二人からガチ目のツッコミを食らって耳がキーンってなったけど……
「……まー何が言いたいかって言えば、役者にとって必要な物って演技力……つまり説得力って事なんですよ。ある程度は盛ってやる事もありますが、基本はあるあるってベタな事を踏まえてやる事で、見る人に共感をして貰う事も重要だし、それが人気に繋がるんですよ」
「……えっとどういうことですか?」
「……あーカミキが言いたいことが何となく読めて来た。……つまりはこの子が経験して来た事を実際に映えるように仕草とかそういったものを矯正していくって事か?」
流石金田一さん……俺が言おうとした事を言ってくれたぜ!
「そういう事です。例えばですけど役柄で家事や料理を作る女子高生が居たとすれば、実際に日々そういった事をやっている人に同じ事をやって貰った方が自然ですからね。……勿論役者は演じるのが仕事なのでやってやれない事はありませんし、寧ろ出来ないと困りますけど、経験に勝るもの存在しませんから演技力よりも日々の行動の方がより自然なんです」
なので、ニノの得意分野を中心に演技の勉強をやって行けば……多少は話題も出るだろうし、最悪愛梨パイセンに頼んで一緒のドラマなんかにも端役でも良いからねじ込んで貰えれば良いだろう
「そういえば……ニノは今忙しいんですか?」
「前までは週に1.2回のライブだったけど、……今はアイのおかげで週に多くて4回位ライブだけやってるよ。まーそれ以外は何も無いけどね」
それなら確かに体感的には忙しいだろう……何せ単純に働く日が2倍近くになっているのだから
「つまりちゃんと暇な日もあると言う事ですね」
「そうだけど……ライブの日は楽屋に一時間前から待機していないといけないし、大体2~3時間は歌って踊って、最後は握手会に物販もこなすからトータルすると6時間休憩なしなんだよ!」
ニノはそう言って憤慨し始めたが……
「まーお金を稼ぐのは大変な事ですから頑張ってくださいね」
「ヒカルさんはどうなの!? 6時間も休憩無しで働いてるんですか!?」
「私は……色々あって休み無いですけど、その代わりそれ相応のギャラは頂いてますね」
アクアを引き取る前が最も過酷で半年近くはほぼ休み無く働いていたし、モデルの仕事が終わった後はお得意様との付き合いやドラマの撮影なんかもあったから、本当に大変だった。
まー大変だったからこそ、ニノの4倍近いギャラとそれとは別でお小遣いも貰えていた訳だけど……まーそれは黙って居よう。
つまり、ライブの日だけは忙しいみたいだけど、チケット完売&物販も全部捌けていれば費用は黒字になるが……関わっているスタッフ並びグッズなどの製作費もそこから捻出するだろうから中抜きの金額も凄い事になるけど一番の問題は……B小町は7人居るから、ギャラは7人での山分けになるのか……ニノの手取りが13万だから総額91万……実際はもっと多いのだろうけど、計算方法が分からないしおおよそ100万以上は確実だろう。
となると……チケットの料金を上げれば自ずとニノ達の報酬も上がる訳だけど……苺プロが何を重視しているのか分からないし、俺は部外者だから口出すことは出来ない
「……言ってしまえばニノの収入を上げるにはニノ個人の仕事を取らないと行けない訳ですから、劇団に所属するしないは兎も角こういった見聞を広げるのが一番だと思います」
まー四条社長にお願いしてモデルの仕事を斡旋してもらい収入アップって方法もあるにはあるけど……流石にそれは苺プロ的にどうなのか分からないから、
提案しづらいなぁ~
「……あと一番重要なのが、苺プロとの契約内容で問題無いかも確認しないと、後々揉める場合がありますので、ちゃんと書面で貰ってくださいね?」
俺がそういった瞬間金田一さんは渋い顔をしながらも「確かに」と小声で囁いた。
「……後で確認します」
ま、今日は体験学習と言う事で気楽にしていれば問題ないよ!
「難しい話はさておき、それでは舞台稽古の見学でもしましょうか?」
「……そうだね」
俺は舞台が見えやすい所に二つのパイプ椅子を持って来て、ニノと共に他の劇団員の稽古を見る事にした。
したんだけど……
「お前ら……見学者が居るからってなんだその様は! そこはもっと感情を乗せて演技をしないとだめだろうが! あと今の場面は主役にスポット当ててるんだから他が目立とうとするな! 最初からやり直しだ!」
曲がりなりにも美少女であるニノに良い所を見せようと張り切ってしまった劇団員達はやり過ぎてしまい、あえなく金田一さんの雷が降ってしまい、寧ろ情けない所を晒してしまった。
「おーおー金田一さん今日もダントツに吠えてるなぁ~」
ニヤニヤしながらも上原パイセンがやって来た。
「あっ上原パイセンおはようございます」
「おう、カミキ……コレやるよ」
パイセンはそう言うとビニール袋からアイスコーヒー取り出して俺にくれた。
「……頂きます」
「おう、ニノちゃんも居たのか……桃の天然水でも飲むか?」
「は、はい頂きます」
なんかニノ……やたらと上原パイセンの事を怖がってるけど……やっぱりあの関暴連の人の所為だよな……
いや、俺も正直あの人は怖かったからニノの気持ちは理解できる。
あのおっかない人は耳や鼻が大分変形している事から恐らくではあるけど……柔道の経験者っぽいのだ。
ホーリーランドじゃ無いけど……路上での柔道はマジでヤバいのだ。
ましてやあのおっかない人は関暴連であるので、まず相手に手加減などするはずが無いので、投げて殺すか絞めて殺すかの二択しかない。
そしてあのおっかない人は間違いなくそういった経験をしているだろう……
まぁ過ぎた事を考えても仕方ないので……金田一さんの怒声をBGMに舞台稽古を見る事に集中した。
「今日は一日ありがとうございました!」
「ああ、特に何かやった訳じゃあ無いけれど……喜んでもらえたんなら何よりだ」
ニノはニノで今回見た役者の仕草が勉強になったようだし、俺もちょいちょい補足説明をしていた。
まー一番のポイントはやっぱり金田一さんの演出家としての目線を知れたところだろうけどな。
金田一さんの見方が全て正しいなんてことは無いけれど……それでもプロの指標が分かるのであれば、がむしゃらにやるよりも遥かに効率が良い。
その上で、アレコレ考える事は決して悪い事じゃないのだから……
「……じゃあ私は今から事務所に行って確認してきますね! ヒカルさんまた後で会いましょうね?」
「いえ、私はこれから高校なので、家に来ても誰も居ませんよ?」
「そんなぁ~……じゃあ私にせめて鍵位くださいよ!」
簡単に言ってくれるけど……スペアなんて今持って無いよ!
「まー21時位には帰っているので、それまではどこかで時間でも潰してくださいね?」
俺はそう言って遊び疲れて寝ているアクアを抱えて高校に向かおうとしたが……
「私が……家事とかしていたらヒカルさん楽じゃないですか?」
ニノの言った事は確かにその通りだから、否定する事は出来ないな
「……分かりました。これが鍵ですので無くさないで下さいね」
「合鍵作るのは有りですか?」
「……好きにしてください」
そして俺はニノに家の鍵を渡して今度こそ高校に向かった。