何故俺はここに座っているのだろうか?
「はい、それでは本日のゲストはこの方!ドラマ『特殊捜査員:神裂光のオカルト事件簿』の主役を務めるカミキヒカルさんと今をときめく女優のゆらさんになりまーす」
司会の人がそう言うと観客席に座る女性から黄色い声援が飛び交う。
こういったところに座るのは大抵がエキストラの筈なんだが……やたらと色っぽい視線を感じるのは恐らく気のせいでは無い様で、隣に座るゆらから少しばかり……圧力を感じる。
「ご紹介に預かりました神裂光役を演じるカミキヒカルです。よろしくお願いします」
司会の人……引いてはカメラに向けて挨拶をすると先ほど以上の黄色い声援が飛び交う。
まぁ……大半が『ちっちゃくて可愛い』とか『カッコ……いや、可愛いわね』や『なんでメイド服じゃないの!?』とか色々言われているが……メイド服に関してはギャラの問題もあるがそもそも頼まれて無いからだとしか言いようが無いからだ。
「カミキヒカルの公式彼女で女優の片寄ゆらでーす。本日はよろしくお願いしまーす」
ゆらはそう言うと可愛らしくしなを作りカメラに向けて挨拶をした。
「いやー二人とも未だにお熱いでねぇ~あの伝説の恋愛リアリティードラマでくっ付いて未だに続いてますからねぇ~私も当時はリアルタイムで見ていましたけれど……元B小町のアイとバチバチでしたもんねぇ~その辺り今は……この間のドッキリ企画を見た感じですとまだバチバチだったりしますか?」
「そんな事無いですよぉ~プライベートでは仲良しなんですよぉ~」
実際は……かなりバチバチなんだけどね。
実の所俺がこのバラエティー番組に出る羽目になったのは……一番の理由はアイと共演したドラマが原因でというか……アイがゆらにマウントを取ってしまった事でゆらが爆発寸前まで行ってしまったので、ご機嫌取りも兼ねて一緒に出る事になったのだ。
つまり、何が言いたいかと言えば……
「ところで今回は『特殊捜査員:神裂光のオカルト事件簿』のシーズン2の番宣と言う事ですが、片寄さんが一緒に居るって事はもしかして……?」
司会の人は実に楽しそうに話題を振ると……ゆらが楽しそうにし始めた。
内心頭を抱えてため息を盛大に吐きたくなるが……カメラが回っている以上はプロとしてそんな姿を見せる訳にはいかない。
「そうです。女優の片寄ゆらもシーズン2から登場いたします」
「これは……カミキさん改めて神裂光を取り合う三角関係が勃発って事ですかね!? あの伝説の恋愛リアリティーショーがまた見れるみたいですよ!」
司会の人は大分興奮気味でカメラに向かいアピールをしたが……いや、たしかにアイとゆらの二人は超絶美少……いや、ゆらは兎も角アイは年齢的に少女では無く美女だな……何せアイは年齢的にはアラサーだし……
しかし、あの恋愛リアリティーショーも視聴率は凄かったのは確かだし、ゆらもころももその後は売れっ子になったのは事実なのだ。
鴨志田もあの見た目だし、2次元の舞台で頑張ってるんじゃねーかな? 知らんけど……
兎も角シーズン2に関してはフリルも登場する訳で……一波乱ありそうな撮影なのは確かだった。
「そういえばカミキさんって芸歴どれくらいなんですか?」
「……確か5歳くらいから入りましたので、今23年目ですね」
「俺より上じゃないですか!?」
いやいや、子役から活躍してて生き残って居ればそれぐらいになるもんだよ。
「それじゃあ何か凄いエピソードってありますか?」
「エピソードですか?」
「そうです。カミキさんっていわゆる勝ち組じゃないですか? カミキヒカルならではのエピソードってありますか?」
どうやら司会の人は俺の事を敗北しらずの完璧超人みたいに思っているようだが、一体どうしたらそんな勘違いをするのだろうか?
ドラマの番宣に来ている訳なので、撮影時に神裂光が着用している高級スーツを着ており腕時計は本来G-SHOCKのMT-Gだったが……今回は私物のロレックスのサブマリーナを付けていたので、コレの所為で勘違いされたかもしれないな!
いや、個人的には腕時計なんて時間が分かって耐久性もあればなんだって良いのだけど……四条社長から『良い男は良い物を身に着けるべきよぉ~』って言われてしまい、泣く泣く100万超えの腕時計を買う羽目になったのだ。
「それなら、この腕時計に関してエピソードがありまして……」
「それってロレックスですよね!?」
「ええ、……仕事でお世話になっている社長に腕時計の事で相談したら『良い物を身に着けるべきだ』と言われてしまい……その後高級腕時計のお店に連れて行って貰ったんですが……買ってくれるのかな~って思ったら、『立て替えてあげるからこれからも頑張ってくれ』と言われてしまいまして……」
「プレゼントやないのかい!?」
「まぁ……そのおかげも有って、仕事に今も有りつけているんですけどね」
「カミキさんも色々苦労しているですねぇ~」
某お笑い芸人みたいな企画内容ではあったが……テレビ的に話せるのはこれぐらいだろう。
電気・ガス・水道が止まった状態で長い事生活してましたは今の世の中完全アウトだし、そうなれば親は一体何をしていたんだ話になるが、親は蒸発していませんでしたとなれば今度は自治体に文句が行きそうだし……これは表に出させない内容だな。
ちなみに愛梨パイセンが当時住んでいた元共用便所部屋を見た時は『人間の住む空間じゃないわ』と発狂していたのは秘密だ。
そんな事もありつつも 番宣も行えて番組を無事に終えたが……
「ヒカルさんこの後暇ですか?」
俺の楽屋にゆらがやって来て可愛らしく訪ねて来た。
「今確認しますからちょっと待ってくださいね」
「はーい」
カバンからスケジュール帳を取り出してその後の予定を見ると……近くのスーパーでお肉の特売日と記入してあった。
確か一人一個だった筈……ゆらを連れて行けば二つ買えるな!
「ゆらさん一緒に来て欲しい所があります」
「ひ……ヒカルさん!? 分かったよ」
ゆらの手を握り目をしっかり合わせるとゆらは顔を真っ赤にし始めた。
多分ゆらは分かって無いけれど……それはそれとして、急がなくてはならない!
何故なら時間は……いや、お肉は待ってくれないのだから……