カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第167話

『今すぐ……ヒカル君の……部屋に……ぐす……行ってもいい?』

「それは構いませんけど……」

 

 俺がそう答えるとアイは電話を切ってしまった。

 時計を見れば22時を指していたことから、打ち上げ自体は終わっているので各々の宛がわれた客室に泊まっているのだろう。

 まぁ~そうじゃなきゃ人前でアイが泣く事は無いだろうけど……泣くほどの事だろうかと疑問に思ってしまった。

 

 そんな事を考えて居るとインターホンが鳴ったのでどうやらアイが着いたようだ。

 

 ドアを開けると案の定アイが居るが、目を赤くしている事から大分泣いていたようで……

 

「とりあえず中に入って下さ」

 

 俺がそう答えるとアイはこくりと頷き俺の部屋に入って来たが……

 ドアを閉めた途端にガチャっと鍵を閉める音が聞こえたと思えば、背中に衝撃を受けたので思わず振り向くと……

 

「お願いヒカル君……ぐす……私の事捨てないで!」

 

 がっしりとお腹に手を回されいる訳なので、背中にはアイの胸の感触が伝わっており……四条社長との行為が不完全燃焼だった俺にとっては我慢など出来る筈も無いが……それはそれとして疑問は解消して置いた方が良いだろう。

 

 しかし、玄関先でそんなディープな話をするのもどうかと思いベットのある部屋まで移動してからの方が良いだろう。

 

「何故アイさんを捨てるって話になっているのか分かりませんけれど……とりあえず、ベットの方に移動しましょうか?」

「……うん」

 

 そう提案するとアイも理解を示してくれたようだけど……解放はしてくれなかったので、アイに抱き着かれながらもベットの方に移動した。

 

 少しばかり歩き辛い部分は有ったが……そんなものは胸の感触の前には些細な事であり、俺はアイをあすなろ抱きしながらベットに座り、アイの耳元で優しく囁いた。

 

「それでどうしましたか?」 

「だって……私の時は……糸電話しかないって言って……中々連絡先交換してくれなかったのに……フリルちゃんとは連絡先すぐに交換してたから」

 

 耳が弱いアイはそう言うと体をピクピクさせながらそう答えた。

 

「ええ……当時はアイさんとそんなに深い付き合いをする気はなかったし、連絡先を交換しても意味が無いと思いましたのでね。……でも、今はアイさんも私の連絡先知ってますよね?」

 

 俺は当時の事をアイの耳元で告げつつ、更に体を密着させる。

 それだけで、アイは体から力が抜けたのか俺に体重をかけ始めた。

 

「うっ……うん……確かに……今は……はぅ……知ってるけど……」

 

 アイは俯きながらそう答えたが……ここだ!

 アイの顎を掴み……俺の方に顔をゆっくり向けさせて……目を合わせる!

 

「不安にさせてしまいすみません。しかし、今更アイさんの事を捨てる気はありません」

 

 俺はアイにキスをして、返答をさせなかった。

 

「……んっ……ちゅ……」

 

 アイの凝り固まった執着心を解す様に舌を絡める。

 特に抵抗も無かったのでそのままアイを抱き締めながらベットに倒れ込み……そして俺はアイを抱いた。

 

 

 

 

 

 

 今更アイを捨てる気は無いし、その言葉に嘘偽りは無いけれど……ゴローさんが居る以上ルールは作って置かないとマズイだろう。

 

 相変わらず責められると途端にマグロになるアイを見て欲望をぶつけている俺自身が言える事では無いが……それはそれとして、ゴローさんとの話は絶対に必要だなと心に誓ったが……

 

「スヤァ」

 

 幸せそうに寝ているアイを見ると、何でか許してしまいそうになるが……ズルズルとこんな関係を続けるのは……う~ん、上原パイセン達の前例があるし……困ってしまう。

 

 とりあえずルビーを分からせる為にもこのドラマから何らかのを賞を獲とくしたいとは思うが……一番はアクアから尊敬の眼差しが欲しいからって理由もある。

 その為にも、今回は知名度を持っているアイやフリルなどを起用する為に体を張った訳だし……やれる事はやった筈だ。

 

 寝ているアイの胸を揉みつつ俺はそんな事を考えて居た。

 

「う……うぅん……」

 

 眠ってはいるものの体は感じているようで、アイは艶めかしい声を出しており……そうなると俺も興奮してしまい、寝ているアイとその後も何度もやりまくってしまった。

 

 

 

 

 

 それから数日後

 

 劇団ララライでの舞台稽古も終えて、みんなで飯を食べている時だった。

 

「あの……カミキさん質問があるんですけど、良いですか?」

「何でしょう?」

 

 あかねは神妙な顔をしているけれどどうしたのだろうか?

 特に何か注意される事はしていない筈だし、あかねに関しても気を遣っている位だが……もしや、役者の仕事が少ないと言うクレームなのだろうか?

