パシャパシャとカメラのシャッターを切る音がスタジオに鳴り響く
「ハーイカミキさんこっちに視線お願いしまーす」
「分かりました」
カメラマンからの指示に従い視線を向ける
「OKでーす。じゃあ次はしゃがんだ状態でポーズもお願いします」
「こんな感じですか?」
「あー良いですね! そのままの体制で右手の小指を咥える感じで……はにかんでください」
なんかマニアックな感じな気がするが……ま、ええやろ
「どうですかね?」
「ばっちりです!」
その後もパシャパシャとシャッターを切る音が鳴り続けた。
「いやーカミキさんまたお願いします。ギャラは口座に振り込んでおきます」
「いえいえ、こちらこそいつもお世話になっておりますから四条社長にもよろしくとお伝えください」
世間で有名な四大財閥の一つ……四条財閥の末っ子。兄弟姉妹の権力争いに興味が無いが、四条財閥の力でファッション会社を設立した。彼女は経営者としては凄まじい能力があった所為か、会社は設立してから常に黒字経営であり、最低でも億の売り上げがあるとかないとか……。
しかし、俺に言わせれば美形大好きの淫獣モンスターなんだけど……こうしてモデルの仕事を回して貰っている以上頭が上がらない存在である。
モデルの仕事も終わった事だし、今度は役者としてのお仕事だけど……依然として主役をやっている余裕が無いので、脇役を掛け持ちでこなしているんだけど……現状中学生である以上車の免許なんて有る訳も無く移動が大変でそうなると基本は
電車の利用かはたまたタクシーの利用になるのだが……
金を稼ぐためにやっているのにタクシーなんて乗っていたらすぐさまお金が無くなってしまう
「よっ! カミキ」
「あっ上原パイセン! お待たせしました」
モデルスタジオを出ると大型バイクに跨っている上原パイセンが居た。
いや、俺もパイセンを足代わりに使うなんてどうかと思うけど……
「いやーカミキのおかげで俺も役者の仕事が増えて助かるぜ」
「……そう言って貰えると助かります」
俺もそこそこ売れて来た事もあるからパイセンを自分の仕事先にねじ込む事が出来るのでWIN-WINに持って行ってるのだ。
まー帰りは電車になるんだけど……そればっかりはしょうがない
「じゃあ、飛ばすからしっかり捕まれよ」
「うっす」
相変わらずの運転技術でかっ飛ばしてくれるけど……法定速度でお願いしたいものだ。
撮影現場に着くと既にスタッフ並びに役者も揃っていた。
「「すみません。遅くなりました」」
「いやいや、カミキちゃんに上原さんもまだ時間に余裕はあるから大丈夫だよ。……ところでカミキちゃんちょっと相談なんだけど役の延長してもらって良いかな? スポンサーがねカミキちゃんのファンみたいでね。忙しいのは分かるけどこの通り!」
監督さんは両手を合わせて拝み倒して来た。
いやー俺もそういう風に言ってくれるのはありがたい事ではあるけれど……安易に答える事は出来ないし……
「ちょっと待ってくださいね。今スケジュール確認しますから……」
とりあえず、ポケットからスケジュール帳を取り出して確認する。
「……ちなみにいつ頃までですか?」
「一週間程なんだけど大丈夫?」
うーん、モデルの仕事もあるけれど……ここは無理を通す時期だな。
何せこういう時にお願いを聞いてあげる事で次の仕事に繋がるのは長い芸能人生で分かっている事だし、ビジネスの話ではあるものの最後にモノを言うのは義理や人情なのだ。
「……分かりました」
「流石カミキちゃん! 答えてくれると信じていたよ」
「いえいえ、監督さんには良くしてもらっていますからね」
「じゃあ、早速本読み始めるからお願いね」
「分かりました」
監督はそう言うと上機嫌で脚本家の元に向かって行った。
「カミキ大丈夫なのか? 見た感じスケジュールかなりきつそうだぞ?」
「……場合によっては学校休んで前倒しで行うので問題無いですよ」
「相変わらずのプロ根性だな……」
「まーお金を貰っている以上は結果を出さないといけませんからね。じゃあ早く終わらせたいので稽古を頑張りましょうか」
「おう、終わったら飯でも食いに行こうぜ」
上原パイセンと撮影後に飯の約束をしたときだった。
「あっ! カミキ久しぶりじゃん!」
「……YURIKAさんお久しぶりです」
長い茶髪を靡かせて映画やドラマにバラエティーも引っ張りだこの今が旬のタレントだ。
「もぅー出演者見たらカミキの名前が入ってるしぃ~なんで教えてくれないかなぁ~」
「いえ、連絡先知りませんから教えようにも……」
以前ドラマの撮影で一緒になった時はだいぶ……いや、かなり傲慢でめんどくさかったから……その場限りの関係で努めていたけど、主役の男の態度があまりにもあんまりだったので、役を奪ったところ……それ以降はやたらと絡んで来るようになってしまった。
「あ、なら携帯出して? 今交換しよ?」
さて、どうしようか?
正直年齢は近い物があるとはいえ……YURIKAはまだ未成年だったはずだし、何より束縛がかなり強いのだ。
しかし、それを差し引いてもスタイルは抜群であるので関係を持ちたいと言う思いはあるけど……下手に手を出すと事務所の圧力で仕事を干される可能性もあるが、それとは逆に機嫌を損ねるとやっぱり干される可能性もあるし……はぁ~こうなれば落とすしかないか……
「……分かりました」
「間があったのが気になるけれど……素直に携帯出したから許してあげるよ」
「それは良かったです」
「じゃあ赤外線から私が送るね」
「分かりました」
未だにガラケーの時代だからアレだけど……早くスマホでないかな?
「じゃあ本読みが終わったら……デートでもしない?」
「……それは構いませんけど、スキャンダル沙汰は勘弁してくださいね」
「あっその点は大丈夫だよ。私だってその辺りは弁えてるからね!」
本当に弁えている人なら周りの目を気にしてるはずだし、上原パイセン以外の俳優が険しい顔でこっちを見ているのに気が付いて欲しいものだ。
「じゃあカミキまた後でね」
「……分かりました」
YURIKAとは一旦離れてパイプ椅子に腰かける。
「YURIKAと接点があるとは……カミキやるじゃねーか?」
上原パイセンはそう言うとニヤニヤ笑いながら聞いて来た。
「……以前の撮影現場で一緒だったんです。そのときに態度の悪い俳優が居たので……」
「お得意の役者殺しをやったと……カミキも血の気が多いなぁ~」
「上原パイセン程じゃないです!」
「そんなに褒めるなよ! ま、何かあればすぐに連絡しろよ」
一体どこに誉め言葉の要素があったのか疑問ではあるものの……鉄火場になると物凄く生き生きし始める上原パイセンはやっぱり職種を間違えて居ると思うが……それによって俺も何度か助けられてる以上否定出来るはずも無く
「分かりました」
こう答えるしかなかった。
とりあえず、この撮影が無事に終わってくれれば良いのだけど……なる様にしかならないよな……
誰にも悟られない様に俺はため息を吐いた。