『今日は甘口で』……ベタな恋愛映画だと内心思いつつも、ストーリーが進むにつれて徐々に引き込まれる魅力がある。
最初はポップコーンを食べつつ見ていた筈なのに、次第に手は止まり……俺は夢中になって見ていた。
『それでも……それでも、光はあるから』
ヒロインの少女がそう言った時……俺の目から涙が零れ落ちた。
涙を流したのは、果たして何時振りだろうか?
そう考えて振り返って考えて見ると今生では涙を流した事は無かったから……恐らくこれが初めての経験かもしれないな。
隣に座っているかなにはバレないように服の袖で流れた涙を拭いつつ、エンドロールが流れ始めたスクリーンを見て居たら……
「うぅ……よ”がっだよぉぉ~」
かなが盛大に泣き始めてしまった。
マナーが悪いのは重々承知だが幸い俺達以外に居ないため……俺も注意する事はせずにエンドロールを見続けた。
しばらくしてエンドロールも終わったようで、スクリーンは真っ白になり館内も明るくなった。
ポップコーンは途中から食べていなかったが、幸い中身は殆ど空っぽになっていたし、コーラに関しても同様で飲み切っていた。
「かな……出ましょうか?」
「うん!」
涙で真っ赤にした目をこっちに向けているところを見るとかなり号泣していたようだけど、かなも満足出来たようだし連れて来て良かったと思えた。
通路の途中でスタッフにお盆を渡し俺とかなは一旦映画館を出る前に……
売店コーナーにて『今日甘』のパンフレットを俺は購入する事にしたが……かなは大分毒されてしまったのか、かなりの量のグッズを真剣に選んでいた。
……うーん、これならバイクじゃ無くて車で来ればよかった。
内心そう思っていたが、それは次回に生かす事にしよう。
そうこうしているとかなもようやく選び終わったのか、マグカップを持ってレジに向かっていたので、俺も一緒に向かう。
「このマグカップください」
「かしこまりました」
「あとパンフレットもお願いします。お会計は一緒で大丈夫です」
「良いのカミキ?」
「勿論です」
「畏まりました。それではパンフレットとこちらのマグカップの2点でお会計800円になります」
「1000円からで」
「畏まりました。200円のお返しになります」
お会計も終えて俺はマグカップをかなに渡すとかなは嬉しそうにしていたが……
「私だってこの位払えるけど……ありがとうカミキ」
「いえいえ、喜んで頂けたようで何よりです」
うんうん、素直にお礼を言えるのは良いことだ。
かなの頭を撫でながら映画館を後にした。
レジの人が何故か物凄いほっこりしていたけれど……映画館で働いてるんだからこんな光景見飽きているんじゃないかと内心邪推してしまうが、もしかして中学生のカップルだと思われているんじゃあないかと考えてしまった。
まーどう思うかは人の勝手だし? 別段訂正する程の事でも無いから放置して置くか……
外に出ると秋と言う事も有り、少しばかり暗くなっていたが、腕時計を確認すると時刻はまだ18:30を指しており……まだ帰るには早い時間帯とも言える。
……とは言え、ここからカラオケってなると流石に帰りが遅くなるし、それはそれで不味い。
普段ならホテルに行き、朝までコースで時間を気にしなくても良いが、ニノから厳命されてる訳なので、そういった事は今日は無しなのだ。
じゃあどうするかと言えば、喫茶店なんかが良いかもしれないな。
先ほど映画を見ながらポップコーンやホットドックを食べてた訳だけど、若干食い足りない部分もある訳だし……一応かなに聞いてみるか?
「かなこの後どうします? 一旦休憩がてらに喫茶店でも行きますか?」
「……う~ん、カラオケだとちょっと時間が遅いし……喫茶店で良いわ」
「分かりました」
かなも同意を示してくれたようだし、すぐさま頭の中で近くの喫茶店を思い浮かべる。
ここからなら喫茶店『キャッツアイ』で良いかな? でも、あそこは量が多いし……夕飯も込みで考えるなら良いかな?
「ただこの時間帯だと人が多く良そうであんまりのんびり出来そうに無いわよね?」
スマホを弄りつつかなはそう言うが、近くて人気な喫茶店だとそうなるな。
かなは兎も角……俺はどうだろう? もしかしたらドラマの影響で少しばかり人気になっている節があった。
現にかなの学校に向かいに行った時に帰宅している生徒が俺の事を遠巻きに見ていたのは事実である。
あの位の年代の子に人気があるのであれば……恐らくはもっと見ている人は居る筈なので、俺の知名度は俺が思っている以上に凄い事になっているかもしれないな。
「人込みでしたら……恐らく大丈夫な喫茶店を知ってますよ」
「へぇ~そうなんだなんてお店?」
「『キャッツアイ』ってお店ですね」
「『キャッツアイ』? 聞いた事無いわねぇ~大丈夫なの?」
「私も何度か言ってるので味と量は保証しますよ」
「味は兎も角……大食いのカミキが量も保証するって、私食べきれるかしら?」
「前もって少な目で注文すれば問題ないかと……」
まー最悪残ったら俺が責任以て食べるから気にしなくても良いけど……
あずきやあんこは食べられないからそれは辞めてね。
「それでは行きましょうか」
「うん」
バイクに跨りかなを後ろに乗せて、喫茶店『キャッツアイ』に向けて走り出したが……10分後
「はーいそこの二人乗りのバイクの方……君未成年だよね? 駄目だよ未成年なのにバイクなんて運転しちゃ!」
警察の方に呼び止められてしまった。
「いえ、こんな見た目ですけど……ちゃんと成人してますし、これ免許証です」
「え~っと神木輝さんね……えっ28歳なんですか!? これは失礼しました」
免許証を警察の方に見せると俺と免許証を交互に見比べて最終的には謝罪をされてしまったが……俺の知名度は極々一部で盛り上がっているもので、世間的にはやっぱりそんな大したものじゃ無いかも知れないな。
「行っても良いですか?」
「もちろんです!」
免許証を返して貰い、再度バイクを走らせようとした時
「その見た目で大人ってのが無理あるわよね?」
「……こればっかりはどうにもならないですけどね」
別段免許証があるから呼び止められても問題無いから良いけどね。
かなはクスクス笑いながらもしっかりと抱き着いて来た。
背中にかなの体温は服越しだから分からないし、胸に関してもコートの厚みがあるので感触を楽しめる訳でも無いが……それでも男って奴は女性に抱き着かれるだけで元気になれる訳で……必死にかなは娘と言い聞かせつつ俺はバイクの運転に集中した。