ルビー達『B小町』のライブから数か月が経過し4月になった。
ライブに関して言えば可もなく不可もなくって感じだったが、ライブが終わった後にアイがSNSに上げた事により、その結果知名度は一気に広がり登録者数は増えているようなので、成功したと言えるだろう。
そして、今日からかなは中学3年生になり、アクアとルビーも進級し中学2年生となる訳で、学校に行くルビーを見送るアイは当然喜んでいたんだろうけれど……世間には隠している訳なので、当然今後も学校行事などは行ける筈も無い事に改めて気づいて、我が家に朝っぱらから来ているのだ。
「うぅ……子供の成長を堂々と見れないなんて……こんなのあんまりだよぉー」
アイは自身のスマホを見ながらそう答えた。
恐らく現在はゴローさんがルビーの迎えに行ってるようで、二人のツーショットの画像でも送られてきたのかもしれないな。
まーアイとしてはそこに自分も入りたいのだろう。
ちなみにアクアからもラインで連絡が来たみたいだけど……普段話さない所為かアイはアクアからの連絡が物凄く嬉しかったようで、舞い上がってしまい思わず爆レスを返してしまったようだけど、その後の返事は無く既読スルーされてしまい、今現在我が家に来て愚痴を吐きつつ、目の前に置かれたお酒を一気に飲み干すと涙目でいた。
「アイ……いい加減諦めたら? そもそも芸能人なんてイメージ商売なんだし、今更アイが親で有る事を公表したらルビーちゃんは兎も角、アクア君の努力が無駄になるんだよ。アイはアクア君の今までの努力を水の泡にする気?」
「そ……それは……」
ニノの言葉にアイは目に見えてうろたえてしまうが、その様子を見ていたカナンが更に続ける。
「それどころか苺プロも一気に経営が悪くなるし、そうなれば斎藤の困り顔が目に浮かぶから私にとってはとても面白い事になりそうだし……うん、アクア君には悪いけど公表しちゃえば良いんじゃない?」
「カナン? ヒカルさんの目の前で良くそんなこと言えるね」
「……い……今のはジョーク!唯のジョークだよヒカル!」
俺の方を見て慌ててカナンはそう言う。
カナンからすれば斎藤社長はまぁ……そう言った対象なので、憎く思ってしまうのは仕方のない部分がある。
しかし、俺にとってはアクアの所属事務所の社長なので、恩義こそあれど憎しみは無い。
だが、それとは別にカナンの感情を無視する訳には行かないので、カナンの横に座り抱き寄せる。
「……カナンすみません」
「うっ!……ぅぅ……ヒカルにそう言われたら……私何も言えないじゃん」
耳元で囁きながら頭を撫でるとカナンはぽつりと零して大人しくなってしまった。
まー本来ならばこのまま全員ベットに連れ込んでガス抜きをした方が良いんだけど……
ちょうどズボンのポケットに入れてるスマホから通知音が聞こえて来たので、カナンを撫でてる反対の手でスマホを取り出して見ると案の定フリルからだった。
内容はと言えば……今回は水着姿の自撮り画像が送られて来ていた。
中学生には見えない魅力あふれるフリルの水着姿に内心『おお!』って思ってしまうが……かなは例外として、今現状フリルがどんなに誘惑して来ても手を出す気は無いのだ!
『貴重な水着姿のフリルです! 今年の夏は一緒にプールにでも行きませんか?今ならなんと私の事を独り占めできます!』
しかし文面も中々好奇心をそそるもので有るけれど……頭の片隅に未成年淫行の文字が浮かんでしまう。
せめて高校生だったらまだしも、中学生の子を連れまわしたりなんかしたら親御さんに怒られるのは目に見えているし……困ったものだ。
「……親御さんから書面で許可頂いてくれれば良いですよっと」
スマホを片手で入力して送信っと……
「……フリルちゃんだっけ? 最近やり取り多くないかな?」
お酒に酔っているのか先ほどまでとうって変わり、アイはジト目で俺の事を見て来たが……確かに頻繁に連絡が来るようになった。
大体が『今○○で遊んでます』や『仕事でコスプレしてます』などといった内容が多い。
おじさん構文ならぬフリル構文みたいなものかな?
