部屋に戻り、部屋着に着替えてから何時も付けているパンダの絵が描かれた緑のエプロンを着用し、髪の毛も後ろに纏めてからリビングに戻ると静かになっていた。
これが嵐の前の静けさで無い事を祈りつつ俺は先ほど買って来た豚肉のロースと卵、小麦粉、パン粉を用意してすぐさま作り始めた。
……と言ってもさほど難しいことは何もない。
最初に油を大量に入れた鍋に火を点けて、その間に豚肉のロース5枚に切り込みを入れて、次に肉叩き棒で肉を叩いたら塩・胡椒で下味をつけて小麦粉を全体に薄くまぶしたら溶き卵にくぐらせてパン粉を全体にまぶして鍋に入れて終わり!
この時に気を付けないといけないのが油の温度だ!
180度以上だと中に火が通らずに生焼け状態になってしまうのだ。
なので160度~170度ぐらいが丁度良く、2分たったらひっくり返して4分揚げる。
うん、キッチンタイマーもセットしているし問題無いな!
リビングからの視線が物凄く気になるが……まぁ良いとしよう!
揚げ終わったとんかつも油をちゃんと切って、その後に包丁で食べやすいようにカットして皿に盛りつける。揚げ物のお供の千切りキャベツとトマトとカットレモンを添えて……一皿完成!
続いて、2皿……3皿……と順番に作り終えて、それぞれをお盆に乗せて、リビングに持って行くと……ニノはウキウキしておりカナン、かな、ゆらは出来立てのとんかつを見て笑顔だったが……何故かアイだけは恨めしそうに俺の事を見ていた。
「ヒカル君……なんで兎のエプロンじゃないの? ヒカル君には絶対兎のエプロンの方が似合うよ。ちなみに色は赤だね」
兎のエプロンでしかも何で色も指定されているだ?って思いつつ考えると、そう言えば
アイのカラーが赤で兎のバッチみたいなの付けていたからそれに寄せようとしているのか?
「いやいや、何言ってるのアイ……ヒカルさんにはこのエプロンが一番似合っているからね」
「え~そんな事ないよ~」
「そんな事あるよ~」
アイとニノでバチバチし始めてしまった。
このままにしておくのもどうかと思い、アイとニノを落ち着かせようとしたが……
「ヒカルさんはここ!」
「わかりました」
ゆらに手を握られてしまい移動は叶わず、俺はゆらの隣に座る事になってしまった。
俺の対面はカナンで左はかなとニノで右はアイ一人……
「とりあえず食べましょうか?」
「そうだねぇ~」
「そうしよっか」
俺の一声にニノとアイは矛を置き両手を合わせる。
それに習う形で俺達も手を合わせる。
「「「「「頂きま~す」」」」」
出来立てのとんかつに俺はとんかつソースとタルタルソースとレモンを掛ける。
「あっヒカル次タルタルソース私のとんかつにも頂戴」
「わかりました」
カナンのとんかつにタルタルソースをかける為に手を伸ばして掛けてあげると……
「ポニテのヒカルは何か新妻感があって良いわよね!」
「そうですか?」
一体どこに新妻感があるというのだろうか?
「アクア……じゃなくて水輝が見たら、ヒカルの事やっぱりママって言うんじゃない?」
「流石にそれは……」
「ごほっごほっ」
かなはにししと笑いながらそんな事を言って来たので、俺も咄嗟に否定しようとしたが……アイがそのタイミングで咽てしまったのが気にかかる。
いや、今更そんな勘違いする訳無いよな?
「アイさん大丈夫ですか?」
「だ……大丈夫だよ。も~かなちゃんが変な事言うから驚いちゃったよ~」
ゆらはアイに声を掛けるがアイは笑って誤魔化したが……今の反応を見るに一緒に生活していた時にアクアはそれに近い事を言っていたのかもしれないな。
うーんモデルの仕事で女装をしていた訳だし、雑誌か何かを見て勘違いさせてしまったのなら俺の責任だよなぁ~
……とは言え、解決策なんて銭湯に行く位しか思いつかないし、流石にそれはどうなんだろうか?
そんなあほな事を考えつつ、とんかつに箸を伸ばすのであった。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「お粗末様でした」
慣れた作業とは言え、料理を作るのは30分位で食べるのは10分程度……まぁ芸能界では早食いもスキルの一つではあるものの、もうちょいゆっくり食べても良いんじゃないかな? とも思わなくないが、それを考えて居る俺も結局早く食べてしまっているし……職業病なのかもしれないな。
そんな事を考えつつ、空になったお皿を重ねてキッチンに運びお湯に付けておく……何故ならまだ話合いは終わって居ないし、ゆらがどう考えて居るのかが重要なのだ。
食べている最中は特に違和感はなかったので、良い方向に転がれば良いなとおもい冷蔵庫から、麦茶を取り出して5人分のコップに注ぎリビングに戻る。
炬燵に座る4人は夕食の余韻に浸っている所為か、終始笑顔でゆらも満足そうだったが、俺の事を見るとキリっとした表情を作り……
「……そうだね。これはかなちゃんが落ちるのも仕方ないなぁ~」
「そうでしょ!? 顔良し性格良しお金持ちで落ちない女は居ないのよ!」
我が意を得たりと言わんばかりにかなは立ち上がり、そのまま俺の来たと思えばガバっと抱き着いてきた。
中学2年……いや、今年の4月で3年生か……女子の成長は早いとはいえ、かなの身長は俺と同じ位で低くはあるものの、胸はちゃんとある訳なので抱き着かれば当然感触も有る訳で……
「うん……かなちゃん。ちょっと離れようか?」
「あっ……はい!」
ゆらの低い声にさっと離れたかなだけど……まぁー今のはかなが悪いよなぁ~
「それとされるがままのヒカルさんもどうかと思います」
「すみません」
「ん! こほん。それでは話を戻すけど……結論から言うよ。私も住む事に決めたから何か文句ある!」
「「「「ええ~」」」」
俺以外の4人が一斉に驚いてしまったが……
「わかりました。何時からですか?」
「って良いのヒカル!」
「そうですよ」
「こ……断った方が良いんじゃないかな~ほらルビーに悪影響出るかもだし?」
「ルビーに関しては今更じゃない?」
上からカナン、ニノ、アイ、かなの順番で言われたが、そもそもあゆみさんを居候させていた事もある訳だし、そもそも彼女が一緒に暮らしたいと言って断る彼氏は居ないので良いも悪いもないのだ。
これは言われた段階で受け入れざる得ないのだ。
「……実は今住んでいる所の契約が今月で切れるから、出来ればすぐにでも引っ越したいかな?」
「わかりました。ちなみに今日はどうしますか?」
俺がそうゆらに尋ねるとゆらは顔を赤くして……
「今日は泊まって行こうかな?」
「じゃあ私の部屋で……」
俺がそう言い始めた時だった。
「あっヒカル君ゆらちゃんにえっちな事する気だね!」
アイの一言で他の4人の目の色が変わってしまい、察するにどうやら今日は長い夜になりそうだが……最近は思うように出来なかったこともあり、色々と俺も溜まっているので今日ばかりは全部吐き出しても良いだろう。
とりあえず、今後の事は終わった後にゆっくり考えるとするか……