高校は特に問題も無く……クラスの人達も社会人が多い事から、皆必死に課題に取り組んでいた。
しかし、同年代っぽい奴等は一人……また一人と自主退学していく始末だ。
まー、高校だけが人生じゃないから好きにすれば良いと思うけど……
「カミキさぁーこの問題教えてよ」
胸元がはだけているのも相まって、過剰な色気を振りまいて俺に話かけて来る片寄アヤセ……
視線はそのままで全体を視界に入れて楽しむ事が出来るのは役者としてのスキルを持ってすれば容易い事なので、今日も今日とて眼福です。
なお、アクアは視線が顔と胸を交互に行ったり来たりしているが……年齢的にはまだセーフなので今のうちに楽しんでいれば良いともう。
「……それは構いませんけど、何故私に聞くんですか? 先生が居るんですからそっちに聞いた方が確実に良いですよ片寄さん」
まぁー教えるのはやぶさかでは無いし、俺も復習になるから寧ろありがたいけど……それとは別に彼女の狙いは一体何なのだろうか?
夜のお仕事をしているのは確定であるので、彼女からすればイケメンの知り合いなんてのは掃いて捨てる程いる訳だろうし……俺の外見が気に入ったって言うのなら、それはそれでオールオッケーだが……今の所彼女からはそう言った感情を感じられない。
なので、目的が良く分からないのだ。
「……だってカミキの方が教え方上手いんだもん」
それは知らんけど……まぁー勉強を教えるには大前提として教える側がちゃんと理解していないと駄目だし、相手に伝わる様に説明出来るように語彙力も鍛えないといけないのだ。
「……褒めても何も出ませんよ?」
「あーカミキもしかして照れてる? ま、私美人だしねー」
褒められるのが嫌いな人間なんて……そもそも人間性を疑うし、美人に褒められれば男って奴は単純だから嬉しいものだ。
そんな事を考えながらも片寄さんに勉強を教えながらも自身の課題を解いて行く。
授業の合間合間でやっていたので、実際に片寄さんが何処まで理解しているのか分からないが……授業が終わったし、さっさと帰る事にしよう。
また明日から仕事の日々だし、ゆっくり出来る時はゆっくりしたいのだ。
そんな事を考えながらカバンに教科書を詰めて帰宅しようとした時だった。
不意に影が覆ったので、顔を上げるとニコニコしている片寄さんが居た。
「ねぇーカミキこの後一緒に勉強しない?」
その言葉にアクアは俺の腕を掴み目をキラキラさせ始めたけど……
……うん、アクア? ちょっと早いよ……転生者である俺の事は置いといて……1歳ぐらいの子が女性との触れ合いに興味深々なのは如何な物だろうか?
それとも、母親を求めての子供ながらに行動って言うのなら分からんでも無いけど……俺自身片寄さんの事は何も知らないのが現状だから、正直に言うと是非ともその誘いに乗りたいのが俺の本能ではあるものの、理性はアクアを優先しろと叫んでいる。
ならば答えは一つ
「……すみません。この後用事がありますので……アクア帰りますよ?」
「やーー」
俺がアクアを抱きかかえると……アクアは若干ではあるものの、抵抗し始めたが……しばらくすると大人しくなった。
「え!? ちょ……ちょっとカミキ待ってよ!」
いや、俺も出来れば行きたいところだけど……カミキさんは一人しかおらんから、ダブルブッキングなんて出来る訳あらへんがな……
「片寄さん……また今度誘ってくださいね」
いや、本当に……行きたかったけど……なんでか知らんが俺と予定が嚙み合わない片寄さんだった。
「じゃあ……また今度誘うから次は必ず来てよね!」
「用事が入って無ければ……是非とも行きたいものです」
俺が強く答えると……何でか知らないが、片寄さんはクスクス笑いだした。
「そこまで思っているのに来れないカミキって面白いわね。……今までの男は一も二も無く飛びついたのに」
いや、俺も先約が無ければ一も二も無く飛びついてましたよ?
そんなこんなで後ろ髪を引かれる思いで家に帰宅していた。
「……パパ? パパはおねえさんのさそいをなんでことわるの?」
アクアは不満そうに聞いて来た。
「……アクアには少し難しいかも知れませんけど……どんな理由があろうとも約束を破るのは決して良い事ではありません」
「やくそく?」
「そうやくそくです! 今回の場合はニノが家に居て私とアクアの為に美味しい料理や家の事をやってくれている訳で私達の帰りを待っていてくれてます」
「……にのおねえちゃんとはあそんだけど……ぼくあやせおねえちゃんとはあそんだことないから、いっしょにあそびたい」
「そうですね。でも……そんな事をしたらニノが可哀そうですし、片寄さんに対しても信頼を損なう行為です」
一歳のアクアに理解を求めるのは酷なことではあるけれど……こういった事を教えて行くことが結局の所アクアを守る事に繋がるのだ。
「……ぼくわからないよぱぱ」
「アクア……こういうことはゆっくりと理解して行けば良いんです」
一歳の子にしてはアクアは喋れる方だけど……それでもやっぱりアクアは小さな小さな子供なのだ。
社会のルールやそう言った小難しいものなんて、中々理解できる訳が無いので少しずつ学んで良ければ良い。
そんな風にアクアを慰めながら歩いていれば、家に着いてしまった。
鍵はニノに渡したから、自分の家なのにインターホンを押すのは何だが変な気分ではある。
ピンポーンと音が鳴るとパタパタと足音が聞こえて……なんか多いぞ?
玄関のドアが開いたらそこには……
「ヒカル君?」
「ヒカルさん?」
ニノが居るのは分かるんだけど……何でアイが俺んちに?
「「これってどういうことなの!?」」
とりあえず……今からでも入れる保険は無いだろうか?