カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第205話

 あの後、黒川から文化祭が何時開催するのか確認したところ一か月先と言う事で今日は解散した。

 アイはさも当然ように俺の車に乗り込んで来た。

 本来なら、アイには一人で帰れと言うのが同じ芸能界で働いてる人間として正しいのだろうが……同じマンションに住んでいる訳だし、そもそもドラマの影響の所為かリアルで『何故二人はくっつかないんだ!』と言ったクレームがあったようなので、俺の知らんところで地盤が固められつつあるようだ。

 なお、かなとニノはと言えば二人とも拳を握っている事からどうやらじゃんけんで負けたようで後部座席で自分の拳をジッと見ていた。

 まーじゃんけんとは言え、負けは負けなのでそこは甘んじて受け入れるしか無いのだが、家に帰ったら二人のガス抜きもしないとな。

 

 そんな訳でアイは助手席に座っており、ニヨニヨしていた。

 じゃんけんで勝った事と来月の文化祭でアクアを演じると言う事もあり、妙にやる気に満ち溢れていたが果たして大丈夫だろうかと少しばかり気になっていたが……俺も俺で黒川あかねを演じる訳なので、正直自分の事に集中しないと難しい部分がある。

 

 運転をしつつも、黒川あかねの人間性を振り返ってみる。

基本的には大人しく、自分から積極的に人と話をするタイプの人間ではない。

 それだけ聞けば何処にでもいる内気な少女と思えるが……劇団ララライに所属して舞台女優として頭角を現し始めており、何かとかなをライバル視しているが……今は良いだろう。

 

 詰まるところ内気ではあるものの、演技をするのであれば人前に立つことも出来るし、結果も出して来ており実力もあるのだが……それだけでは無いだろう。

 

 黒川あかねがどう捉えているか分からないが、ワイングラスと小銭を使用して簡単にコインタワーを築き上げたあの手腕は一体何なんだろう?

 

 趣味が高じて出来るようになったものであればそれは努力の証で良いが、雑誌か何かでやっていて試しにやったら簡単に再現出来たのであれば……それは紛れも無く天才である。

 

 そして俺の経験上演じるので最も厄介なのが天才なのだが……1を知って10までを理解するのか、10以上を理解するかで解釈が分かれる。

 

 演技の天才なのか、それとも天才が演技をしているのか……

 

「……難しいな」

 

 口に出して思わず言ってしまう位に難しい役どころだったが……

 

「うん?ヒカル君今何か言った?」

 

 助手席に座っているアイは目ざとくと言うか、やはりというか……耳が良いので俺が何か言ったのが聞こえたらしい

 

「……いいえ何も」

「ええー私たしかに聞こえたよー『アイさん愛してる』って」

 

 ズイっと顔を寄せて、アイは力強く反論して来たがそれだけは断じて言って無いけれど、そんな事言って無いと言えばじゃあなんて言ったのって追及する気なのは顔を見ればすぐに分かる。

 

 とりあえす運転の邪魔になるので、視線を動かさずにハンドルから左手を放してアイの耳を撫でる。

 

「ひゃわ♡」

「大人しく座っていたら後で構ってあげますから、お行儀よくしていてくださいね」

「や……やくしょく……だよ♡」

 

 アイはそう言うと顔を真っ赤にして大人しくし始めた。

 しかし、もじもじしている所を見ると発情しているのは明らかだった。

 

「アイって本当に耳が弱いのかな?」

「うーん、みんなで弄った事はあったけど……ヒカルさん程の反応はなかったよね?」

「……無かったわね」

 

 後部座席に座っているかなとニノがそんな会話をしていたが、女の体を一番知っているのは女だとよく聞く言葉ではあるものの、実際はそんな訳では無いのだ。

 身構えている状態と安心しきっている状態では感じ方は天と地ほど違う。

 そういう意味ではアイにとって俺は安心感がある信頼に値する人間のようだ。

 

 俺みたいな女たらしの一体どこに信頼できる要素があるのか、ふと考えてしまうが……客観的に見て見ると、容姿端麗で金払いは良いし責任は取っている訳だから、まぁ……信頼されるのだろう。

 

 そんな事を考えつつ、家に向かう前に……夕食の食材を買いにスーパーに向かおう!