 確かにあかねには役者の仕事をあんまり振れていないのは確かだが……それには事情があるのだ。

 あかねはまだ中学生なので当然親元で暮らしているだから、お金が必要な程切迫している訳で無い筈だ。

 反対に他の劇団員は大人なので、色々とお金は入用だし……特に女性陣に限って言えば美容などにも出費が掛かっているようで、とまとなんかは支払いがピンチなんですって涙目で言って来るぐらいだ。

 

「以前カミキさんは上の人がトングを握るって話をしてくれたと思いますけど……」

 

 どうやら俺が考えて居る事とは違ったようだ。

 チラッと横を見ると今日も今日とて上原パイセンに焼肉を焼かせている訳で……まぁ~芸能界は上下関係を重視する傾向があるし、あかねの言わんとしている事は分かる。

 

「流石に上原さんの事をこき使い過ぎじゃないんですか? ほら、カミキさんの方が年下な訳じゃ無いですか? このままだと新しい人が入った時に上原さんが舐められると言いますか……示しが付かなくなるんじゃないかなって思います」

「上原パイセンが舐められる?……果たしてそんな気概がある人が居るんですか?」

 

 俺は首を捻ってあかねに逆に訪ねてしまった。

 

「私は見た事無いわねぇ~清十郎そこのホルモン頂戴」

「おう」

「親父俺はカルビ!」

「大輝ちょっと待ってろ!」

 

 上原パイセンはビールを飲みながらもせっせと焼肉を焼いており、実に頼もしい限りだ……頭にタオルを巻いて薄着の所為か、筋肉質な肉体が見えているから絡まれる事は無いし……これで絡んでくる奴らは自殺志願者なんじゃないかな?

 

「この場合金田一さんを除けば一番のトップは姫川さんですよね? カミキさんの言う通りなら姫川さんが焼く事になりますよね?」

「愛梨パイセンが火傷したらあかねが責任取るなら構いませんけど?」

「えぇ~!!!」

 

 俺があかねにそう言うと物凄く驚いているが、全く何を言うかと思えば……あかねは配慮が足りないな!

 

「あかねは変に考えすぎなのよ。別に誰が焼いても美味しく食べられるならそれで良いじゃない?」

「そうかなぁ~? なんか絶対違う気がするけど……じゃあカミキさんが上原さんをこき使える理由ってなんですか?」

 

 かながそう言うも納得しきれていない様子のあかねで、次なる質問は俺が上原パイセンをこき使っているという風評被害とは……ちょっと言えない部分だった。

 

「あっ!それ私も気になってた。カミキは上原さんの事をパイセンって慕ってるけど……もしや何か弱みでも握ってるんじゃないの?」

 

 かなはそう言うとワクワクしながら聞いて来たが……男でもイケるパイセンに逆に弱みなどあるのだろうか?

 

「いえ、こき使っている訳では無いですけれど……」

 

 俺自身上原パイセンを都合の良い駒扱いなどしては居ないが……傍から見るとそう見えるだろうか?

 

「うん?そんなことか……それはだな。俺を認めてくれたのがカミキでな……まぁ理由は置いといて、俺の事をパイセンパイセンって慕ってくれる訳だし、言っちゃあなんだが悪い気はしないし……まぁその所為で誤解しているみたいだけど……実際はカミキの方が先輩なんだぞ……愛梨がトップなのは間違いないけどな」

 

 上原パイセンはそう言うと照れながらも説明しているが……肉はちゃんと焼いていた。

 

「……とはいってもカミキは私が劇団ララライに入って一か月後に入ったから実質的には同期とも言えるわね」

「確かに……なら俺も同期みたいなものだよな!」

 

 ララライだけで見たなら確かに同期だけど……実際は芸歴からして違うし、年上なのは間違いないのだから俺が2人をパイセン扱いするのは間違って居ないのだ。

 

「……愛梨パイセンも上原パイセンもこう言ってくれてはいますけど、実際に芸歴は私より上なんです。なので、パイセンって呼称は間違いでは無いんですよ」

 

 基本大人組は大丈夫だけど学生組……特にあかねは人見知りする性格なので、気の置ける友達が居れば良いけれど……

 

「あかねもそう言った友達を作った方が良いわよ~」

「うっ!」

「あら? もしかしてその反応だと居ないのかしら? 確かアクア君と同じ学校なんだから仲良くすれば良いのに……」

「あ……愛梨さん!そうは言っても学年は下ですし……ちょっと私には敷居が高いと言いますか……あっあとかなちゃんだって友達居ないですよ!」

「大丈夫よ~かなちゃんにはカミキが居るしね」

「……最近はやかましい後輩が居るし? まっあかね程人見知りしてないから私は問題無いわよ」

 

 多分やかましい後輩とはルビーの事で間違いないだろうけど……まぁ……顔を合わせる度にアイドルやりましょうよって言われてるみたいだし、かなからすれば面倒ではあるものの求められるってのは嬉しい事なので、どことなく楽しげなかなだった。

 

「だ……大輝さんはどうなの?」

「うーん……芸能活動していると中々難しいし、俺も学校に友達が居るかって言えば話相手は居るけど……あかねと違って俺には兄さんが付いてるからな!」

「大輝君……何時でも頼ってくれて良いんですからね!」

 

 大輝君に友達が居ないのは少しばかり寂しい事だけど……それとは別に俺の事を頼ってくれるって言うのは嬉しく思ってしまった。

 

「うっぅぅ……私だって友達位……学年が違うアクアは難しいよぅ」

 

 その人見知りをどうにかすればあかねも友達位すぐ出来ると思うけど……まぁアクアと仲良くなる分には全然良いけど……二人がそう言う関係になったらどうしよう?

 その場合あかねの家にアイとゴローさんを伴って挨拶に行かないといけない気がするけど……その時点で心証は悪い気がするのは気のせいだろうか?

 

 そんな先の未来を考えつつ俺は焼き肉を食べるのだった。

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