カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第182話

 気が付けばカーテンの隙間から少しばかり朝日が差し込んでいた。

 流石に5人を相手にすればそれだけ時間はかかるのは仕方ないが……頑張ったおかげもあり、みんな気持ちよさそうに寝ている。

 学校があるかなと仕事があるゆらの2人からお休み頂いて、次に時間に余裕のあるニノとカナンの2人を相手どり、最後にアイを寝かせるのに時間がかかってしまった。

 そんな訳でアイは耳を抑えて体をビクビクさせているけれど……まー良いとしよう。

 

 時計を見ると4:40と表示されているし、7時まで少しばかりあるし俺も少し位寝ようなかなっと思い改めてベットを見るが、流石に6人も一緒のベットで寝るのは無理があるようだ。

 

 俺も含めて皆小柄ではあるし、ベットだって大きいサイズなのだが……人数が多い為、スペースがもう無いので寝返る事は出来そうにないのだ。

 まー寝返りを打てないレベルで満足させたから問題は無いと思うが、流石に一緒のベットで寝る事は出来ないので、炬燵で寝るとするか……

 

 しかし、炬燵で裸で寝るのは良くないし、それに愛液まみれでちょっと匂うし……シャワー浴びてからにするかぁ~

 

 気持ちよさそうに寝ている女性陣を起こさないように俺は脱いだ服とエプロンを手に取り浴室に向かったが……しかし、これが間違いだった。

 シャワーを浴びているうちに眠気なんて綺麗サッパリ無くなってしまった。

 

 さて、どうしたものか?

 

 特にやる事も無いし、朝ごはんを作るにしてもまだ5時だから早すぎるし……気分転換に散歩でもするか……

 

 Tシャツに半ズボンとかなりラフな格好でポケットにスマホと財布をねじ込み、散歩をする事にした。

 

 朝の5時台という事もあり、予想通り外を出歩いている人なんて殆どおらず、車もあまり通っていない所為か空気が澄んでいるように感じられる。

 一応役者なので体力づくりに休みの日は走ってはいるものの、こんな朝早くから出かける事は無いので新鮮に感じられた。

 

 しばらく歩いていると公園に着いたので、端っこにあるベンチに腰掛けてぼ~っと空を眺めていた時だった。

 

 先ほどまで存在感などみじんも感じなかったが、何処からかカラスの鳴き声が聞こえて来た。

 そう言えば最近カラスによる被害が多くなっているみたいだし、俺もゴミ出しする時は気を付けた方が良いかなってふと考えて居たら……

 

「あっ! 女たらしのおにーさんだ」

 

 可愛らしい幼女の声が耳に届いた。

 声のした方に顔を向けると、以前俺のベンツのボンネットに座った生意気な女の子がカラスを片腕に乗せて居た。

 色々と思うところはあるけれど……一体何の根拠があって俺はこの女の子に女たらしと言われなきゃいけないのだろうかと内心首を傾げつつも無視をするのは大人気ないので、会話に乗って上げる事にした。

 

「……その女たらしのおにーさんに何か用ですか?」

「カァー!」

「ちょっ!? なんで急に怒るの!」

 

 何故か女の子の片腕に乗っていたカラスが翼をばっさばっささせて女の子に怒り始めた。

 ……何と言うか、女の子の発言で俺の気分を害したと思っているのか、カラスが女の子に説教しているように見えるけれど、それは流石に考えすぎか?

 

「わ……わかった。反省する!反省するからやめて!」

「クワァー!」

 

 まるで次は無いと言わんばかりにカラスは女の子に一声鳴くと今度は俺の方に顔を向けて頭を下げた。

 カラスって頭が良いとは聞くけど……今目の前にいる個体はそんなレベルでは無い気がする。

 

「……くぅ……私は身内なのに……」

 

 カラスの羽まみれになってしまった女の子は俺の事を恨めし気にみていたが、俺自身は女の子が気の毒に感じてしまい……つい、声を掛けてしまった。

 

「何か飲みますか?」

「……飲む」

 

 とりあえず、公園の近くにある自販機に女の子と共に向かうのだった。

 

「何飲みますか?」

「んー?じゃあ、苺オレ」

 

 女の子は口元に手を置き、一瞬考える仕草をするが……目の前にある自販機に苺オレは無い。

 にやにやと笑いながら俺の事を見ているけれど……一体どうして欲しいのだろうか?

 とりあえず、自販機に千円札を入れて女の子に選ばせる。

 

「飲みたい物選んで良いですからね?」

 

 ひょいっと女の子を持ち上げると女の子はジタバタし始めた。

 

「いや、なんで持ち上げるのよ!」

 

 そりゃ、苺オレが無いから、この中から自分が飲みたいのを選んで欲しいからに決まっている。

 そんな事を考えて居たら……

 

「クァー!!」

 

 女の子の肩に移動していたカラスが荒ぶったかと思えば、そのくちばしを思いっきり突き刺した。

 

「痛い! ちょっと本気で刺した!?」

「クァークァー!」

 

 まるでもう一発行くか?と女の子に脅しをかけている様にも見える。

 そう言えば、この女の子も一瞬で消えたり現れたりした訳だし……この『推しの子』世界はオカルト的な要素もあるのだろう。

 そもそも、俺やルビーは転生者なのだから今更な部分はある。

 

「……苺オレが飲みたかったのにぃ……」

 

