カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第204話

 俺も周囲からは役者として鬼才だのなんだの言われてきたから、他者に成りきる演技は出来るものの……その人が持つ技術を真似できる訳では無いのだ。

 何故今こんな事を思っているかと言うと……

 

「こ……これくらい大した事無いですよ~」

 

 目の前に居る黒川は本当に大した事無いと思っているようだが……マグカップの縁に小銭を縦に積み上げるどころかワイングラスを使用しての驚異的なコインタワーなんて初めてみた。

 

「……これを大した事無いって嫌味にも程があるわね」

 

 かなはドン引きしながらそう零していた。

 

「流石にこれは……カミキお前出来るか?」

「無理ですね」

「カミキでも出来ない事があるのか……」

 

 上原パイセンは目を見開いて驚いていたが、そんなに驚く程の物では無いだろう。

 確かに俺は転生者ではあるものの別に超能力者でも何でもないのだ。

 前世で色々と経験した事を応用しているに過ぎないし、そもそも1を知って10を知る天才では無いのだ。

 

 そんな事を内心考えて居た時だった。

 

「で……でもヒカル君には百発百中の競馬予想があるじゃん! あれだって私からしてみれば意味が分からないよ」

「あれは私の中のジンクスに基づいたものでして……まぁ、言ってみれば唯の勘なんですけどね」

「そ……それに、昔麻雀したときだって最後にまくられたし……」

「役の手作りに関しては偶然ですが、最後のアレはアイさんの運に乗っかったのもありますし、一概に私だけが凄い訳ではありませんよ」

 

 まールール追加して、オープン立直と役13以上でダブル役満扱いでかつアイに直撃という一撃必殺決めた訳だが……あれはアイの欲の強さを打ち取った訳だしな。

 

「……今度からカミキしげるって呼んだ方が良いか?」

「カミキとアカギ……語感は合ってるわね」

 

 俺はあんな博徒じゃねーよ!

 

「アイさん……百発百中なんてそんな事出来る訳ないじゃないですか?」

「あかねちゃんは知らないからそう言うけど、実際に私はヒカル君が当ててる所見てるからね?」

 

 アイは俺の事をフォローしようと頑張っているようだけど……少しばかり考えればギャンブルで勝ち続ける人なんて殆ど居ないのだから、頭が良い黒川が信じる筈無いのだ。

 

「競馬で百発百中なんて、現実的じゃありませんし不可能ですよ」

「うぅ~ヒカル君あかねちゃんが信じてくれないよぉ~」

 

 アイはそう言うと涙目になって俺に抱き着いて来たけれど……普通の人はそんな事信じる筈無いのだから、発言する前に考えて欲しいけど……このアッパッパーはその場その場のライブ感で生きてる部分があるから、難しいかもしれないな。

 

「……まぁあかねの言う通り、競馬の百発百中は現実的じゃないしどんなに口で言ったって信じる訳が無いからな」

「なら、カミキが今ここで証明してあげれば良いじゃない? 流石の私もあかねちゃんい言い負かされてるアイちゃんが可哀そうになっちゃったしね」

 

 あれ?なんでそんな流れに?

 

「ヒカル君今日のレースはこれだよ!」

 

 アイはそう言うとカバンから新聞紙を取り出して俺に渡したかと思えば、自分のスマホを取り出し始めた。

 

「……それでこのレースでは何番のお馬さんが勝つのかな?」

 

 目をキラキラさせてアイは俺にそう尋ねて来たと思えば……

 

「よし、俺も準備OKだ」

「私もよ」

 

 いつの間にかパイセン達もスマホを取り出していたことから、どうやら俺はハメられたらしい。

 ふと後ろを見るとニノもスマホを見ており、俺の事をキラキラした目で見ていた。

 

 もし、この状況で予想を外したなら……俺はパイセン達に落胆されるか? いや、落胆されるぐらいならまだしも、もしかしたら黒川に舐められるのか?

 

 冗談じゃねぇ!

 何で俺が黒川に舐められないといけないんだ!

 

 そう考えると沸々と怒りが込み上げて来たが、それとは別にどんどん頭がクリアになって来た。

 

「……かなちょっと降りてくださいね」

「う……うん」

「アイさん新聞紙貰いますね」

「うん♡」

 

 膝に座っていたかなを降ろして、アイから新聞紙を受け取り……レースに出る馬を見て自身の額を一指し指でコツコツと叩き勘を働かせる。

 

「……言っておきますが、賭ける金額は1万までですよ。それ超えた場合外れますからね」

「50万じゃ無いの?」

「……ドブに捨てたいならかまいませんけど?」

「理屈はサッパリ分からないが……カミキが1万までって言うなら1万までだ」

「分かったわ! アイちゃんもニノちゃんも良いわね?」

「わ……分かりました」

「しょ……しょうがないなぁ~」

 