「……どうも私に興味があるみたいでしてね」
モテるのは嬉しいけど……年齢がネックなんだよなぁ~
「私だってヒカル君に興味あるよ!」
アイは酔っぱらっている所為か普段以上に自己主張が激しくなっており、顔をズイっと寄せて来た。
「私以上にゴローさんの方に興味を持ってくださいね」
「むぅ~~」
アイにそう言うとほっぺを膨らませて不満そうな顔をしている。
大体の人が”手に入るもの”よりも”手に入らないもの”に興味が惹かれる傾向があるし、それゆえにアイドル業やお水のお店が成り立っているのだ。
そして、アイはトップアイドルだったから、求められることこそあれ俺みたいな対応をされた経験が無いのだろう。
ま、俗に言う”おもしれー女”枠なんだけど……
逆に俺はもっこり男と同じ考えで”ヤれない女よりも目先の女”なので執着したことはあんまりない。
まー執着させるように仕向ける事はあるけれど……
チラリと時計を見ると12時になるところだった。。
確か今日はかなが早く帰って来る筈だし……一応進級祝いも兼ねてケーキを作る予定なのだ。
「それではかなが帰って来る前にケーキを作りましょう」
「え~もう少しだけ良いじゃん!」
俺がそう言って立ち上がるとカナンは不満そうにそう言い始めたが……
「か~な~ん~」
「何でもないです!」
俺はこういう時どうしてもギリギリまで甘やかしてしまう部分があるので、ニノのこういう部分は頼りになる。
「あっ!私も手伝うよ。私だって料理位手伝えるし……」
「アイは邪魔だから大人しく座ってて」
「……あっはい」
アイドルとしてアイはニノよりも上だったかもしれないが、女子力は圧倒的にニノの方が上だった。
別段アイだって仕事が休みの日ぐらいは料理をするだろうけど、料理のレパトリーはあまり多くなくカレーやシチューなどの栄養価の高い物を作る傾向があるのだ。
個人的には野菜・肉・炭水化物とバランス良く取れて良い料理ではあるし、そもそもアイが作った物ならばゴローさんやルビーなら同じ物でも週7で喜んで食べるだろう。
話が逸れたがつまり何が言いたいかと言えば……
下手では無いけど特別美味い訳でも無いのだ。
そんな訳でカナンとアイを放置して俺とニノはキッチンでケーキを作り始めた。
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ヒカル君とニノはエプロンを身に着けると慣れた手つきでケーキを作り始めた。
私はその様子を眺めているとため息をが漏れてしまった。
ヒカル君は料理を作る際は髪の毛をポニーテールにしている。
そのおかげで普段隠れて見えないうなじが良く見える。
そして部屋着にエプロンと言う事もあり、ヒカル君の後ろ姿は新妻感が凄く物凄くきゃわわなのだ!
これもしやは誘っているんじゃないかな?
料理を作っている最中の女性に手を出すなんてのはよく聞くシチュエーションだし、今の状況は男女の役割が入れ替わっただけだよね?
それを鑑みて改めてキッチンを……もといヒカル君の様子を見る。
作業しているので、若干前かがみ気味になっている所為かお尻を突き出している様に見える。
これは……間違い無く誘っている(確信)!
私がそんな事を考えて居る時だった。
「あっ!ヒカルさん頬っぺにクリーム付いてますよ」
「本当ですか?」
ニノはそう言うとヒカル君の頬っぺたに顔を寄せてあろうことか舐め取った!
「取れましたか?」
「はい♡」
ず……ずるい! 私だってヒカル君とイチャイチャしたいのに!
その時私に天才的な閃きが舞い降りた。
そうだ! カナンを巻き込んで突撃すれば良いじゃん!
私ってやっぱり天才だね!
「ね……ねぇカナン? ヒカル君とニノだけイチャイチャしているのは良くないよね?私達も混ざりに行こうよ」
「……今はニノの時間だから邪魔しちゃダメ! 大人しく見て居なさい」
「そんなぁ~」
カナンにがっしりと掴まれてしまい私はヒカル君とニノのケーキ作りと言う名目のイチャイチャを唯々見ていることしか出来なかった。