カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第31話

 アクアと離れて半年が経過した。

 心にぽっかりと穴が開いてる状態ではあるものの、結局の所俺は相も変わらず忙しい日々を送っていた。

 高校では課題をこなしつつも片寄アヤセと一緒になる事が多くなり、一緒に放課後遊びに行く……事は仕事の都合で出来ないけれど、友達って間柄が近いのかもしれないな~

 彼女には年の離れた妹がおり、それが中々可愛らしくて良くアイドル事務所にスカウトされる様だけど……姉であるアヤセからしてみると心配でしょうがないらしい。

 そんな訳で現在モデルとして芸能界で働いてる俺からアレコレ話を聞きたいみたいだけど……役者やってるって言ったら大層驚かれたのは記憶に新しい……

 まぁー脇役だからってのもあるが……世間の知名度はモデル業が本業と思われていて、役者としての知名度はあんまり無いのだ。

 その所為で、撮影現場に行くと俺の事を知らない人からは顔で仕事を取って来るチャラチャラしたモデルと思われているが……実際は顔だけで仕事が取れる程甘くは無く、満足させて初めて買って貰えるのだからそこを間違えて欲しくは無いものだし、そして芸能界は生き馬の目を抜くが如く、新しい人たちがどんどん入って来る訳で、どんなに義理や人情を重んじていても大前提として利益を出せないと使って貰えないのだ。

 

 今現状はモデルの仕事で稼いでいるけど、それが5年あるいは10年後も……いや、もっと先まで使って貰えるとは限らない。

 だからこそ……今のうちに年齢を重ねても食っていけるように役者の仕事も疎かにする訳には行かないのだ。

 

「ちょっとマネージャー! かなの荷物ちゃんと持ちなさいよ!」

「す……すみません」

 

 久しぶりのドラマの撮影現場は中々ヤバそうな様子だった……

 こんな小さな子供がマネージャーとは言え、大の大人を顎で使うなんて時代と思うべきか……それとも世の末と嘆くべきか……中々判断に困ってしまう。

 

 はぁーと内心ため息を吐きだしつつも、全ての役柄を頭に叩きこんで何時でも対応できるように身構えて置くが……正直言ってこんな現場嫌すぎる!

 とっとと今日の撮影を終わらせて、早い所帰りたいけども……

 

「全くかなを待たせるなんて一体何様のつもりなのよ!」

 

 こんな子供がプリプリ怒っているのに監督達もそうだけど周りの役者達も誰一人注意を出来ないとは……

 

「……カミキちゃーんちょっと良いかな?」

「何でしょうか?」

 

 俺はそう言って監督の方を見ると、監督は困り顔であった事から……あのお子様を大分持て余しているようで、ほとほと手を焼いているようだ。

 

「カミキちゃん……実は今日主役の子が来れなくなったから”()()()()”お願いしても良いかな?」

 

 監督の言う”()()()()”それは……稽古の代役(スタンドイン)の事である。

 まーこれが出来るからこそ俺のギャラは格段に上がったし、何よりドラマや舞台なんかも次もお願いされる訳なのだ。

 

 俺からしてみれば、外部の人を雇うよりもそこに居る人間で補う事が出来るのであれば、その分の報酬がそっくりそのまま……って訳では無いだろうけれど、増えるのは当たり前だし何より重宝される訳なのでやらない理由が無いのだが……やり過ぎた結果忙しくなりすぎてしまい、当初の目的とは違う理由で主役級を受ける暇が無くなってしまった。

 脇役でもこんなに忙しいのだから、マジで手も回らなければ暗記するのも大変である。

 

「勿論です。すぐ始めますか?」

 

 俺がそう聞くと監督は申し訳なさそうに答えた。

 

「……出来れば早めにお願いしたいな~。ほら、かなちゃんのご機嫌を損ねると……僕らも色々大変だからね」

 

 ああ、天才子役と持て囃されているし……本人にしろスポンサーにしろ、今こそが稼ぎ時だから稼げる内に稼いでおいて旬が過ぎればポイって捨てて見向きもしなくなる芸能界の悪しき風習だ。

 これに関しては自業自得と言ってしまえばそれまでだが……こんな年齢一桁の子に現場の現実を教えて来なかった周りの大人だって悪いんだから少なくともこの現場では子供らしく楽しそうに過ごさせてあげたいものだ。

 

「監督私なら何時でも行けます」

「カミキちゃん……助かるよ! 今度埋め合わせするからね」

「いえいえ、監督にはいつもこうして呼んでいただいてますからね」

 

 俺がそう答えたら監督は嬉しそうにし始めた。

 

「皆さんそれでは本読み始めますよー! 代役は何時も通りカミキちゃんがやってくれる事になったので問題ないでーす」

 

 監督がそう言うと撮影チームは何処となく嬉しそうにしていた。

 まぁー本読みとは言え色々と考える事があるし、早く終わればその分余裕が出来るので、心にゆとりが生まれて結果良い作品になりやすいのだ。

 

 しかし、演者からすれば……俺の事を知ってる人間がそもそも少ない訳で明らかに見下した目で見始めるのだ。

 

「……全く初日から稽古の代役(スタンドイン)が来るなんてやる気あるのかしら? あんたも稽古の代役(スタンドイン)だからって大根みたいな演技をして私の足を引っ張らないでよね」

 

 かなと呼ばれた子役は中々の切れ味をお持ちの様で、その言葉で周りの演者達は悪意を含んだ笑みを浮かべて俺を見始めたけど……実に面白いじゃねーか!

 演技の文句は演技で返すのが礼儀だし……まずは演者全員の伸びに伸び切った天狗っ鼻から叩き折ってやる!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 10秒で泣ける天才子役……私が周りの大人から言われた私を表す言葉だった。

 ママは私がここまで売れるとは思っても居なかったようで、終始ご機嫌で私の仕事がうまく行くと頭を撫でて誉めてくれた。

 それはきっとこれからも変わらない私にとっての明るい未来に思えた。

 そうなると……私の考えは次第に変わって行き、ママに褒めて貰う為に稽古をより頑張る様になったし、良い作品を作る為にやる気のない人を攻撃したりとなっていった。

 

 そんなある日私はカミキヒカルに出会った。

 

 私の周りの大人は彼を知らないらしく……分かっている事は巷でカリスマモデルとして君臨していることぐらいで、半年前に販売されたカミキヒカルの猫耳メイド特集は今尚凄い売れ行きがあり、ネットでの売り上げが凄いらしいけど……私のピーマン体操だって負けて無いわよ! なんたってオリコンで1位取った位なんだからね!

 

 そんな訳で私はカミキヒカルに対して並々ならぬ思いを持って対峙していた。

 モデル上がりの役者なんてみそっカスも良い所だし、私がけちょんけちょんにして現場から追い出してやると息巻いていたのに……

 

 いざ本読みが始まると、そこに居たのはカミキヒカルではなく……物語の主人公が居た。

 天才だなんだと言われても、他人の……ましてや本読みの段階で幻視させられた事なんて一回も無かった私は……暇さえあればカミキヒカルを追いかけるようになった。

 だってモデル上がりの役者に役者が本業の私が負けたままじゃいられないから……

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