえ」

 

 どうやらアイとゆらのバトルが始まったようで、戦いの火ぶたが落とされた気がする。

 

「メム料理出来たから、どんどん運んで行って」

「わ、わかりました」

 

 アヤセがそう言うとメムはすぐさま奥に引っ込んでしまった。

 彼女からすればいきなり修羅場に巻き込まれたようなものだし、こんな状況に陥ったら逃げ出したくなるのも当然だろうけど……

 

「お……お待たせしましたぁ~」

 

 料理を運ぶって事は再度この空間に突入するって事なので決して逃げられる訳ではないのだ。

 しかし、若干ふらついているのが気になるがどうしたのだろう?

 

「ありがとうございます。適当に置いといて頂ければ大丈夫ですからね」

「わかりました! それではごゆっくりぃぃ~」

 

 メムはお盆を一回カウンターに置き料理を配膳しようとした時にそのものを見たが……俺は少しばかり声を失った。

 

 量が……俺の想定していた以上に多いぞ!?

 確かにアイの分も込みで大盛を頼んだけれど……紅ショウガ揚げやチーズの包み焼きに鳥のから揚げやポテトサラダなんかもそうだけど……ライスまでもが全部大盛どころから超大盛みたいになっていた。

 

 この店は何時から次郎系列になったんだ?

 

「ひ……ヒカル君こんなに食べたら力士になっちゃうんじゃない」

「小結神木山(しんぼくざん)ヒカル……ちょっと見てみたいかも」

 

 野太い声でごっつあんです!って今言ったら上原パイセンや金田一さんなら笑ってくれそうだけど……流石に駄目だよなぁ~

 内心葛藤しながらも、俺は両手を合わせて……

 

「……頂きます」

 

 さて食べるとするか……

 

「私もたーべよ」

「ずるい!私も食べるもん!……ヒカルさん良いですよね?」

 

 こんだけ量があれば逆にシェアした方が正解だろう。

 

「勿論です。メムもどうですか?」

「い……良いんですか?」

「勿論ですよ」

「じゃあ……私も頂きますね」

 

 アイとゆらとは違いメムは自分の小皿を用意して食べたい物を移していた。

 まー座りながらって言うのは難しいからな。

 

「ふぅ~私もお腹空いたから食べても良いかしら?」

 

 そう言いながらアヤセが奥から出て来たが……既に箸を握っている事からこれはそう言う事なのだろう

 

「……勿論です」

 

 一体何人前を想定していたのか分からないがアヤセもカウンター越しに座り始めて……食べ始めるのかと思いきや、チーズの包み焼きを箸で摘まみ俺の口元に持って来た。

 

「はい、ヒカルあ~ん♡」

「え!?」

「お姉ちゃん!」

「はわわ」

 

 アイ、ゆら、メムの三人がアヤセの行動に驚いているが……こういった事を躊躇なくやるのがアヤセであり、これこそが歌舞伎町にて夜の嬢王であった所以でもある。

 別段アーン位応じるのは構わないが……ただ……

 

「どうしたのヒカル?早く口を開けなさいな」

 

 アヤセはニコッと笑いながらもそう言って催促するが、まだ持って来たばっかりで熱々のチーズをチョイスしている時点でアヤセも思うところがあるのだろう。

 ……となればこれは甘んじて受け入れるべきものだろう。

 

「……あーん」

「はい、あーん♡」

 

 思った通りチーズは物凄く熱く、舌がやけどするんじゃないかと思えるほど熱かった。

 しかし、ここで慌てて水を飲めばアヤセが悪者扱いされる場合もある。

 ゆらは……姉妹なのでアヤセのやった事にドン引きしており、アイは……

 

「ひ……ヒカル君こっちも美味しいよ! ほら口開けて……あーん」

 

 ちょっと……落ち着きなさいよ! チーズは逃げないから!

