アクアの悪意の無い一撃にアイは倒れてしまった。
ルビーも雨宮さんもその所為で大分慌てているけど……いや、雨宮さんは赤ちゃんの得意分野なんだから知っててもおかしくないよね?
「……アイさん? ダメージがあるのは分かりますが……アクアに関しての事は仕方がありません」
俺がそう言った瞬間ガバっと起き上がるも目をウルウルさせてこっちを見た。
ここは……アイの為にも、アクアの為にも慎重に言葉を選んで対応しないといけない
「……どういうことなのヒカル君?」
「アクアを引き取った時の年齢って0歳と八か月ぐらいですよね? だとすれば……当時のアクアは……というか赤ちゃんは何ですけど、視力はそんなに良く無いんですよね雨宮さん?」
俺がそう言うとあっ! って顔をし始めた雨宮さん。
いや……そこはスパッと答えてあげて欲しいけど……でも産婦人科医で小児科じゃ無いから詳しく無いのかな?
それともアイが絡むと雨宮さんはポンコツになるのだろうか?
「つまり……その時のアクアはアイさんや雨宮さんの顔が見えて無いし……そもそも赤ちゃんなので長期間会っていない場合は親で有っても忘れてしまうものです」
「それならルビーはどうなの? ルビーはちゃんと私達の事認識していたし……この間のライブでオタ芸もしてくれたよ!」
それはルビーが転生者で普通の赤ちゃんじゃ無いからですねって言ってしまえばこの話は終わりだけど……それを言っちゃおしめーな気がするし……しかし、変に持ち上げると今度はアクアが残念扱いされるしで困ったものだ。
「……それは」
「「「それは?」」」
何故か三人共ズイって前のめりになって聞いて来るのだろうか? アクアなんかオレンジジュースが入ったコップを両手で持ってストローでチューチュー飲んで大人しく座っているんだから見習って欲しいものだ。
「双子と言えども全部が全部同じ訳ではありませんから、ルビーにとっての刺激のポイントがアクアとは違っただけの話だと思いますし……言葉に限らずそう言ったものは時間を掛けてじっくりと成長するものですから慌てずゆっくり見守りましょうね」
どうだ? 一応咄嗟にではあるものの……両方とも角が立たない様に言ってみたけれど、納得して貰えたか……?
「……そうだね。人には得手不得手がある訳だし……双子と言えど違う部分があってもおかしく無いもんね」
アイはそう言うと納得してくれたようだし……アイが納得すれば必然的に雨宮さんもルビーも納得してくれるから助かるけど……結局の所ルビーとアクアじゃあスタートラインがそもそも違うからその辺の溝を広げないでくれよってルビーに言いたいが……まぁ無理だろうな。
なんたって……目の前に大好きなアイドルが自分の母親として存在している以上限界厄介オタクであるルビーが暴走しない訳が無いし……雨宮さんも居る以上ルビーは常にフィーバータイムで毎日が楽しくて仕方が無いのだろうね。
それに引き換えアクアは普通の子なので、そう言った事に興味が湧くには早すぎる事もあり……本能的に無理と悟ったのかもしれないな。
まー俺もシティーハンターよろしく”ヤレ無い女より目先の女”理論だから無理と思ったらサっと手を引く事にしている。
「とりあえず……アイさん?」
「な、何かなヒカル君?」
「アクアに自分との関係性を教えてあげた方が良いんじゃないですか?」
俺がそう言うとハっと思い出した表情をするも……すぐさまアイドル顔になり、アクアに話かけた。
多分……それが良く無いと思うぞ?
「アクア……私がアクアの母親の星野アイだよ」
アイはファンを魅了するような笑顔でそう言うが……
「マ……パパほんと?」
アクアからすると審議はさっぱりわからないので、俺に尋ねて来た。
「ええ、こちらの星野アイさんはまごう事なきアクアの母親ですね」
俺がそう説明すると……アクアはアイの顔を目を皿のようにして見始めた。
アイはやっぱりアイドルなので、どこから見ても可愛いし……見られることにも慣れているから、堂々としたものであった。……仮にもし俺の母親がこんなに可愛いかったらテンション上がる訳では無く、なんか拗らせそうな気がしてならない。
そして、アクアの審査が終わったようだが……子供と言うのは純粋ではあるものの残酷なのである。
「マ……パパとはぼくにているのに、アイとはにてない!」
「ごふぅぅぅ」
「「アイィー(ママぁー)」」
アイ本日二度目の吐血……
そして、雨宮さんとルビーも思わず絶叫してしまった。
いや、流石にお客さん居ないから、迷惑になる事は無いだろうけど……チラッとカウンターの所に居る店主を見るとコーヒーを飲みながらこちらをチラチラ見ていた……
とりあえず、店主は特に何も言って来なかったので、ひとまず置いといて……アクアの発言を考えるとしよう! まーアクアは俺の遺伝で分かりやすく、髪は金髪だし顔も今現在は赤ちゃんなのもあるが、カッコいいよりも可愛い寄りなのだ。
俺も顔は可愛い寄りなので当然こっちに当てはまると考えてしまうが……実際のところ男の子の顔は母親に似る傾向があり、女の子の場合は逆に父親に似る傾向がある。
この場合だとアクアの顔の可愛さは母親であるアイ譲りになる筈だけど……いや、うん……ここでは何も言わない方が良いだろう。
何を喋ってもアイが更なるダメージを負う事になりそうだし、今日は休みなんだからじっくり話合いさせるべきだろう……その結末がどうなるかは置いといて
「とりあえず……皆さんお腹空きませんか? ただ喋っているだけなのも味気ないですし、何か注文しませんか?」
「じゃあ私このケーキセット」
「私もママと同じのにする」
「じゃあ俺も……」
アイが指さしたケーキは写真を見る限り結構デカそうで、甘党の人にはお勧めの一品であるけど……1歳の赤ちゃんってケーキ食べても大丈夫なのか?
それと雨宮さんは推しと同じ物を食べる事に幸福感を得ようとしてるけど……若干ではあるものの声が震えていたように見えた。
「パパぼくこれがいい!」
アクアが選んだのはミルフィーユだった。
「じゃあ……私はパンケーキとチーズケーキとアイさん達が選んだジャンボケーキにしましょう」
「「「え!?」」」
いや、俺甘党だし……コーヒーのブラックと一緒に食べれば全然いけるし……何よりさっきから頭使いすぎてるから糖分が欲しいのよ!