カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第22話

卒業式を終えて……高校の入学までの間は仕事とアクアの面倒を見ているだけで終わった。

 仕事はみゆさんのおかげで順調に行っているし、アクアもたどたどしいけど喋れるようになったし、歩きまわっても居る。

 

 しかし第一声が俺の事をママと呼ぶのはどうなのだろうか?

 

「ま……パパ? だいじょうぶ?」

「勿論大丈夫ですよ」

 俺はそう言ってアクアの頭を撫でながら高校に行くためアクアと共に家を出た。

 

 未だにアクアは俺の事をママと呼びそうになり、その度にパパと言い直してるけど……まぁーそれはいいや。

 実際問題父親ではあるし、アクアから見れば育ての親とも言える訳だから無理に呼び方をお兄ちゃんに変える必要は無いだろう。

 

 そして、今日から定時制の高校に通う訳だけど……早速通達されていたクラスに向かうと、定時制故に同年代の子はあまり見かけず……やはりと言うか、年上の方が多くおり50代くらいの年配の人もいる訳だし、中には俺と同じように子供の面倒を見ながらの人もいた。

 まー年は全体的に俺より上の人が多く見受けられるから……同学年とは言え気を付けた方が良いだろう。

 親しき中にも礼儀あり……ならば親しく無いなら気を付けよう!

 まーアクアにとってはやっぱり良く無い環境だよなぁ~

 本来なら、アクアと同じくらいの年齢の子と話せる環境を作るのが一番良いに決まっているのだが……そもそも俺が一人だった事もあり、同年代の友達なんかは誰一人いないのだ。

 パイセン達は年上だし、芸能界はそもそも子供が少なくて、周りはみんな大人ばかりのため……俺の敬語が抜けるのはパイセン達だけなのだ。

 

 転生者ではあるものの……そんな世界で生きて来た俺からすれば社会に出れば出会う人なんてほとんど年上なのだから、逆に同年代よりも年上に好かれる立ち回りを学べる定時制の方が案外良いのかも知れないが……それはそれで苦労してしまうかも知れないな。

 

 そんな事を考えて居たら、間もなく入学式が始まるようなので、担任の指示の元体育館に移動がてらアクアに注意しておこう

 

「(……アクアこれから入学式が始まるから静かにしましょうね」

 

 口元に指を持って行ってしぃーっと言ってあげると……

 

「(ん……わかった)」

 

 アクアはこくりと頷いてくれたが……とは言え子供なので多少の粗相は目をつぶって頂けたらなぁ~とは思ってもいるけど、それも含めて俺の管理責任が問われる訳なので親と言うのは大変だ。

 

 そして、体育館に着くと前もって用意されたパイプ椅子があるので、それに前から順番に座って行った。

 名前順って事もあり、当然俺とアクアは一番前の席に座っている。

 ……つまり色々目立つわけだけど、芸能人なので今更視線がどうのこうの気にすることはしない。

 

 そして、いざ入学式が始まれば教頭先生や校長先生の話もあるわけで、とにかく話が長いのが相場ではあるものの……それは全日制の高校での話だけであり、成人・未成年と入り混じった定時制の高校は極めて合理的で時間もそんなに掛からなかった。

 そんな訳で入学式も終えてクラスに戻るが……今日は初日と言う事もあり、プリントや教科書などが配られてすぐさまお開きになった。

 

 さて、特にこの後は用事も無いし、どうしたものか?

 そんな事を考えて居た時だった。

 

「なあ皆! これも何かの縁だし……交流も深める目的でどっかに遊びに行かないか?」

 

 俺と同い年って感じの気さくな男子生徒ががさっそくイニシアティブを取ろうとして良く通る声で言い出した。……まー裏はどうであれ、その提案は普通ならアリなんだけど……

 それは全日制の高校ならではの発想であって、成人組の人たちだとこの後仕事もあるかもしれないから、ちょっと難しいかもしれないな……

 ま、みんなが行くなら俺も着いて行くのはやぶさかでは無いし、善し悪しは置いといてアクアには色々と経験させてあげたい……何せこういうことがのちの経験になって行くのだから悪くはないのだ。

 

「……じゃあ私も行こうかなー」

「ありがとうお姉さん! 他の人はどうする?」

「この後は用事も無いし俺も行くぜ」

「……なら私も行こうかなー」

 

 さて、なんだかんだで話しは纏まりそうだし……俺も参加表明しようとした時だった。

 

 ♪~ 

 

 俺のスマホが鳴り出した。

 取り出して見ると相手は勿論アイだった。

 

「……もしもしアイさんどうしました?」

『ヒカル君今大丈夫? 今日お仕事飛んじゃって暇なんだけどこれから会えないかな?』

 

 なんとも間が悪いものだけど……今現状どちらにも返答して無いし、これから先の事を考えるとアクアがアイに会える日が少なくなってくるのは確実だ。

 なので、今回は交流会は辞退するしかないか……

 ふう……今日以降は俺が暇な日が全く無いから、こういった事に参加するのは今後難しいし……縁が無かったんだろうなって諦める事にしよう。

 

「分かりました。何処に行けば良いですか?」

『あ~じゃあ。喫茶店の住所送るから来てもらっても良い? そこなら目立たないし』

 

 喫茶店かぁ~頭に芸能人御用達ってついて無ければ良いけど……それでも喫茶店で有る以上は料金は高くは無いだろうから問題無いよな?