 とりあえず理解は示して貰えたようだし、後は当てるだけだ。

 

「……6-3-8? いや、6-3-1……6-3-1ですね」

「6-3-1? もしかして3連単か?」

「3連単です」

「ヒカル君?倍率15倍だけど低すぎない? 普段は40から60位の選んでるよね?」

「……普段とは状況が違いますからね。ジンクスもその都度変わるものです」

「ふーん」

 

 アイは納得したのかしてないのか分からないがそう返事を返した。

 まぁー低い倍率ならば当然勝率は高くなるものだし、1回だけで黒川が納得するはず無いだろう。

 ……となれば、最低でも5レース連続的中位は熟さないといけないな。

 

 内心ため息を吐きつつ、リスクと欲望と性欲を天秤にかけて俺もスマホを取り出してレースを見始めた。

 

 勝たなきゃ……舐められる。

 舐められるのはだけは死んでも我慢出来ない!

 ……なら勝しかない。

 昔からの性分とは言え、こんな考えでは長生きできそうにないのは分かってはいるが……それでもやっぱり舐められるのはダメだ!

 

「……行けーそのままゴールしちゃえー」

 

 アイの熱が籠った声に我に返り、スマホの画面に注目すると6-3-1が丁度ゴールを決めた。

 

「よし、これで15万ゲットだ!」

「今日は豪勢に高級レストランにでも行く?」

「そうだな!」

 

 パイセン達はレースの結果に満足したようだけど……この程度じゃ足りない!

 

「パイセン? 次のレースは1-6-5です」

「「え?」」

「賞金そのまま全賭けで良いよね?」

「勿論です。後ニノも降りたらダメです」

「わ……私はもう良いかなーって……」

「もう一度言いますが、私が良いって言うまでダメです」

「そ……そんなぁ~……だって1-6-5の倍率48倍ですよ!?」

 

 一度レースを当てたぐらいで誰が百発百中なんて信じるんだ?

 勝負ってのは一度始めたら途中で降りる事は許されないのだ。

 

「大丈夫だよニノ~」

 

 アイはそう言うと目を爛々と輝かせてスマホを操作している。

 まー一緒に競馬に行ってたし、他の事は知らんが……競馬に関しては俺の事を無条件で信じるのは信頼と実績の賜物だろう。

 ……決して良くは無いけれど

 

 その後もレースを当て続けて行き……金額が5000万を超えた辺りでパイセン達とニノはオロオロとし始めたので、また1万円賭けからスタートした結果

 

「あ……有り得ない。低い倍率だけなら勝率だって高いけれど……高倍率もちゃんと当ててるし……」

 

 黒川はそう言うと物凄く動揺していたが……

 

「いや……流石にこれは……凄いな」

「ええ……ちょっと……どうしようかしらね」

 

 パイセン達がここまで慌ててるのは恐らく初めて見たかもしれないな。

 

「こ……これだけお金が有れば……新しい家電製品ぐらい買っても良いよね? 最近洗濯機とか調子悪いし……後包丁も新しい関孫六が欲しかったし……炊飯器も大きいの買っちゃおうかな?」

 

 家庭的なニノはどこまでもニノだった。

 

「私ならルビーやアクアの為にもお金いっぱい残すけどね」

 

 アイはそう言うと胸を張って答えたけれど……

 

「アイさんの考えは良いと思いますけど……アクアは兎も角ルビーはそれで自立出来ますかね?」

「私の娘だもん!大丈夫だよ」

 

 アイの娘だから一番ダメかも分らんが……

 

「……芸能界なんて何時まで働けるか分からないですから自分の食い扶持は自分で稼ぐって事を教えてあげないとアイさんが亡くなった場合ルビーは孤独死しかねないですよ?」

「そんな事無いと思うけどなぁ~現に今アイドルになって稼いでる訳だし?」

「……ちなみにどれぐらいですか?」

「うーん……月10万ぐらいかなー?」

 

 学生としては良い金額ではあるが……このままでは独り立ちは難しいだろうなぁ~

 

「アクアはどうです?」

「アクアはすごいよー! 仕事も結構あるし月で言えば30~40万ぐらいだったよ」

 

 一人暮らししている以上生活するにはお金が必要なのは理解するし、そうなれば必然的に頑張り方に差が出るのは当然だな。

 

「私としては家に帰って来て欲しいけど……アクアにね。家に帰ったら甘えちゃうから辞めとくって言われちゃったんだよねー。私は甘えて欲しいけどね」

 

 自身の幼少時代を思い返しているのかアイは子供を甘やかす傾向が強いのだろう。

 まー環境が人格を形成する訳だし、これがアイの性分なのかもしれないな……

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