喫茶店『キャッツアイ』で軽食と言うには難しいが……まぁ、軽食で良いだろう。
それが例え、山の様に積み重なったホットケーキやクラブハウスサンドだったとしても……
「カミキ……これ凄いわね!」
「……そうですね」
かなの前にはホットケーキが置かれて、俺の前にはクラブハウスサンドが置かれている。
子供や学生であるならば、こういった事は一度は夢見るもので……
かなも例外では無く、目をキラキラと輝かせてホットケーキを食べ始めていたが……スイーツは別腹と言え、果たして食べきる事は出来るのだろうか?
少しばかり心配しつつも、俺はかなの様子を見守りながらクラブハウスサンドに手を伸ばした。
ナイフとフォークを巧みに使いかなはホットケーキを綺麗に切り分けて食べると更に目を輝かせていた。
「とっても美味しいわね」
「それは良かったです」
知っているお店を紹介するして、相手が喜んでくれるのは嬉しいものである。
かなも美味しそうにパクパク食べていたけれど……やっぱり量が多い所為か、次第に食べるスピードは落ちてしまい……2/3を食べ終わったところで、フォークが動かなくなってしまった。
「かな……無理しなくても大丈夫ですからね?」
「……でも残す訳には行かないし、カミキだって……あれ?いつの間にかサンドイッチ無くなってるんだけど!?」
あっ! 一個ぐらいかなにもあげればよかった。
そうすれば俺もホットケーキを合法的に貰えたのに……しかし、やってしまった事はしょうがないし、次に活かすとしよう
「……美味しく頂きました」
「……私のもお願いして良い?」
「勿論です」
その後は俺がかなの食べきれなかった分のホットケーキを食べ切り、残す事は無く終わり、その様子を見て店長がぐぬぬって顔しているけど、個人的にはやりすぎ感が多いし、赤字なんじゃねーかと思ってしまう。
「御馳走様でした」
「……はい、じゃあまた来てね」
ちゃんと食べきった訳なのでそこは悔しそうに言わないで欲しいけど……まぁ、これはこれで良いのだろう。
喫茶店を後にして帰るときだった。
満腹になった所為か、かなは大分眠たそうにしており、頭もうつらうつらとして船を漕ぎ始めていたので、この時ばかりはバイクでは無く、車で来るべきだったと心底後悔した。
幸い事故る事は無く、無事に家に帰れたから良かったけど……
かなを落とさないように後ろでは無く、前に乗っけて低スピードでの運転を余儀なくされたが、幸い道路は混雑していなかったこともあり、何事も無く無事に帰宅する事が出来た。
その後かなを寝かしつけて俺も今日は早く寝る事にしたが……
しかし、デートをした次の日からかなのスキンシップが大分激しくなってきた。
寝る時は俺のベットで潜り込んでいつの間にか寝ている事は前からあったが……今ではほぼ毎日となっており、目覚めると抱き着かれている。
かなの身長はあんまり伸びていないけど、発育自体良く寝る時は薄着と言う事もあり感触は良いものだ。
そう、感触は良いのだが……
俺も男である以上反応するのは仕方の無い事と言うか男の本能なので、正直困ってしまう部分がある。
まーそう言った時は寝ているかなを起こさないように起きて、ニノかカナンのどちらかとお風呂で楽しむ事にしているが……
あゆみさんも一緒に生活している以上なかなか難しい部分もある。
あゆみさんを脅していた半グレ達のグループは関暴連の人達に捕まり全員上原パイセンによる制裁を受けた訳で、仮に道端であゆみさんと有ったとしても尻を抑えた上で道を譲る位のトラウマを抱えているだろうから、そろそろ保護をしなくても良いんじゃないかなって思っているのだが……
先日アイを抱いた事もあり、あゆみさんをほっぽり出すのはかなりの罪悪感を感じてしまうのだ。
「カミキさんどうかしましたか?」
「ヒカルさん……箸止まってますけどお口に合いませんでしたか?」
「熱は……無いようね?」
「た……溜まっているんだったら私が抜いてあげようか?」
「「かなちゃんはまだ早いから駄目!」」
「ちょっと位良いじゃない!」
朝食を食べながら考える内容じゃないのは確かで、周りの人たちに心配されてしまったが、俺はそんなに食いしん坊に見えるのだろうか? ……まー普段から結構食べているし、見えるんだろうなぁ~
「いえ、ちょっと考え事がありまして……ニノが作ってくれたご飯は美味しいですよ」
