何故こんな事に……
玄関が開いたと思えばアイとニノがお冠の状態でぷんぷんしていた。
とりあえず、玄関口で話す内容じゃ無いから、中での話し合いが行われる事になった。
「ヒカルさん……これどうぞ♡ アクア君はハンバーグ食べれる?」
ニノはそう言うと俺にハンバーグを食べて貰おうとあーんをして来た。
うん、可愛い美少女にあーんして貰えるなんて役得も良い所だ!
「……ええ、頂きます」
デミグラスソースがたっぷりかかったニノ特製ハンバーグは美少女補正を差し引いても格別に美味かった。
「にのおねえちゃんすっごいおいしいよ!」
アクアなんて目を輝かせててパクパク食べてる事からニノ特製ハンバーグは大好評のようだが……
「……むぅぅ私だって……ハンバーグ位作れるもん!」
アイはそう言うけれど、ニノが作ったハンバーグを食べて落ち込んでいた。
「まぁーハンバーグ位なら私も料理本を見ながら作れますけど……ここまで美味しいのは凄いですね」
俺がそう言うとニノはドヤ顔をアイに向けており、今にもどやどやってアイに言いたそうにしていた。
いや、実際にドヤっても問題無いレベルだし、正直言えばニノを家政婦で雇いたいぐらいだ。
そんな事を考えて居た時だった。
「……あーあ、にのおねえちゃんがままになってくれたらなぁ~」
「はう!」
アクアから漏れ出た純粋な言葉はアイの心に深い傷を与えてしまったようだ。
「……ヒカルさんが良ければ……私……」
そして、アクアの言葉によってさっきまでのどや顔から一転して乙女顔になってしまったニノは人差し指をつんつんしており、どうやらまんざらでも無いようだが……正直俺も……有り寄りの有りと考えてしまったし、現にアクアもニノに懐いて……もとい胃袋を捕まえられている訳だし……ちょっと真面目に考えるとするが、しかしこれは大変デリケートな問題だからすぐに答えを出せる訳でも無い。
「アクア? アクアのママは私だよ? だからこっちにおいで?」
アイは自身の精神を保つためにも我が子のぬくもりを求めて、両手を広げるも……
「あいおねえちゃんはままじゃないもん!」
「がはぁ」
アクアにバッサリ切り捨てられてしまいアイは吐血(デミグラスソース)を吐きながら倒れてしまった。
アイからしてみるとアクアの言葉は思わぬ痛恨の一撃だったようだが……それでも気力を振り絞りつつ徐に立ち上がったと思うと……アクアに自分から抱きしめに行った。
「!?!?!? はな……はなし……ふぅ……」
アクアはアイの奇行に驚き抵抗するも……数秒後には大人しくなった。
まー実際アイは母親であるので、親子の抱擁によりアクアとも争う事なく打ち解けれればそれに越した事は無い。
しかし、アクアが小さい事もあるので、アイの胸元にすっぽり収まってはいるものの、顔が赤くなっているのが気にかかる。
子供の体温は大人と比べても高いし、触れ合ってしると熱いのかもしれないが……アクアは俺の影響の所為か、女性との触れ合いを好む傾向があるし、そう言えばみゆさんに抱っこされている時も大人しかった。
「アクア……アイに抱っこされるのはどうですか?」
俺がアクアに尋ねると思い出したかのよーに抵抗しようとするも……
「こーら、暴れるともっとぎゅーってするよー」
「はふぅー」
一瞬で大人しくなった。
まー幼児とは言え、男ではあるし異性に興味を持つのは悪くは無いだろう……
しかし、何故か勝ち誇った顔して俺とニノを見ているアイだけど……どうしたのだろうか?
「ねぇーアクアそろそろ戻って私達と一緒に暮らさない?」
「……あいおねえちゃんと? ぱぱとはもうはなれちゃうの?」
「うーん……ヒカル君とは会う頻度は減っちゃうけど、その分私が頑張るよー」
多分それは物理的に無理だと思うけど……別れた元彼が子供を育ててるってのもおかしな話だし、難しい問題だ。
一応解決策と言えば……俺がアイ達の住んでるマンションの隣に引っ越せばアクアの問題は解決するだろうけど、果たしてそこまでしないといけないのだろうか?
アクアの為を思うのならばするべきではあるが……しかし、アイとはちゃんと別れているから、これ以上干渉するのもおかしいし……
「……アクア行っておいで」
「ヒカル君!」「ヒカルさん!」
アイは目を輝かせて、ニノは驚いているものの……
「ぱぱ!?……ぼくぱぱとはなれたくないよ!」
予想通りアクアが嫌がっていたが……
「……いえ、別にこれが今生の別れって訳では無いですから、アイ達と暮らして見るのも良い経験ですから、楽しんでくださいね」
「……え!? たのしむの?」
「そうですよ。別にアイ達と死ぬまで一緒に生活する訳じゃ無いんですから、嫌になったら戻ってくれば良い訳ですし、別荘感覚で遊びに行くみたいな感じで軽く考えてみてくださいね」
「ぱぱのいってるがわからないけど……わかったー。たのしんでくる!」
これが良いか悪いかは分からないけど……コレもアクアにとっては良い経験になればと思って決断した。
まーアイの所にはルビーも居るし、雨宮さんも居るし、アクアも夜泣きは……見た事無いけど恐らく大丈夫だろう……
「じゃあ……ヒカル君アクアを連れて帰るねー?」
「……そんなに焦る話でも無いので、それは明日以降でも良いんじゃないんですか? それとも早く連れて帰らないといけない理由でもあるんですか?」
「……特には無いけどこういうのは思い立ったが吉日って言うじゃない?」
「……それは個人で動く話であって、物事には段取りって言うのがありますし、そんなに急いでしまうとアクアが可哀そうです」
「……ムムム。確かにそうだね……分かった。じゃあ明日朝一で迎えに行くよ」
そんなに焦る程の物じゃ無いけど……アイの様子を見ると心配になってしまった。
「じゃあ……アクアまた明日ね~」
「……うん、あいおねえちゃんまたね」
アイから解放されたアクアはどこか名残り惜しそうな顔をして、アイの事を見送った。
「ヒカルさん……大丈夫ですか?」
アクアには聞こえない声音でニノ聞いて来たけど……ここで俺が文句を言うのは違うと思い……
「……勿論です」
俺は微笑みながら返事をした。
次の日
アイは宣言通り朝一でやって来た……アクアも今日からアイの所で暮らす事になったので、子供ながら緊張しているようで、眠たそうにしていた。
まーアクアの荷物はそもそも大して無いので、準備自体はすぐに終わった。
「じゃあ……ぱぱいってくるね」
「アクア行ってっらっしゃい。何事も楽しむんですよ~」
実際は辛い事悲しい事の方が多いけど……それでも楽しむ事が出来れば大丈夫だろう。
それから数日が経ち、アクアが居なくなってから俺の心にもぽっかりと隙間が生まれてしまったが……
「……恐らくアイもこんな気持ちだったんだろうな」
そう思うとアイの行動も母親故の物に思えてしまい、それを否定する気にはならなかった。
俺がアクアの事を気にするよう様にアイもアクアの事を気にかけていたのだから……