「ん……ちゅ……れろ……」
目をうっとりさせて顔を赤く染めてしまったかなだが……やっぱり一回やってしまうとブレーキが壊れてしまうのは若さ故なのだろうか?
「……ヒカルさん?」
そして俺の隣で目をくわっ見開いて凝視しているゆらがめちゃくちゃ怖い。
勿論言いたい事は分かるけれど……キスをされる前ならともかくキスの最中に抵抗なんてしてしまえばお互いに舌を噛んでしまう可能性があるので、こればかりはどうにもならないのだ。
両手は買い物袋で塞がっているし、かなに頭をがっちりホールドされて口の中を蹂躙されてしまっている。
1分だろうか……それとも10分程度は経ったのだろうか?
そろそろ両手のビニール袋を持つ手が限界ってところで……
「ぷはぁ……はぁはぁ……御馳走様でした」
かなは満足した様子で離れてくれたが……大分情熱的だったせいで俺とかなとの間に銀の糸が出来てしまっていた。
酔った勢いで……というと語弊しかないが、やってしまった事実は確かだし、かなをここまで変えてしまったのは間違いなく俺なのだ。
今更良い人振る気は全く無いし、そもそもこういう生き方を選んだのは俺なのだからちゃんと責任を取らないといけない。
「……とりあえず、買ったもの冷蔵庫にしまいますね。ゆらさん……説明はその後でいいですか?」
「一体どんな言い訳をヒカルさんはするのかな?」
物凄い目でゆらは俺の事を凝視しているけれど……返答によっては悲しみの向こうに行くことになるかもしれん。
死にたく無いけれど……覚悟を決めないといけないと気が来たようだ。
俺は買ったものを冷蔵庫に詰めつつ、ゆらに言う言葉を考えて居た時だった。
ピンポーンとインターフォンが鳴る音が聞こえたと思えばガチャっとドアを開ける音も聞こえた。
世間一般的にはインターフォンを鳴らしたならば住人が出るまで待つのが常識だと俺は考えるが、当の本人は『愛人』で有る事が免罪符になると思っているようで、能天気な声を出しながら入って来た。
「やっほーヒカル君ご飯できたぁー?」
「……まだですね」
「じゃあ中で待たせてもらうねー」
「それは構いませんけど、ルビーは良いんですか?」
「ルビーだけど動画撮影で遅くなるって連絡あったし、お小遣いも大目に渡してるから大丈夫だよ」
星野家のお小遣い制度がどの様になっているのか分からないが……地力で稼げるのならばもうお小遣いは要らないんじゃないかな?
「……これはアイさんを味方に付けた方が良いかも?」
ゆらは小さい声でそう零したが、アイは二択を外すから味方になっても足を引っ張るだけだから辞めた方が良いぞ。
「ゆらさん話合いの前に夕食作りますからリビングで待ってて下さい」
「……うん、そうする。ニノさんとカナンさんも味方に付けないとね」
ゆらはそれだけ言うとリビングに炬燵に座っている3人の所に向かい女子会をし始めた。
「な……なんか大変な事になったけど大丈夫?」
かなは心配そうに俺の事を見ているけれど、大丈夫じゃない大問題だ!
果たして彼女の目の前で養子の子にキスをされている彼氏を見て怒らない彼女が居るのだろうか?
非暴力主義のガンジーだってブチ切れる案件だと俺は内心考えてしまうが、しかしそんな事をかなに伝える訳には行かないし……俺は曖昧な笑みを浮かべつつ、夕食を何にするか考えて居た。
まぁ~せっかく特売の平牧三元豚を買った事だし、言を担ぐ意味合いも兼ねて夕食はとんかつにしよう!
