気が付くと既に空は明るくなっており、となりで麗民さんはスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
クールな見た目に女性にしては高めの身長でスタイルも良く、何よりも頭も切れるし語尾にピヨと愛嬌も抜群な彼女と一夜限りの関係で終わらせたくなかった俺は全力で墜とした。
まーそもそもカナンが居る以上彼女との関係が切れる訳が無いので焦る必要は無かったんだけど……チャンスが来たから飛びついた。
さて、とりあえず今後の事については事務所の設立に挨拶周りに雑務の処理などなどやる事は一杯あるけれど……人数が居ればどうとでもなるだろう。
「んぅーヒカルぅ~♡」
可愛らしい寝言をつぶやいてる麗民さんを見ると息子が再度大きくなったし……まだ時間はあるから、もう少し楽しもう
俺は気持ちよさそうに寝ている彼女に覆いかぶさって再度楽しむ事にした。
それから一ヶ月が経過してようやく事務所を用意する事が出来た。
「麗民さんありがとうございました」
「じゃあヒカル……ご褒美に頭を撫でて欲しいピヨ」
「それ位お安い御用です。ではちょっとしゃがんでください」
「……ピヨ♡」
長身な彼女にしゃがんで貰い、俺は麗民さん頭を胸に抱きしめながら優しく撫でてあげると彼女も俺の背に手を回して抱き着いて来た。
いや、……本当に麗民さんには頭が上がらない
事務所はビルの1室を借りる事が出来たし、狭いながらも設備は悪く無いのだ。
コレの名義が麗民さんで実際にお金も彼女から出して貰った訳なのだ。
関暴連の元幹部だった麗民さんの年収は億を超えていた事もあったが……それは以前の話で今はアイドル事務所のマネージャー兼事務員になって貰い、黒須さんは当初の予定通り代表取締役……そして、朝風と雷門はロードマネージャー兼ボディーガードだ。
基本的に2人はカナンと一緒に行動をしてもらい決してカナンを一人にはさせない様にしてもらっている。
基本的にはニコニコと温和である彼らだが、その筋肉は凄まじく……その場にいるだけで厄介な虫は寄って来る事は無いので存在自体が助かるし、何より彼らはその見た目同様体力が並外れているし、上下関係がしっかりしているのだからこの業界……いや、言ってしまえばどの業種でも通用するのだ。
「疲れたぁー!」
スポーツウェアを着て汗をだくだく掻いてるカナンがドアを開けて入ってくると、朝風・雷門も一緒に来た。
「カナンさん……疲れた時こそこの栄養ドリンクがおすすめです」
「さぁ私達を信じてグイっと飲んでください」
二人から渡された栄養ドリンクをげんなりした顔でカナンは見ていた。
「うぅ~朝風さん雷門さんフーミンさんのおかげでまずはネットアイドルに為れたし、すぐさまスポンサーも着いたけど……流石にこの栄養ドリンクは飽きて来たわね」
そもそも朝風と雷門の筋肉は尋常じゃない。
カナンをネットアイドルとして売り出す為には何かしら強烈なインパクトが必要なんだけど……朝風・雷門にもチームとしてカナンのチャンネルに協力して貰っているのだ。
この見事なまでの筋肉を作り上げた以上……二人の知識は本物であるし、カナンの努力をドキュメンタリーな感じでやる事でファンを獲得するって作戦である。
勿論カナンのアイドル適正も問われるが……今現在は朝風・雷門のおかげで登録者数は右肩上がりで伸びてきているし、何より案件も来ているのだ。
どちらかと言えばカナンが今の所喰われている状態で本編がおまけ扱いだが……まぁそれはここからだ! カナンは学校に行っていないのだから時間は思う存分あるし……ガンガン行こうぜ!
「じゃあ私もそろそろ学校に行ってきますね」
「あっ……」
麗民さんの頭を撫で終えると名残惜しそうな声が聞こえたけど……俺も学校に行く時間だし……名残惜しいのは俺も一緒なのだ。
「麗民さんまた……ね」
「わ……分かったピヨ」
そんなやり取りをしていた時だった。
「おはよう……あれ、カミキさん来てたんですか?」
「いえ、もう帰る所です。東阿さんは?」
「ああ……俺は今営業から戻ってきたところだ。……ところでカミキさんは来月一週目の土曜日って空いてますか?」
「来月一週目の土曜日ですか……ちょっと待っててくださいね」
えーっとスケジュール的には……YURIKAには買われて無いし、アヤセも最近は忙しいみたいで遊んでる暇は無いと学校で愚痴られたし、ニノはB小町のライブだけど……今回は誘われて無いし……奇跡的に空いてるな!
