高校に入学して一週間が経過した。
高校は定時制って事もあって、その一週間で退学する奴がかなりいた。
目的がはっきり有る訳じゃ無ければ、辞めてしまうのは無理からぬ事だし、俺がどうこう言う事じゃない……
とりあえず、高校の宿題を仕事の合間や家に帰ってアクアが寝てからこなすと言うかなり忙しい日々を送っていた時だった。
不意にスマホが鳴り初めて見て見ると四条社長からだったから、すぐさま通話ボタンを押す
「あっヒカルちゃん今大丈夫?」
時刻は間もなく21時を過ぎようとしていた。
今は課題をやっている最中だけど、普段お世話になって居るから、この程度の事でとやかく言うことはしないけど、こんな時間に連絡するなんて……久しぶりだな~
アクアを預かる前だったら、呼ばれればホイホイ着いて行ったけど……今は流石に無理だし……四条社長には事情を説明しているから、やる時はアクアの件も含めてサポートして貰えるのだが……ま、ええやろ!
「……ええ勿論大丈夫ですよ」
「良かったわ! それと言うのもヒカルちゃんのおかげでこの間の雑誌の売り上げがかなり良かったのよ! 今までも黒字だったけど……やっぱりヒカルちゃんはたまんないわね!」
「いえ、そう言った事であれば頑張った甲斐がありました」
確か……猫耳メイドの奴だったと思うけど、それが表紙にされててキャッチコピーが”買ってくれなきゃ拗ねちゃうにゃん”だったかな? まさか、それがバカ売れになるなんて世の中何がバズるのか分からないなぁ~
「そう言った訳で……今度のギャラは多めに振り込んでおくから次回もよろしくね!」
「分かりました」
四条社長との通話はそれで終わった。
モデルのギャラは大分高くなったけど……偶には役者の仕事もやりたいものだが……中々難しいし、モデルの仕事はみゆさんや四条社長がフォローしてくれるから何とかやっているけど……役者の仕事の場合はアクアの事を見る人が居ない為、現状は受けられない。
生きるためにはお金が必要でモデルの仕事だけでも問題は無いけれど……だからと役者の仕事を捨てる気はサラサラ無いが……しかしアクアの面倒を放棄してまでこなす必要があるかと言えばそういう訳には行かないし……さてどうしたものか?
そんな事を考えて居る時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴り響いた。
時刻は21時を過ぎている。
俺の家を知っている人は上原パイセンか愛梨パイセン位だし、その二人もたまにふら~っとくるけど……それ以外は新聞か宗教ぐらいだろうし……今回もそのたぐいだろう
そんな事を考えながら玄関を開けるとそこに居たのは……
「えへへ……ヒカルさん来ちゃいました♡」
ニノだった。
ニノははにかんだような笑顔ではあるものの、その横にはキャリーケースが置いてあり、どう見ても泊まる気満々だった。
いや、別に泊るのは構わないけど……B小町は最近忙しいってアイから聞いたけど、それはアイの主観で有ってアイ以外のメンバーが忙しいかって言うと違うかもしれないな……
「あの……こんな夜分遅くにどうしたんですか?」
「実は……ちょっと相談したいことがありまして……上がっても良いですか?」
まー長々と玄関でする話じゃ無いし、上がってもらおうか……
「……アイ以外のB小町も以前と比べて忙しくなったんですけど……それでも手取り13万位なんですよ!」
「……ちなみにニノは今いくつでしたっけ?」
「私? 今16だけどそれがどうしたの?」
その年齢で普通にバイトしていたら手取り10万超えは凄いけど……朝から晩まで仕事してそれだと確かに生活厳しいな
「高校って通ってたりしますか?」
「行ってる訳ないじゃないですか、そんなお金なんて無いし……生活するだけでギリギリだもん」
うーん、俺がかつて住んでいたあのボロアパートの元共用便所部屋なら家賃¥3000だからお金は貯まるけど、その代わりライフラインである電気・ガス・水道も無いから生活するには知恵と根性が無いとかなり厳しい……流石にアイドルには無理だよな。
「何か私に出来る仕事って無いですかヒカルさん!」
……いや、そんなん言われたって俺がやって欲しい事と言えば役者の仕事の時にアクアの面倒を見ててくれればありがたいけど……そんなピンポイントで時間が空いてる訳じゃ無いから無理だろうし……
「そうですねぇ~こだわりが無ければ役者の仕事でも見てみますか?」
とりあえずララライに連れて行って何か得るものがあれば良いけど……
「役者の仕事ってもしかして……ヒカルさんの職場ですか?」
「……劇団ララライは知ってますよね? 明日は日中空いてるので案内しますよ」
「……一流の役者しか居ないと言われてるあのララライで役者の仕事が見れるなんて……」
え!? ララライってそんな評価が高いの? 確かに愛梨パイセンはずば抜けているが、それ以外は確かに熱意は凄いけど大したこと無いと思うけどなぁ~
「……一流にもピンからキリまで有りますから、そんなにハードル上げない方が良いと思いますよ?」
「ピンキリの一流なんてあるんですか!?」
いや、だって……皆目立つ事しか考えて居ないから、いつも代表の金田一さんが怒ってばっかりいるし、その所為で毎回俺に何とかしろって指示が飛んでくるから困ったもんだ……
まーお祭り騒ぎみたいなもんで楽しいは楽しいけど……
「……まー明日になれば分かりますよ。とりあえず……泊るのは構いませんから大人しくベットで寝ててくださいね」
「……その前にシャワー浴びて来るね♡」
ニノはそう言うと浴室に向かって行ったが、そのタイミングでアクアがむくりと起き上がった。
「……ぱぱといれ」
「……分かりました」
アクアはまだ眠いのか目を3にし手を伸ばしている事から抱っこをご所望の様だけど……
「よっと」
「!?」
クルっと半回転してアクアを背面から持ち上げた時だった。
「あっ! シャンプー忘れ……え? ……きゃー見ないでくださーい!」
裸のニノが浴室から飛び出して来たが……アクアに見られたと思い恥ずかしさの余りしゃがみこんでしまったようだ。
「ニノ? とりあえず……落ち着いてください」
「落ち着いてなんて居られませんよ! アイドルの裸を幼気な幼児に見られてるんですよ!」
まーそれもそうだけど……
「ぱぱといれ!」
「……あっと、もうちょっと我慢してくださいねアクア!」
とりあえずニノはほっといてアクアをトイレに連れて行った。
「……幼児に裸見られたぁ~」
いや、こんなん事故みたいなもんだから気にしないで欲しいものだ。