更に月日は経ち……
『カミキ君……毎月ありがとう……本当に助かるよ』
「いえいえ、私にはこれぐらいの事しか出来ませんから、何かあったら連絡くださいね」
『……分かった。また今度連絡する』
雨宮さんはそう言うと、通話を切った。
高々養育費位子供の為なら幾らでも出してやるけど……アイの状況が状況なので、雨宮さん自身働く事が出来ないのだ。
そうなると……貯金を切り崩さないといけない訳だけど、収入が無いのにお金だけがどんどん減っていくのは思っている以上にストレスが溜まるのだ。
これがルビーだけなら、世間的には有り得ないけど雨宮さんも仕事をしていても問題無いけれど……アクアが普通の子で有る以上ルビーがどうこう出来る訳も無いので結局の所精神的にマズイ状況なのだ。
そして、アイもかなり精神的に来ているようで、寝ても疲れが取れていないようで目の下もクマが凄いようなのだ。
これが世間に隠していなければ、毎日は難しいけど……ベビーシッターを雇うって手もあるんだが……アイがアイドルで有る以上は告げ口のリスクが有るので安易にやれないのだ。
つまり……そろそろ限界がやってくる。
雨宮さんもアイも決して暴力を振るう事は無いけれど……それでも態度や仕草というものは人間なので出てきてしまう。
しかし、それを子供に理解しろなんていうのはおかしな話だ。
なので、次……アイかゴローさんから連絡が来た時は二人を休ませる名目で一旦アクアを引き取る事にしよう。
ルビーに関してはほぼ手間がかかっていないので問題無いそうだから大丈夫だろ……多分……恐らく……きっと……
そんな事を考えながらも進学先をどうするか考えないとな……
アクアを引き取るのであれば、全日の高校は流石に不味いし……普通の子供ならジッとしている事なんてほぼ不可能だ。
そうなると通信制の高校に通うって言うのも一つの手だし……最悪は中卒でアクアが保育園に通い始めてから高校に行くって言うのもあるが……保育園ってそもそも何歳から行けたっけな?
ようやくスマホが登場したから、ガラケーから機種変更した。
早速これで調べると……あ、0歳から行けるみたいだった。
うーん、そうなると……入園手続きが必要ではあるけど、アイと雨宮さんだと世間的に問題だし……上原パイセンと愛梨パイセンにお願いすれば……行けるか?
あんまり巻き込みたくない事情があるからアレだけど……確か原作でも斎藤夫妻の子って事にしていたし……問題は無いのだろうか?
あーこれなら芸能活動は一旦休止にして、全日の高校に通う事も出来るけど……アイはあれだけど……雨宮さんは気が付いても良い気がするけど、アイが絡むから自分達では出来なかったのかな?
とりあえず、引き取る話は一旦置いといて明日にでも連絡してみるか、今日はもう遅いし……
時刻はやっぱり深夜を過ぎてるして……若いとは言え、休み無しで働いてるのだから疲れはやっぱりあるので、目を閉じたらすぐさま眠ってしまった。
学校が終わり、ドラマが終わっても、舞台が俺を待っている訳で当然の様に忙しいのだが……今回は特にヤバいからもしれん
「カミキーひ・さ・し・ぶ・り・だ・ねぇ~」
「……YURIKAさんお久しぶりです」
「カミキさぁ~なんでメールしくれないの? 私に飽きた?」
YURIKAはそう言うとシクシクとウソ泣きをし始めたが……いや、YURIKAもメールしてないじゃん!
「……いえ、私もYURIKAさんと同じでここの所忙しすぎて大変なんですよ」
「ええ~だってカミキはテレビの番組になんて全然出ないじゃん! 私なんて7個もレギュラー抱えているんだよ!……もしや、女関係で忙しいなんて言わないわよね」
YURIKAはそう言うと睨むように俺の事を見て来たけれど……あながち誤解と言えないのが辛い所である。
「……確かにYURIKAさんのようにレギュラー番組どころから、私はドラマの脇役位しか出ておりませんが……それ以外にもモデルの仕事がありますので、YURIKAさんのギャラには負けますが、それでも結構良い金額頂いてるんですよ」
「ふーん……それってどれくらい? もし大した金額じゃ無かったら……カミキの時間を私がその倍の金額で買ってあげるよ」
YURIKAは上から目線でそう言うけど……予定さえ詰まっていなければ、寧ろ買って貰えたってのかよ!