「……ええ、空いてますよ」
「それは良かった……ちょっとカミキさんにも手伝って貰いたかったんですよ」
出来る事なら問題無いけど……一体何だろう?
「分かりました。じゃあその日は空けておきます」
「ええ、それでは……」
俺はその時何を手伝うのか詳しく聞いておけば良かった。
学校の授業も終わり……モデル現場に向かい……家に戻ると既にカナンがベットでスヤスヤ寝ているので、起こさない様に電気は付けずにメールのチェック……俺の連絡先を知る人がここ最近やたらと増えてしまいメールを返し終わると既に深夜1時を回っていた。
これ学校があるから助かってるのか……学校に通ってなかったら朝から晩まで仕事して家には寝る為に帰る社畜みたいな生活になって居るのだろうか?
あまり深く考えない方が良いなと思い……カナンが寝ているベットに向かい俺も寝ようと思ったが今日の課題が終わって無い事に気が付いた。
「あ~眠たいけど……やる事はやらなきゃ……舐められるのはだけは我慢できない!」
カバンから課題を引っ張り出して、取り掛かる。
結局俺が寝たのは2時過ぎだった。
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私がカミキの家に来てから一ヶ月が経った。
カミキは芸能人としてモデルや役者の仕事をバリバリこなしているし、夜は定時制の高校に通っているようで、物凄く忙しそうだった。
だけど……朝ご飯だけは必ず私の分も用意してくれていた。
カミキとは時間が合わない事もあるし、私も疲れて起きるのは大体10時を回った時ぐらいだから用意されたご飯はすっかり冷えているけれど……カミキが作ってくれたご飯は不思議と私の胸を温かくしてくれた。
私がカミキの事を知ったのはニノが宮崎から戻って来た後だった。
消えたリョースケを調べる為に私も宮崎に行き、色々当たった結果……最後は違法ヤードにたどり着きそこで悟った。
ああ、リョースケはもうこの世にいないのだと……
その後も調べたら上原清十郎にたどり着き……そこから私の復讐は終わった筈だった。
上原清十郎……過去に関暴連とやり合って勝った男
その後関暴連ではどんな理不尽な目にあっても上原清十郎には逆らうなと言うルールが出来た。
自分の意志で関暴連に入った訳では無いけれど、私はこのルールに逆らうことが出来なかった。
理由はボスの兼平拳一がこの一件で上原清十郎に心酔してしまったからだ。
バランスの為なら殺しも辞さない兼平拳一が私は怖くて怖くて仕方が無かった。
だから……どんな繋がりがあるか調べた結果上原清十郎の後輩であるカミキヒカルが
アイの男だと気づいた。
アイの男であるカミキヒカルを殺害すればアイへの復讐は終わるが……そうなれば上原清十郎が黙っている筈も無く……私は必ず……それも惨たらしく殺されるだろう。
現状打つ手が無くなった私は……与えられたノルマを淡々とこなす日々を送っていた時だった。
ある日偶然街中を歩いていたら映画のCMが流れており、そこではカミキヒカルとニノが出ていた。
ニノは……私が居た『B小町』の時とは違い……私には輝いて見えた。
だから……映画『それがはじまり』を見るきっかけになった。
映画の最後狂気に憑りつかれたニノに滅多刺しにされたカミキを見た時内心ざまーみろと思ったが、それでもニノを助けようと手を差し伸べる姿に私は涙を流した。
そこから興味本位でカミキヒカルの事を調べた。
その時の私は……演技力は凄いけど、苦労を知らない裕福なガキだと思っていた。
自慢じゃないが、私の育った環境は中々劣悪なモノだったし、同じグループの人も大体が似たり寄ったりだけど……そこでは私以上の劣悪な環境で育った子なんて幾らでも居たし、これより下は無いだろうと思っていた。
しかし、調べた結果私の想像を遥かに超える劣悪な環境だった。
カミキヒカル……物心ついた時には親は既に蒸発しており、住んでた部屋は今にも崩れそうなオンボロアパートの元共用便所部屋。
電気も無い、ガスも無い、水も無ければお金が無い
何もない……
彼を守るものは何もない……
親が毒親? ご飯を作ってくれない? 面倒見る?
彼からして見ればなんて贅沢な悩み何だろう……
そんな地獄の様な環境でも……彼は犯罪に手を染める事をせずに出来る事をして生きて来た。
今だってそうだ。
私の為にご飯を用意してくれたり、私の為に苦労してる……
私はカミキに一体何が出来るんだろう?