 女の子は涙目になりながらカラスに突かれた部分を擦り、バナナオレを選んだ。

 飲みたい物を欲する気持ちは分からんでも無いが、無い物は無いので妥協するしかないけれど……何故バナナオレがあるのに苺オレが無いのかは疑問ではある。

 

 その後に俺はコーヒーを購入し、先ほどの公園に女の子とカラスを連れて戻った。

 

 ベンチに腰掛けると女の子は俺の隣に座るが……女の子の肩に乗っていたカラスは今度俺の肩に移動して来たと思えば、翼を広げて抱きしめて来た。

 

「あの……これ、大丈夫なんですか?」

 

 ここまで人に対して好意的でぱっと見は綺麗なカラスは見た事無いが、この女の子に飼われている訳では無いと思うので、ダニとかそう言うと小さい虫が居てもおかしくないので思わず聞いてしまったが……

 

「カァーカァー」

 

 なんかつぶらな瞳を向けて悲し気にカラスは鳴き声を上げた。

 やはりというかなんと言うか、このカラスは人語を理解している節がある。

 

「大丈夫だよ。一応神様の眷属だしね」

「……そうですか」

「ところでさっきから私の事を子供扱いしているのはなんでかな? 前にも言ったけど私は神様で君達人間を消すくらいどうって事ないんだよ?」

 

 女の子は対応に不満があったのかそう言うと雰囲気を出し始めたが……

 

「……唐突に現れたり、消えたりすることも出来るみたいなので、神様かどうか置いといてそれに類する物で有る事は認めますけど……」

「けど……なんだい? 何がおかしい?」

 

 女の子は舐められていると思ったのか、口元をひくつかせて俺の事を見ていた。

 しかし、俺からすれば外見が子供……それも4,5歳くらいの見た目なので子供扱いされても仕方が無い事だと思うんだ。

 

「その見た目で大人扱いは難しいですね」

「んなぁ!?」

「せめて外見年齢だけでも変える事は……神様でも出来ないんですかね?」

「で……出来るし!? 見た目を大人に変えることぐらい簡単だし!?」

「……いえ、無理に変える必要もないんですけど?」

「出来るって言ってるでしょ!? ちょっと待ってて」

 

 女の子はそう言うと……一瞬で大人なの……大人っていうか……俺の女装した時の姿に酷似していた。

 唯一の違いと言えば、髪の毛が銀髪な位だけど……う~ん、この女の子……俺の親類じゃ無いよな?

 

「今君が考えて居る事は外れているからな。私の両親と君の両親は赤の他人だ」

「……そうですか、ちなみに名前を伺っても?」

「そう言えば名乗って無かったね。そうだねぇ~私はツクヨミよろしくね」

「ツクが苗字でヨミが名前とは変わってますね」

「そんな訳無いでしょ!? ツクヨミは私の名前だ!」

「冗談ですよ? 大人でしたらこれぐらいさらっと流して欲しいですね」

「うぐぐ……そうだ。私はあなたの前世の名前を知っているんだぞ!」

「ほぉ~それは凄いですね。じゃあ地面に書いてあげますから是非読んでみてください」

 

 俺は地面にしゃがみ込み小石を掴み、前世の名前を書いてあげた。

 神様ならもしかして読めるかもと一類の希望を抱いたが……

 

「苗字が蜂須賀なのは分かったけれど……この名前の漢字は分からない。なんて読むのよ?」

「さあ?」

 

 前世の親に名付けられたは良いけれど、終呼ばれる事なく俺自身でさえ見た事も無い漢字だった。

 世界を旅していた時に漢字を扱う文化圏を訪れた事もあり、その際に知らべて見たが、結局手掛かりは一切無かった。

 

「前世の名前が読めない私と苗字が無いツクヨミでお似合いですね?」

「君って奴は……」

「ま、そうは言っても今生の名前は神木輝ですし、前世の名前何てどうでも良い内容ですけど……それではお互い自己紹介も終わった事ですし、ツクヨミは私に何か用でもあるんですか?」

「あっ……うぅ……ペースを乱してくるのがムカつくけど、良いだろう。私の用は唯一つ!」

 

 ツクヨミはそう言って俺に一指し指を突きつけて言い放った。

 

「神木……お前はルビーの父親なんだからアクアだけじゃなくて、ルビーの事もちゃんと面倒を見ろ。じゃないと大変な事になるんだぞ!」

「くぁー」

 

 ツクヨミがそう言うと俺の肩に乗っていたカラスが何時の間にか俺の正面に移動しており、一声鳴いたと思えば頭を下げていた。

 俺はルビーが転生者で有る事は知っていたが、ルビーとツクヨミ……引いてはこのカラスとの繋がりはサッパリ分からない。

 分からないけれど……しかし、俺に懐かないルビーの面倒を見るのは正直気が進まない。

 

「大変な事とは一体何ですか?」

「それは……アイを超えるアイドルに成れないって事だ」

 

 それは俺がどうのこうの言える内容じゃないんだけどなぁ~

 

「……と、とにかく私は伝えたからな!」

 

 ツクヨミはそう言うと話は終わったとばかりにカラスを抱えて消えてしまった。

 

「……別段アイより凄いアイドルに成れなかったとしても問題無いと思うけど?」

 

 思わず本音を言ってしまったけれど……ルビーがアイを超えるどころかアイドルとして成功する姿が俺には全く想像出来なかったのは俺がアイドルに疎いだけなのか……それともルビーに対して情が無いからだろうか?

 コーヒーを飲みつつ少しばかり考えてしまった。

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