カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第168話

 ドラマも終わりしばらく暇な日が続くかと言えばそんな訳も無く……モデルのお仕事で予定は埋まっているのだ。

 

 女装が多いのは別段構わないが……金髪繋がりでギルティギアのブリジットや月姫のアルクなども演じる事が多く、自身がモデルなのかコスプレイヤーなのかが分からなくなってきているが……ちゃんとギャラを頂けるのであれば演じるのがプロだし、深く考えるのは辞めよう。

 

 そんな訳で師も忙しくて走り回る12月に突入してしまった。

 

 ……と言っても、基本バラエティー番組に出る事はしてないので、モデルと舞台でのお仕事位をせっせとこなして、かなの送り迎えもしつつ安全運転で自宅に帰る日々だったが、今日に限って違った。

 

「あ~炬燵が暖かいよぉ~」

「日本人にとって炬燵は切っても切れない関係だよねぇ~」

 

 家に入るとカナンとニノは炬燵に入ってぬくぬくして、あゆみさんは緑茶を飲みながらも困った顔しており、アクアはどこか困惑しつつも黙ってみかんを食べていた。

 

 これは……カナンとニノは間が持たない為、何か話題を作ろうとしているが……あゆみさんとアクアはおしゃべりさんでは無いのでどうしても盛り上がりに欠けてしまい困っているのだろう。

 

 普段のニノなら何かしら手の込んだ料理を作る名目でキッチンに逃げるし、カナンならネタが思いつたーとか言って、自分の部屋に逃げるのだろうが……雪が降るほどでは無い物の東京もそれなりに寒いし、炬燵があるのがリビングだけなので逃げたくても逃げられないのだろう。

 

「「た……ただいま」」

 

 そんな様子が見て取れる位にリビングでは現在気まずい空気が流れており、思わずかなとはもって答えてしまった。

 

「二人ともおかえりー」

「かなちゃんとヒカルさんお帰りなさい!」

「お邪魔してます」

「お……お帰りなさい」

 

 そうなれば4人が一斉に助けを求める目でこちらを見ており、あろうことか隣に居るかなも俺にどうにかしろと言わんばかりに目で訴えていた。

 

「あの……どうかしましたか?」

 

 一旦荷物を置いてアクアの正面……詰まるところあゆみさんの隣に座ると逆サイドに当然の様にかなが座り始めた。

 

 炬燵はそこまで大きい訳では無いが……俺もかなもあゆみさんも小柄な為、窮屈って訳では無いけど、出来ればニノかカナンの方に座って貰いたかったが……まぁ良いだろう。

 

「父さん……実はアイの話をしていたんだけど……ほら、アイって自分の事を話さないからどんな人なのか分からないって言ったら……」

 

 アクアは言いづらそうにそう答えたが……ニノやカナンにしてみればアイは協調性皆無で無責任な人間で有るし、俺から見るアイは相手の心に致命的な一撃を無自覚にぶち込むヒットマンならぬヒットガールで有る。

 それが良い方面に作用するならまだしも……悪い方面にも作用するから質が悪いのだ。

 アイのファンで有るゴローさんやルビーと言った限界まで振り切ってしまったオタクどもにとってアイは脅威の中毒性を孕んだ麻薬であるが、ファンでは無い人にもかなりの毒であり、用法・容量を守っていても貫通してくる場合があるので困ったちゃんで有る事は確かだ。

 

「……アクア君……ごめんね。私がダメな親だったから……」

 

 あゆみさんは絞り出すようにアクアに声を掛けるが……これはこれで事実であるから、なんともフォローしずらい。

 今は落ち着いているが……そもそもあゆみさん前科持ちだし、アイを虐待していた過去がある訳だし、毒親であった事実は間違い無いのだ。

 

「私がアイの事をしっかり教育出来て居れば愛久愛海なんてふざけた名前を付ける子には育たなかった筈なのに……」

 

 いや、それは……どうなんだろう?

 あゆみさんがどうのこうのって問題では無く、言っては何だが……障害を抱えてしまった子を産んでしまった母親は多くの場合い病む傾向にあるのだ。

 何故なら周りの子と違って自分の子は普通の事が普通に出来ないのだから、両親のメンタルは大分キツイのに……それがシンママ状態では精神が張り詰めてしまい、ある日ほんの些細な出来事をきっかけに最悪の事態が訪れるなんてのは良くある話だ。

 

 実際アイの場合どの程度のレベルかまでは分からないが、発達障害の傾向があるのは確かなので、仮にあゆみさんがお金に困らない裕福であったとしても、いずれはアイに手をあげるだろうし……何ならアイと離れる為だけにわざと犯罪行為を行い、刑務所に入ろうとする可能性だってあるのだ。

 

 ……知識があれば、理解が出来ればなど外野は簡単に言えるが、状況は刻一刻悪くなるし助けてくれる人が居なければ人は簡単に壊れてしまう。

 

 そんな事を考えて居た時だった。

 

 ガチャっとドアを開ける音が聞こえたかと思えば……

 

「いやー外は寒いし、お仕事で疲れたからお腹ペコペコだよー。ニノー私にもご飯頂戴」

 

 満面の笑みを浮かべた状態でアイがやって来てしまった。

 

「……あのねアイ? まずここはあなたの家じゃ無いでしょう?」

「えー? 私とヒカル君は仲良しだし問題無いよ……ってアクアが居る!? 何でなの!」

 

 あっけらかんとアイはそう言ったが……アクアが居る事に気が付いてすぐさま驚き始めたが……

 

「……ヒカルさんとアイの関係に関しては一旦置いておくけど、アイはこの子の名前ちゃんと言える?」

「お母さんさぁ~当然言えるに決まってるじゃん! この子は私の子供で星野アクアだよ」

 

 アイは胸を張ってそう答えたけれど……マリンが抜けてるんだよなぁ~

 

「自分で付けた子供の名前を間違える親はダメでしょ!」

「はうあ!?」

 

 あゆみさんはそう言うとスリッパでアイの残念な頭を叩いた。

 俺達全員はそれをただ眺めていることしか出来なかった。

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