「えへへ」
ニノにそう言うと嬉しそうにしていた。
「わ……私も料理覚えようかなぁ~?」
今更ながらに危機感を覚えるカナンに苦笑してしまうが……そういった努力は良いものだし、寧ろ積極的にやっても良いと思う。
「それなら今度私と一緒に何か作りますか?」
「良いの!? じゃあ、手の込んだ物作りたい! あと動画も回して良いかな?」
「それは構いませんけど……Youtubeに上げるんですか?」
「勿論そのつもりだよ。最近はゲーム配信ばっかりで、ちょっと刺激が欲しかったんだよね」
う~ん……カナンの言ってる事は分からないでも無いけれど……確かにゲーム配信だとありきたりなリアクションかはたまた逆張りするしか無いから新規のリスナーの獲得は難しいし、有名なゲームとなればどのYoutuberもこぞってやるだろう。
しかし、ゲームは別段無くなっても困りはしないジャンルに対して料理は人間が生きていく上で切っても切れないものである。
料理をあまりしない人でも簡単にかつ手間も暇も掛からずに作れるのならば、それはそれで需要はあるのだ。
あるのだが……手の込んだ料理となれば味もそうだけど見栄えも必要になる。
「ホットケーキなんかどうですかね?」
「ホットケーキなんて誰でも作れるじゃん!?」
いや、そもそも料理なんて作ろうと思えば誰でも作れるけど……難易度の高いのは素人には難しいぞ?
「初めて作る訳だし、最初はホットケーキからで良いんじゃない?」
「う~ん。私なら中華料理ならイケる気がするんだけどなぁ~」
カナンは口を尖らせてそう言ったが……何でか知らないが謎に説得力があるのを感じてしまった。
そんな時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴る音が聞こえたので、玄関に向かった。
家のマンションはオートロックでは無いので、入ろうと思えば入れてしまう甘さマシマシのセキュリティなのだ。
そんな訳で、宗教の勧誘や新聞屋にヤクルト屋などなど……営業の人が時折来ることもあるみたいで、マンションの掲示板にも張り出されて注意喚起されていたが、それがとうとう家にも来るようになったのだろうか?
ちょっとばかし内心ドキドキワクワクしながらドアスコープを除いて見るとそこに居た人物は……
紫がかった長いロングヘアーに視線を引き付けて止まない美貌を持つ……お隣に住んでいるアイだった。
「ヒカル君~私だよ~♡」
ドア越しにアイはそう言うけれど……今ドアを開ける訳には行かない!
俺は足音を立てないように恐る恐るドアから離れて一旦リビングに戻る。
「あれ?ヒカルさんどうしたんですか?」
ニノがそう聞いてる間もインターホンは何度も鳴っているが、これにより多少の音はバレないだろう。
「あゆみさん……今アイが外に居るので、浴室に隠れてください」
「……分かったわ」
あゆみさんはそう言うとお盆にお茶碗とおかずを乗っけて浴室に向かってくれたが……今アイにあゆみさんの存在をバレる訳にはいかないのだ!
心苦しいと思う反面……これはこれで面白いと感じてしまう部分もある。
あゆみさんが浴室に入ったのを確認して玄関に出ているあゆみさんの靴を靴棚にしまってから、ドアを開けた。
「もう遅いよヒカル君♡」
アイはそういうと形の良い眉を寄せて抗議してくるけど……
「そうは言っても、こんな朝早くからどうしたんですか?」
「いやぁ~この間のエムちゃんの件だけどね。苺プロに採用されることになったからその報告だよ」
エムじゃなくて、メムだろ?ってツッコミを入れた所でアイが覚えられるとは思え無いため、スルーすることにした。
「そうですか……それは良かったです。では彼女にこれから頑張ってくださいって伝えてくださいね」
「うん、わかったよー……ってそれだけじゃ無いからね! 私ヒカル君に用が会って来たんだし、中に入れてくれないかな?」
アイはそう言うと上目遣いでお願いして来たが、一体何の様なのだろうか?
まー何にせよここで中に入れるのを拒否するのは今までの関係性を考慮すると難しいので、入れざるを得ないのだが……便所飯ならぬ浴室飯を知らぬとは言え自身の母親にさせている事に気が付いたらアイは一体なんて思うのだろうか?
決してバレてはいけないけれど……バレたらバレたで面白い事になりそうだと内心考えていた。