 

「分かりました」

『よろしくね~』

 

 スマホの通話を切ると一人の女性が近づいて来た。

 

「みんなで遊ぶ事になったけど……君はどうする?」

 

 年は……やっぱり上の様で、香水の匂いがうっすらとではあるけれど漂っているが……それは不快と言うものでは無く、女性の魅力を引き上げる為のものであった。

 化粧も薄く、元もと美形なのもあるが……彼女からは何処と無く夜の匂いを感じる。

 恐らくではあるがキャバクラ嬢で……それもかなりやり手に見える。

 いやープロと遊べるなんて金払ってでも行きたいものだけど……生憎と先手を取られちゃったし……内心ため息を吐きながらも断るしかないな

 

「……すみません。今丁度予定が入ってしまったので、今度二人っきりで……「パパ!」……冗談です」

 

 アクアから強い意志を感じたけど……

 

「「「ええ!?」」」

 

 アクアの発言の所為で、クラスの全員が一斉に驚いたけど……いや、俺以外にも子連れいるんだから、別に良いだろう? ……って年齢的にはアウトか

 

「……もしかしてその子って君の子?」

 

 推定キャバ嬢は恐る恐る聞いて来たけど……

 

「……親戚の子ですけど? アクアから見れば育ての親みたいなものですね」

 

 内心ドキドキしつつも、こういうことは動揺せずにさらっと答えるのが一番良いのだ。

 

「そ、そうかぁ~じゃあアクア君私達と一緒に遊びに行かない?」

 

 おっ! この子ちゃんとかがんでアクアと目線を同じにして喋りかけた。

 やはり接客のプロだわ。

 

「パパがいくなら……」

 

 アクアは行きたそうにチラチラと俺を見ているけど……悪いな、タッチの差でも約束は一番最初にしたのが優先されるし……流石にこの子相手だとアクアの刺激が強すぎるから別行動なんて許可なんて出来る訳がない

 

「ほら……アクア君はこう言ってますけど? パパさんはどうします?」

 

 親を動かすならば子供をたきつけるのが一番良いし……大抵の事のトラブルが起こってもこれで解決出来るからな。

 良いやり方だけど……今回は駄目です!

 

「……アクアここの人達は言っては何ですけど……明日以降も会えますから、今日は我慢してくださいね」

「……わかった」

 

 アクアも渋々ではあるものの納得してくれた様なので俺はアクアの手を引いてクラスから出る事にした。

 

「あ~それでは皆さんまた今度誘ってくださいね~」

「……バイバイおねえちゃん」

「待って……君の名前教えてくれる?」

「……失礼しました。この子は星野アクアです。アクア挨拶できるかな?」

「ほしのアクアです! おねえちゃんは?」

「……アクア君ありがとうね。……私は片寄アヤセだけど君は?」

「私は……カミキヒカルです。よろしくお願いします」

「カミキ……? カミキヒカル……ってまさか?」

「……すみません。今日ちょっと予定がありますので片寄さん今度二人でお茶でもしましょう?」

「あっ!? ちょっと待ちなさい」

 

 俺も時間があればじっくりと口説きたいけど今日は駄目なんだ。

 後ろ髪惹かれる思い出アクアと共に学校を出て指定された喫茶店に向かう。

 道中どこか上の空のアクアだけど……相手はプロ中のプロであるキャバ嬢だから辞めた方が良いぞって伝えるのは簡単だけど、まーコレも良い経験になるだろうし……最悪アクアには少しばかり早いけどお金の稼ぎ方を教えても良いかもしれないな!

 

 そんな事を考えて居たら指定された喫茶店に早くも着いてしまった。

 中に入るとそこにはアイと雨宮さんとルビーも居たので俺達もすぐに合流した。

 

「遅くなりました」

「あっヒカル君急に呼んでごめんね~」

「カミキ君久しぶりだね」

「ええ、雨宮さんも元気そうで何よりです。ルビーはどうですか?」

「私も元気ですよ?」

 

 そんなにはきはき喋れる子供がいるのだろうか?

 俺がそんな事を考えて居る時だった。

 

「はじめまして、ほしのアクアですよろしくおねがいします」

「ごふぅ」

 

 アクアがそう言った瞬間アイが吐血した!

 

「アイ! アイ!」

「ママしっかりしてママ!」

 

 雨宮さんとルビーは物凄く動揺しているけど、アクアは理解出来て無いようで……

 

「パパどうしたのかな? このおねえちゃんおなかいたいの?」

「……そうだね。もしかしたら痛くなっちゃったかもね」

 

 お腹を痛めて産んだ子から忘れられているアイが可哀そうになって来た。

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