 幸いお金に関しては、競馬で勝たせたアイが居る訳だし嫌と言わんだろうが……一応確認だけはしておこう。

 

「アイさん帰る前にスーパーに寄って行って良いですかね?」

「す……スーパー? うーん……良いけど……」

 

 アイは口では良いと言ってるものの明らかに不満そうにしていた。

 まー発情している中でのお預けなんてのは中々キツイものがあるので、気持ちは分かるが……しかし、これはとっても必要な事であるのだ。

 ……とはいえ、アイが不満そうにしているのも事実なので、赤信号で止まるたんびに俺はアイの頭を撫でるのだった。

 その甲斐もあり、スーパーに着くころにはアイは上機嫌になっていた。

 

「いや~今日の夕ご飯楽しみだなぁ~」

 

 アイはそう言うと満面の笑顔で後部座席に座っている二人を見てそう言った。

 そうなれば当然……

 

「……アイだけサービス良くない?」

「理由は分かりますけど……」

 

 後部座席に座っていたかなとニノはジト目で俺の事を見ているが、正直な事を言うとアイが後部座席に座っている方が俺としては怖いのだ。

 下手に真後ろなんかに座られたら運転中に何かされそうだし……ニノとかなには申し訳無いが二人が後ろに座っていた方が安心出来るくらいだった。

 

「……終わったらちゃんと埋め合わせしますから」

「……絶対ですからね」

「……し、仕方ないなぁ~」

 

 2人とも顔を赤くして、納得してくれたようだが……どうやら今日も長い一日になりそうだ。

 

 そんな事もあり、早速スーパーに入り食材を買うのだが……

 

「え~っと豆腐に白菜に……後キムチにお肉っと……」

「あっ!お肉は豚バラブロック肉が良いかも♪ あとエリンギ持って来ました」

 

 俺とニノはカートに大量の食材をポイポイと入れて行く。

 

「かなちゃんキャベツと長ネギ取ってきて」

「分かったわ」

 

 ニノはかなに指示を出すと素直に野菜コーナーに行った。

 

「あれ?そう言えばアイは?」

「ああ、アイさんなら……あそこのアイスコーナーでハーゲンダッツを吟味してますね」

 

 抹茶アイスとバニラとチョコの3種類の中からどれを買うか迷っているようだったが……

 

「どれを選ぶと思います?」

「それは当然抹茶じゃないですかね?」

「ですよねー。昔から抹茶系がアイは好きだったし……」

 

 俺とニノでアイが何を選ぶか予想していたが、やはりというか……

 

「……うん、やっぱり抹茶アイスかなー?」

 

 アイはそう言うと断腸の思いで抹茶味のハーゲンダッツを持って来た。

 

「バニラとチョコは良いんですか?」

「……うん、流石に私ももう大人だしこれぐらいは弁えてるつもりだよ?」

 

 24個入りは果たして弁えていると言えのだろうか?

 

「ちなみに支払いはアイさん持ちです」

「ええ~嘘でしょ!ヒカル君が出してくれるんじゃないの?」

 

 俺が出すのは構わないと言うか、寧ろ出したいレベルだが……

 

「……先ほど競馬で勝った金額を考えれば微々たるものですよ」

「いや、あれは子供達の為にも取っておきたいし? ほら習い事するにもお金はかかるじゃん?」

 

 子供の事を考えた上で親としては良い考えだ。

 ならば尚の事今回はアイに出させるべきだろう!

 

「ちなみに買い物が終わって向かうのはアクアの家です」

「私が払うよ!」

 

 その後も増え続ける食材にアイは少しばかり青ざめていたが……今日だけで5000万以上稼いだとは言え、若干ではあるものの後悔しているようだった。

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