「お待たせしました。おでん出来ましたので食べましょうか?」
「「「「「は……はい」」」」」
「ヒカル君のおでんだぁ~」
他五名はとりあえず元気を出して欲しいけど……アイはちょっと考えて欲しいものだ。
とりあえずキッチンミトンを装着し土鍋を炬燵に運ぶ。
炬燵の上には既に土鍋を置くようにマッドも置いてるので問題は無いが……一番の問題はアイの暴露により、空気が重くなっている事なのだ。
食戟のソーマみたいなアニメなら、料理を食べて和解! みたいなことが出来るかもだけど……アレはアニメならではの演出だし、そもそもなんで飯食っただけで服がはじけ飛んで絶頂するのか分からん。
媚薬みたいな分かりやすいものや感度を上げる効果がある食べ物……もとい香辛料などは一応存在するが、そんなものを毎回料理に入れれば味がおかしな事になるし……お金も無駄に掛かる。
やっぱりコスト0の口説き落とすのが一番良いな!
……などと現実逃避しても仕方が無い
俺は何処に座るべきだろうか?
今東にはアイが一人、南はカナンとニノ、西はかなとアクアで、北があゆみさん
アイだけが平然と……もといアクアの事をガン見しており、アクアは居心地が大変悪そうであゆみさんは罪悪感故に頭を抱えていた。
これは……アクア側であゆみさんの隣に座るべきだろう。
「……それではあゆみさん隣失礼します」
「え? 私の隣なの?」
俺がそう声を掛けるとあゆみさんは困惑しながらも横にズレてくれたが……
「えー? ヒカル君こっちに座ろうよ!」
アイはそう言うと自身の隣に座る様に催促するが……アクアとあゆみさんの事をほっぽいてアイを優先するのはおかしいと思い、俺は首を横に振って態度で示した。
「……アイさんはほっといて頂きましょうか?」
「無視は酷いよー」
「「「「「頂きまーす」」」」」
「召し上がれ」
「わ……私も食べるよ~頂きます」
空気は重いが……とりあえず夕食がこうして始まった。
作りたてと言う事も有り、少しばかり熱いけど……ちゃんと味は染み込んでおり、自分で言うのも何だけど結構うまいな!
ふとアクアを見ると……まるでリスの様にほっぺを膨らませながらも美味しそうに食べており、これはこれで作った甲斐が有ったと内心ガッツポーズを決めてしまう程嬉しいものだった。
結構な量の具材を入れたものの、食べるのはあっという間に終わってしまい……今洗い物をニノとカナンがしてくれている。
恐らくおでんを食べた事で体が温まったから、炬燵から出る事が出来たのだろう。
決して逃げた訳で無いと自身に言い聞かせているが……
「あ~私は……お風呂入って来るね」
かなはそう言うとすぐさま立ち上がり逃げて行った。
一人……また一人……居なくなり、遂には星野家IN俺と言うかなり居心地の悪い空間となれば、話は戻ってしまう訳で……
「今度家庭裁判所に行って名前を改名してくるね」
アクアは意を決してそう告げる。
「待ってアクア! アクアの名前にはちゃんと理由があるの!」
アイはそう言うが……一体どんな理由があれば、愛久愛海なんてヤバい名前を子供に付けようと思うのだろうか?
「……どんな理由なの?」
「それはね。私がアイドルに成って13歳位だったかな……宮崎でライブをやる事になったのね」
「それで?」
「宮崎って大分田舎だったから、都会と違って空気が澄んでいた所為もあって、ライブ前に見た夕焼けの空にひと際輝く一番星があって、私物凄く感動しちゃったんだよね。その時に佐藤さんが丁度来て、あのひと際輝く一番星はスピカって言ったの。その後にあの青い光はアクアマリンって言われたからってのも有るけれど、その後にスピカは二つの星からなる連星って言ってて、要するに双子星って言うんだけど……その後子供を妊娠して、双子って聞いた時私嬉しくてね。なんか運命を感じたから産まれて来る子供にアクアマリンとルビーって名前を付けようって思ったんだ」
アイはそう言うとその時の事を思い出したかのか、嬉しそうにアクアに名前の由来を語ったけれど……いや、確かにそれは良い話しかも知れないけれど、せめて名前をどストレートにするのでは無く何かしら捻って上げれば良いのにと俺は思ってしまった。
「……名前の由来は分かったよ」
「……じゃあ名前の改名はしないよね!?」
アイは自分の気持ちがアクアに届いた思い笑顔になったが……
「それとこれとは全く別! アイが感動したエピソードは分かったし、その感性を否定する気は無いけれど……だからと言ってどストレートにアクアマリンって付けなくても良いじゃん! しかも愛久愛海って完全に当て字だし、自分の名前がこれだったらアイはどう思うのさ!」
アクアはそう言うとにべも無く言ってしまった。
「わ……私は良いと思うけど?」
名づけた手前アイはそう言わざるを得ないけれど、それはアカン奴やで……
「そんなに良いなら自分の名前をアクアマリンにすれば良いじゃん?」
「え!?」
「良い名前何でしょ? 何か問題でもある?」
「それはそうだけど……私の名前はアイだし……」
「アイなんかよりもアクアマリンの方が良いよ! それにアクアマリンって名乗るんだったら、家に戻る事も考えるけどどうする?」
「うぅぅ……私……私……」
等々アイに特大のブーメランが来てしまった。
良い名前だと思うなら、自分が名乗れば良いとは確かにアクアの言い分が正しいしその通りだと思う。
しかも、ここでアイが悩んでしまった以上答えは出てしまった訳で……
「悩む必要無いよね? 良い名前何でしょ?」
「ごめんなさい!」
詰めるアクアに謝ってしまったアイだったが、正直同情は全く出来ないし……アクアだって相当悩んでいたみたいだからこればかりは仕方が無いと思う。
「……とりあえず、アイさんの事は置いといて改名後の名前って何か考えて居るんですか?」
「それなんだけどアクアはラテン語で水だし、そこに父さんの名前も入れて『
星野水輝……語感は良いし、アクアの由来と言い張る事は出来るし俺個人は良いと思う。
それに毛嫌いしていた名前も形は変えても残そうとしている所にアクアの優しさが見えている。
「私は良いと思いますよ。アイさんはどう思いますか?」
「う……うん。アクア駄目な親でごめんね」
「……僕も良い過ぎたけど、これだけは分かって欲しい。僕はアイの愛玩動物じゃなくて人間なんだ」
「……はい」
アイは返事をしたものの俯いてしまった。
アクアやルビーを大事にしているのは分かるけれど……やり方が歪んでいる部分がある。
アイも苦労して来たからこそ、子供達の為に頑張っていたけれど……相手に喜んでもらうにはどうすれば良いのかを知らないのだろう。
だからこそ、自分がいっぱい稼げば大丈夫と考えているし、私が面倒を見ると言うのだろう。
其処は俺も同じだが……決定的に違うのは稼ぎ方を教えるかどうかなんじゃないかと思う。
アクアは自分でどうにか稼げるから問題無いが、ルビーの場合アイドルを失敗すれば将来終わる可能性が割と高いのだ。
夢が叶えばハッピーかと言えばそんな訳も無く、人生は続く訳だし……
「とりあえず、ルビーの事も気にしてあげてくださいね」
「……うん」
物凄く落ち込んでいるアイの頭を撫でながら俺はそれだけ言った。