「……まぁ何とかするので大丈夫ですよ。一旦着替えて来ますね」
流石に今着ているスーツを汚したく無いので、俺は部屋着に着替える為自身の部屋に一度戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ヒカルさんとかなちゃんの件だけど……一体どういうことなのかな?」
私はニノさんとカナンさんの二人に問いかけると二人は気まずそうに目を逸らしてしまった。
彼女である私には知る権利があるのだから目を逸らさないで答えて欲しいものだが……
「ん?ヒカル君とかなちゃんがどうしたの?」
そこに能天気なアイさんがワクワクしながら話に入って来たけれど……この人も大概である。
過去にアイさんとの間に子供が居る事は知っていたし、その子供がアクア君とルビーちゃんなのは聞いてるから問題無いので、アイさんとヒカルさんの件に関して私はとやかく言う気は無いけれど……妊娠した当時アイさんがヒカルさんを傷つける発言をして別れたのに未だに関係を持とうとするなんて一体どういう神経をしているのだろうか?
同じ女性でありながらも私にはさっぱり理解出来無いが……一つ言える事は二人が別れたからこそ私にチャンスが回って来たのは確かだった。
そんな事を内心考えて居たらかなちゃんも何食わぬ顔をして炬燵に入って来た。
「ヒカルさんとかなちゃんが関係を持っちゃったの!」
私がそう告げるとアイさんは迫力のある目をしながら一気にまくしたてた。
「流石にそれはヒカル君が悪いよね!……ゆらちゃん辛かったよね。後の事は私に任せてゆらちゃんはヒカル君とは別れた方が良いよ!」
アイさんはうんうん頷きながらヒカルさんと別れた方が良いと提案するけれど……その手には乗らない!
「絶対に別れないので大丈夫です! それよりもヒカル源氏計画を達成した女たらしをどうにかするのが先決だとおもうんだけど二人はどう思いますか?」
あっぱっぱーのアイさんは放っておいて、唯一の常識人であるニノさんと風の様に自由なカナンさんの意見を聞きたい。
「あの……その件に関してゆらちゃんのお怒りはもっともなんだけどね。ちょっと……そのアイの事情に巻き込まれたというか……しばらくの間ヒカルさん思うように発散出来なかった部分があってね。……それがようやく片付いた事が嬉しかったのか、珍しく酔っぱらって帰って来た事があって……そのタイミング悪くかなちゃんが寝ぼけてヒカルさんのベットに潜り込んだ結果……」
「ようやく関係を持つに至った訳なのよ!」
申し訳なさそうにニノさんは事情を説明するがかなちゃんは大変嬉しそうに答えた。
その表情はヒカルさんと初めて付き合えた時の私の表情とそっくりな女の顔をしていた。
しかし、あのヒカルさんが酔っぱらうなんて有り得るのだろうか?
以前マウントを取る為に度数の高い酒を大量に飲ませたけれどケロリとしている化物なのに……
「何でも摘み無しでテキーラのショットガンを20杯以上飲んだみたいよ」
ショットガン20杯! それって致死量超えてるじゃない!
カナンさんの発言に私は驚いてしまっていたが……
「それでも2日酔いになってないのが凄いんだけどね」
「カナンだったらどうなの?」
「私? う~んお酒は強いけれど……そのショットガン20杯はどう考えても無理かなぁ~」
経緯は分かった。だけど……うぅ……こればかりは、ヒカルさんだけが悪い訳じゃないし……そもそも、一緒に生活している以上これは起こるべくして起こった事で間違いないのだし、一番の問題はヒカルさんと一緒に生活していれば余計に惚れてしまうのは仕方が無いのだ。
外見は子猫の様に愛くるしいのに性格はクズなんて事は無く、寧ろ相手に尽くす超優良物件で生活力もあるし、借金もない……女たらしって事を除けば非の打ちどころもない完璧なのだ。
「……ヒカルさんの子を妊娠すれば少しは落ち着いてくれるかしら?」
「それはちょっと早いんじゃないかな~?」
「「「16歳で出産したアイ(さん)は黙ってて」」」
あっぱっぱーの事は置いといて何かしらの事はしないと今後とも被害者が続々増えるのは確定なのだが……その後の話合いでも不思議な事にヒカルさんを去勢するって発言だけは出なかったことから、私達はヒカルさんのそういった事を止める事は出来ないのかもしれない。