 

 一旦箸を置き桝に入った鬼ころしを飲み未だに飲み込めずにいるチーズを冷ます。

 

「……美味しかったです」

「あらそれは良かったわ……てっきりヒカルの可愛い表情が見えると思ったのに残念ね」

「じゃあ次は私の番だね! ヒカル君アーン」

「チーズも良いけど、ポテトサラダなんかどうですかヒカルさん?」

「……ではポテトサラダを頂きますね」

「ガーン」

「だよね! じゃあパクっと行っちゃってね」

 

 アヤセにライバル心を抱くのは良いとして、何故その熱々のチーズをアイは選ぶのだろうか?

 ゆらのスプーンで差し出したポテトサラダを食べながらアイの方を見ると……

 

「あっふぅ! 何コレあっふぅ! 水……水頂戴!」

「た……ただいま!」

「ありふぁとう」

 

 俺へのアーンは置いといて一旦食べた結果……アイはあまりの熱さで涙目になり、メムが持って来た水をコクコク飲み始めた。

 

「……あ、あんなに熱いなんて思わなかった。ヒカル君は何で大丈夫なの?」

 

 そんな事決まってる。

 

「女の子の前なのでカッコつけてるだけですよ」

 

 そんな事を言った時だった。

 ドアを開ける音が聞こえたので、そっちに目を向けると……そこにはこの状況では会いたくないYURIKAが居た。

 

「はぁはぁ……ようやく着いたわ!」

「遅いわよYURIKA」

「これでも全速力で来たのよ!」

 

 荒い息を吐きながらYURIKAはそう言うと俺の近くに寄って来たと思えば……

 

「まーた違う女引っ掛けてるでしょヒカル!?」

「ごかいですからほっぺをひっぱらないでくだふぁい」

「……相変わらずもちもちしてて触り心地良いわね」

 

 YURIKAはそう言うと一通り俺の頬っぺたで遊ぶと満足したのか……抱き着いて来た。

 

「アヤセご飯食べ終わったら今日は泊るわ!」

「「「ええ!!」」」

「ん?良いわよ」

「お姉ちゃんにアヤセさんも何言ってるの!」

「3人も居ればヒカルの悪癖も矯正出来るわね!」

「そうね……一回ぐらいは分からせないとヒカルの為にならないし、これは仕方なの無い事よゆら」

「……うっ確かに……でもアイさんはどうするんですか?」

「わ……私は……その……」

「タクシーで帰って貰えば良いんじゃない? タクシー会社の電話番号位分かるわよねアヤセ?」

「何年この業界で働いてるっておもってるのよ、そんなの当然じゃない!」

 

 まー水商売をしている以上はタクシー業界にも当然伝手は有る訳だし当然だよな。

 

「アヤセさん私は?」

「それはメムが決める事よ? 一応言っておくけどヒカルは芸能関係にコネがあるし、ちゃんと責任も持ってくれるからメムが夢を叶えたいと言えば絶対に叶えてくれるわよ?」

「いや、あの……安受け合いされても困るんですけど? ちなみにメムさんの夢って何ですか?」

「私はアイドルになりたいんですけど……そう言った関係にならないとダメですか?」

 

 別に駄目じゃ無いけど、そもそも俺はアイドルに伝手なんて無いし……そう言えばルビーを中心にしたアイドルグループを作ったのか、作っているのかアイが言っていたな。

 

「あ……アイドルですか? それだったら、苺プロでアイドルの募集してましたよねアイさん?」

「えっ!? うん……してるけど……エムさん受ける?」

 

 アイは言い淀んでいたけれど、どうやらメムの名前が出て来なかったようだ……というか間違っていた。

 たった二文字なんだから頑張って欲しい部分があるけれど……やはり発達障害なのだろうか?

 

「私はメムです……エムじゃないですぅ~」

「ご……ごめんね。わざとじゃないんだ。私才能ある人なら覚えられるけどそうじゃないと中々頭に入って来なくてね」

 

 アイはそう言うとしょんぼりしながらそう答えたけど……それを初対面の人に言うのはヤバすぎ謙信!

 もうちょっと仲良くなってから言うべき何じゃないかなって思ったが、よくよく考えると初対面だからこそ一番最初に言っておく方が良いのかもしれない。

 しかし、アイに名前を憶えられてない=才能無しって事になるから……やっぱり良くないなぁ~

 

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