流石に一度受けた仕事をキャンセルにするのは不義理にも程があるし、それこそこの先俺が困った時助けて貰えなくなる。
「YURIKAさんちょっとお耳を……」
「良いわよ」
「私のギャラは……ごにょごにょ」
「え!? ……意外と貰ってるわね。これは倍は結構キツイけど……よし! 買ったわ」
いや、決意したところで悪いけど……
「いえ、流石に一度受けた仕事なのでキャンセルはしませんよ……」
「何でよ!」
「不義理はしたくありませんから……なので、先々であれば……構いませんけどどうします?」
「じゃあ、来週の金曜日はどう?」
「……来週の金曜日は……ちょっと待ってくださいね」
新しいスケジュール帳を取り出して確認しないと……
「カミキさぁ~意外とアナログだよね? 今時スケジュール帳で確認する子なんて見た事無いよ? スマホのとかでやれば良くない?」
「うーん、スマホのでも良いんですけど……結局の所こういうのが一番良いんですよね。スマホだと電源切れたら何も出来ませんし……モバイルバッテリーを持ち運ぶのもどうかと思いますので、必要最低限の事が出来れば問題ありません」
後……字は書くと覚えられるし、必然的に字も綺麗になって来るのだ。
便利な事は良いことだけど……それに慣れちゃうと、それはそれで不便なのである。
「……ふーん、ま、カミキが良いなら私はどうでも良いけどね~」
YURIKAは口を尖らせてそう言ったけど……来週の金曜日はニノが泊まりに来る予定なので今回は無理だな。
「……来週の金曜日はもう予定が入っておりまして、再来週であれば大丈夫ですけどどうしますか?」
「……じゃあ、来週の土曜日は?」
「モデルの仕事ですね」
「……日曜日は?」
「……モデルの仕事です」
「じゃあ! 月曜日はどうなのよ!?」
「……20時から空いてますけど?」
「じゃあ20時からで良いからそのまま開けときなさいよ! ちゃんと払うから!」
「……分かりました」
いや、まぁー払ってくれるって言うなら黙って受け取るけど……はぁー中々スケジュールが厳しくなって来たものだ……
そんなこんなで舞台稽古も終えて……その後モデルをやると必然的に家に帰る時間は深夜を過ぎるというブラック企業も真っ青な労働環境である。
お金は溜まるから良いけど……コレ芸能活動休止はちょっと無理かもしれないな
深夜過ぎに電話なんて……ましてや、赤ちゃんのいる家庭に電話するなんてどうかと思う……
そんな事を考えて居た時だった。
突如アイから電話がかかって来た。
『……ひ、ヒカル君? 今大丈夫?』
何とも弱弱しい声だけど……大丈夫な訳無いよな。
「……大丈夫ですけどどうしましたか?」
『実は……相談があるんだけど良い?』
アイからの相談と言えば……子供の事に他ならないだろう
『……私正直子育てを甘く見ていた』
アイは今にも泣きそうな声でそう言い始めたが……まぁ~世のお父さんお母さんは立派だと思うよ。俺は自分の両親にあった事無いから知らんけど……
『子供さえいれば……私は何だって出来るし、どんなことでもやってみせるって思っていたけどさ……正直もう眠いの……まともに眠っていないから、ふらふらするし……私どうすれば良いのかな? ルビーは凄く大人しいから大丈夫だけどね。アクアが……大変なの……ようやく寝そうになったから……ベットに運んだら……背中にスイッチでもあるみたいで、ずっと起きてるの……私もう寝たい! ぐっすり朝まで……寝たいよカミキ君』
アイが……ワンオペジョーカーみたいな事になっていた。
こうなってくると保育園云々では無く、アイの為にも早急にアクアを引き取らなければ……アイが過労死するな
「……アイさん以前のアクアを引き取る話覚えてますか? もしよければ……再来週からなら引き取れますよ?」
『……再来週は長いよぉぉぉ~』
いや、だって俺も忙しいし……そこは頑張ってくれよ