カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第176話

「じゃあ学校行って来まーす♡」

「行ってらっしゃーい」

「気を付けてねー」

 

 かなはそう言うと幸せそうな笑みを浮かべて学校に向かって行った。

 今朝の事もあり、若干歩き方に違和感はあるけれど……

 

「それじゃあ本題に入りましょうかヒカルさん?」

 

 ニノは包丁を研ぎつつ、そう言った。

 

「……とは言ってもヒカルは我慢した方だと思うけどねー」

「カナン……何か言った?」

 

 鋭い目つきでニノはカナンを見ると、カナンはすぐさま意見を翻した。

 

「やっぱり約束を破るのは良くないよね!」

「そうだよね~カナンはこっち側の意見に賛成だよねぇ~」

 

 俺としても泥酔していたとはいえ、今回の出来事は誠に遺憾である。

 かなを抱いた事に後悔はしていないけれど……酒の所為でやってしまことは申し訳ないと思う。

 

「……かなの初めてをこんな形で奪ってしまった。我ながら情けない」

「当のかなちゃんはめちゃめちゃご機嫌だったからその点は大丈夫だけどね」

「あと一応アフターピルは飲ませたから問題は無いと思うけど……そんな事よりも重大な事があるの! カナンは生でヒカルさんとヤった事ある?」

「私は無いけど……もしかして……」

「そうなの! ヒカルさんの初めての生はかなちゃんになっちゃったの!」

「……え!?……あっ……そっか……泥酔していたからゴム無しだったんだぁ~」

 

 カナンとニノが言うように俺は生でやってしまっていたのだ。

 

 泥酔していたから、生の感触はサッパリ覚えていない。

 女性経験は豊富だけど……生でやった事は一度も無い。

 

「……今更だけど、ゆらちゃん物凄く怒るんじゃない?」

「寧ろ、今まで許していたのが凄いけどね」

「そこは安心と信頼の避妊大使だからじゃない?」

 

 二人の会話を聞いて、思わずゆらが怒り狂うイビルジョーになる姿を想像してしまったが……う~んベットに連れ込まれる程度で済めば良いなと思ってしまった。

 

「「さっきから黙っているけど、ヒカル(さん)はどうする気なの(よ)?」」

 

 そんな事を考えて居たら、問いただされてしまった。

 しかし、こういった事に関しては男に選択肢などある訳ないのだ。

 意識朦朧で泥酔していたからと言え、かなに手を出したのはまぎれも無く俺自身の本能に他ならない。

 例えベットに潜り込むのが習慣になっており、相手から誘われたからと言ってヤって良い理由にはならないのだ。

 

「……それを決めるのはかなであって、私じゃありません。しかし、かなが望むなら私は最後まで面倒を見るだけです」

「ま~ヒカルならそう言うよね」

「……そうだった。ヒカルさんはそういう人だった」

 

 カナンは困ったように笑い、ニノは呆れてしまったようだけど……

 

「そうは言っても、私もニノもちゃんと発散させてあげる事が出来なかった訳だしね」

「うっ! かなちゃんは兎も角……あゆみさんも居たからヤれる機会は極端に少なかった訳だし、ヒカルさんが我慢の限界を超えちゃうのは無理も無いかも……」

「そうだよ~それまではほぼ毎日ヤっていたんだからさぁ~……考えようによっては私達も遠慮する事無く出来る訳だし、良いんじゃない?」

「……あゆみさんはまだ居るから無茶は出来ないからね」

「あゆみさんなら近々ここを出られますよ」

 

 もう、安全は確保出来た訳だし、そもそも俺達にとっては関係性が薄いけどアイの肉親だったから居た訳なので、いずれは出て行く事になるのだ。

 

 引っ越し先は安心と信頼の上原パイセン達が住んでいるマンションで近くには孫のアクアが居るし……問題は無いだろう。

 

 お茶を飲みつつ俺は今後の事を想像していたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 何時からだろうかなちゃんの演技の質が変わったのは?

 

 かなちゃんが天才子役ともてはやされた時に見た自分勝手ではあるものの、まるで太陽の様にキラキラと輝いた姿は私の脳を焼いており、今でも昨日の様に思い出す事が出来るというとか……今までかなちゃんが出ていたドラマや映画ならば全部思い出せる。

 

 ……初めて会った時はテレビに映っていた可愛らしい姿では無く、口がかなり悪く初対面なのにボロクソに言われたから家に帰って泣いちゃったけど……

 

 思い返して見ればあの時のかなちゃんはテレビの露出が減っていた所為で、大分焦っていたようだし子供ながらに余裕は無かったのだろう。

 

 次に会った時は劇団ララライに所属してからだった。

 

 かなちゃんは私の事を完全に忘れていたのが悔しくて……つい露出が減った事を言ってしまったが、その時はカミキさんが間に入ったため特に何事も無く終わってしまった。

 

 その時は何でカミキさんがかなちゃんを庇った理由は分からなかった。

 

 ただ同じ年って事もあり、かなちゃんと同じ舞台やドラマに映画も出るようになったけれど……その時にはかなちゃんの演技の幅が変わってしまっていた。

 

 子役だった時の我儘な演技は鳴りを潜め、周囲にあわせる演技をしていたのだ。

 

 色々理由はあるだろうけど……一番の理由はカミキさんの影響なのだろう。

 

 ……だけど他の劇団員に合って、あの人に無い物

 それは演技に対する情熱だ。

 劇団に所属する人なら多かれ少なかれ、そう言った話は大好きだし私なんてそれだけで無限に話せるし、かなちゃんとも時間がある時は良く話して居るのだが……

 

 しかし、かなちゃん曰くカミキさんは別段演技が好きな訳では無いから、そこに情熱なんてものはないとのこと

 しかし業界内ではカミキさんの事を『役者殺し』と言う人は多くおり、演技力は他の追随を許さないものなのだが……しかし情熱は無いのだ。

 

 舞台に立つ人はすべからず『私を見て』という自己表現が強く、それだけにスポットライトが当てられる主役をやりたがる人は多いのだ。

 

 普通なら脇役なんてやりたがる人は居ないけれど……カミキさんは違った。

 脇役だろうが端役だろうが与えらた役で結果を出しているのだ。

 

 どんなに演技が下手な役者が居ようともカミキさんが居るだけで、その役者は光り輝いて見える。

 それは周りに合わせる演技では無く、演者のレベルを引き上げるもので、つまるところカミキさんを一言で言い表すならばまさしく『プロ』なのだ。

 

 つまり何が言いたいかと言えば……

 

「あかね! 何時までも隅っこに居ないで早く来なさいよ!」

「そ……そうは言っても私人見知りだし……」

「前から言ってるけど、芸能界は演技力だけじゃなくて、愛嬌も重要なの! 分かったらとっととその成長中の脂肪を晒しなさい!」

 

 かなちゃんはそう言うと私が身に着けているタオルを奪い捨てて、舞台に押し出して来た。

 

「すみませーん。それでは撮影お願いします」

「よーし! じゃあ始めるよー」

 

 かなちゃんも身に着けていたタオルを投げ捨てて、フリルデザインの赤い水着姿をさらけ出す。

 かなちゃんは露出が少ないからまだいいかもだけど……中学生なのに私は黒いビキニなんか恥ずかしすぎるよー

 

 その後私は顔を真っ赤に染めてかなちゃんと水着の撮影を行ったのだった。

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