「このケーキすっごい美味しい!」
「喜んで頂けて何よりです」
かなはそう言うと目をキラキラ輝かせてケーキを食べてくれていた。
自分で言うのもなんだけどニノとの合作ではあるが、かなり美味しく出来たので満足している。
「ルビーちゃんはどうかな?」
「お……美味しいですよ」
言葉とは裏腹にルビーはアイの隣で一心不乱に食べている。
そしてアイの隣には……アクアが物凄く幸せそうな顔をしてケーキを心の底から美味しそうに食べていた。
何故アクアとルビーが居るかと言えば、俺がアクアを呼びたかったからだ。
しかし、一人暮らしをしているとは言え、未成年なので親であるアイの許可は必要なのとルビーを無視するのはどうかと言う事もあったのだ。
そんな訳で現在は両側にアクアとルビーが居る事でアイは嬉しそうにケーキを食べていたが、何かを閃いたようで……急にニヤニヤしながら質問して来た。
「ヒカル君!このケーキの作り方教えて♡」
恐らくケーキ作りを通して子供達との触れ合いを増やして行く算段なのだろうが……
「まずは口の周りに付いてるクリームを取ってからですね」
「ちょ……ちょっと待ってて」
「待つのはアイさんです」
アイはそう言うと服の袖で拭こうとしたので、その手を抑えてすぐさまティッシュを渡すもアイは何を血迷ったのか顔を寄せて来た。
もしや俺に拭けと言うのだろうか?
「ヒカル君……んぅ~」
アイはそう言うと目を閉じて唇をタコのように伸ばしてきたが……
「……親のこういうところは見たく無いね」
「はうぁ」
しかし、アクアの一撃がアイの急所の刺さってしまい撃沈してしまった。
「ま……ママ私が拭いてあげるよ!」
「ありがとうルビー!」
そう言うとルビーは慌てて俺からティッシュを取りアイの口周りを拭き始めた。
アイはその行為が嬉しかったのかルビーにされるがまま、口の周りを拭いて貰っているけれど、実際は30手前の母親の世話を中身はどうあれ中学生の娘がしているのは中々シュールな光景だった。
「うん、これで何時もの綺麗なママだよ」
「うんうん、ルビーは良い子だなぁ~」
ルビーの献身的なお世話もあり、アイは終始ニコニコしていた。
まぁ~殺伐としている訳では無いし、これはこれで良いだろう。
俺はそう思い自分のケーキをフォーク食べ始めたが何故かアイが凝視していた。
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ヒカル君はふつーにケーキを食べているだけなのに……その姿は何故か蠱惑的にというかやたらと色っぽかった。
髪の毛がケーキに付かないように後ろで纏めている普段見えないうなじが見える所為か、より一層ヒカル君の色気が増してる気がするし、更にケーキを作っていた所為なのか、ヒカル君からは甘いバニラエッセンスの匂いが漂ってきている。
その所為で私はヒカル君から目線を外す事が出来ない。
ヒカル君を挟むようにカナンとかなちゃんが座っている。
「ヒカルあーんして♡」
「かなは甘えん坊ですね。はいあーん」
「ヒカル次私もー」
「わかりました」
ヒカル君からのあーんなんてなんて羨ましい!
私もあーんして貰いたいのにぃぃぃ
そうだ!ニノだってヒカル君にあーんして欲しいに決まっているし、この光景を見てカナンとかなちゃんに嫉妬しない訳がないのだ。
チラッとニノを見てみたが、ニノは微笑ましい表情で3人のやり取りを見ていたが私と視線が合ってしまった。
「アイどうかした?」
「ううん!? なんでもないよ。それにしてもこのケーキ凄く美味しいね。商品として売り出してもフツーに売れるんじゃないかな?」
「……美味しくは出来たと思うけれど、そこまで世の中甘くないよ」
「そんな事無いと思うけどなぁ~」
……とは言いつつも視界の端にヒカル君を入れてケーキを食べる姿を見る。
元アイドルと言う事もあり、私は視野が結構広いからこういった事は得意なのだ。
そんなときだった。
「あの……ニノさんお代りってあったりします?」
「もちろんあるから沢山食べてねアクア君」
「っ……はい」
ニノの返事にアクアが物凄く嬉しそうに反応していたけれど……それってケーキが嬉しかったのかはたまたニノの対応が嬉しかったのか判断に困る。
いや……いやいや、まさか……アクア……ニノの事が好きだったりするのかな?
私と同じ29歳であるものの見た目は昔とあんまり変わっておらず、未だに10代で通用するけれど……それでも同じ『B小町』のメンバーだったので、正直アクアとニノがくっ付いたら物凄く気まずい。
……と言うか、ニノにお義母さん呼びされるのは物凄くヤダ
そんな事を考えて居たら私の隣に座っていたルビーが唐突に甘えて来た。
「ママぁ~あーんして」
こうして素直に甘えてくれるルビーはきゃわわと思いつつ、私は勿論快諾してルビーの口にケーキを運ぶ。
「ん?いーよ。はいあーん」
「あーん」
ルビーは口を開けてケーキを咀嚼すると幸せそうにしていた。
もしやこの流れならアクアにもあーんできるんじゃないかな?
まだニノは戻って来てないし……これはチャンス!
「アクアあーんしてあげる」
私は自分のケーキを切ってアクアにフォークを差し出したが……返ってきた答えは無常だった。
「僕は大丈夫だからルビーの面倒見てあげて」
「あっ……そ、そう?」
アクアとの距離を埋めるにはどうすれば良いのか全く分からなかった。
「アクア君お待たせー」
そうこうしているとニノがケーキを持って戻って来てしまった。
「いえいえ、全然待って無いです」
「ふふっなんかデートの待ち合わせみたいな回答になってるよ」
ニノがそう言うとアクアは耳まで真っ赤に染めてそっぽを向いてしまった。
私はその光景をケーキを食べつつ眺めることしか出来なかった。