気が付いたら黒須さんに頼まれた土曜日だった。
日々が忙しすぎて寝ている時が休憩時間と化した俺は果たして大丈夫なのだろうか?……と言うか最近は自分の時間が無さすぎてる。
とりあえず、一日だけでも休みたいけれど……カナンが今売れ時のチャンスなので、ここで手を引く訳には行かない!
とりあえず、事務所に向かうとそこには……
「あっカミキさん! 来てくれると信じておりました」
「ええ! 勿論信じておりました」
タンクトップに半ズボンといつもニコニコ朝風・雷門ペアが出迎えてくれた。
「いえいえ、勿論黒須さんとの約束ですからね。……ところで私は何をすれば?」
何となくではあるものの、嫌な予感がしてならないし……そして、こう言った時の勘ってのは割と当たるものだ。
「カミキさん……コスプレに興味は無いですか?」
黒須さんはそう言うと奥から段ボールを抱えて現れた。
いや、モデルだからコスプレぐらい頼まれるし勿論やるよ。だって仕事だし、需要はあるからね。
「……興味は無いですけど、仕事としてなら受けますよ」
「それは良かった。それではカナンに化けてYouTubeに出て貰って良いですか? ここで役者としてのカミキさんに頑張って貰えれば更に登録者が増えますからね」
世の中そんなに甘くは無いと思うけど……まぁやるだけやってやるか!
「……どこまで力に為れるか分かりませんけど、分かりました。やりましょう!」
時間は有限だしとっとと片付けて今日はもうゆっくりするんだ。
「じゃあカミキさんこれ」
黒須さんから渡された物は……赤い純白の巫女服にキツネ耳のカチューシャ
「何故巫女服にキツネ耳?」
「えー、コスプレは何だって良かったんですけど……純粋にカナンがカミキさんの巫女服を見たかったみたいで……」
思いっきりカナンの私情ではあるが、この前のモデルでキツネ耳の巫女服やったらかなり反響があったし……まぁ、やるだけやるか……
「あと、それだけだとパンチが弱いし、カナンの為にも頑張って歌ってくださいね」
ちょっ……それは聞いてねーぞ!
俺が内心ツッコミを入れていたら、麗民さんも来て歌のリクエストが書かれた紙を渡された。
「今は歌ってみたとかが流行ってるピヨ。だから、ここに書いてある有名どころのアニメを全部お願いするピヨ」
いや、結構な数だし! 中には『Gamble Rumble』や『refulgence』と言ったアイドルが歌うような曲じゃない物も混じってるだけど……まーリクエストじゃあ……しょうがない
「……分かりました頑張って歌います」
「流石カミキピヨ! じゃあ生ライブで流すピヨ」
それは聞いて無いぞ!
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「これは……凄いピヨ」
「ああ、想像以上だ。今回の配信でどれだけ収益出たんだ?」
「とんでもないレベルの投げ銭がされたピヨ」
「カミキさんに渡したリストはもう歌い終わった筈だけど……まさか投げ銭込みでリクエストが来るなんて……」
「今歌ってるのは北斗の拳の『SILENT SURVIVOR』だけど……視聴者は一体何を求めてるピヨ」
「それは分からないけど……高い金額で投げ銭されてる以上は歌って貰わないとな」
「かれこれ2時間位歌ってるピヨ」
「じゃあ……次のリクエストは~『Red fraction』……と言うかもうこれで最後だからね!」
「おおっと次のリクエストが決まったようだ。フーミン」
「わかったピヨ!」
「~~~!」
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流石の俺も疲れた。
2時間のソロライブって一体なんだよ! 今日は仕事自体休みだからもう帰るぞ
「じゃあ、私は帰りますよ」
「あっカミキさん! 今日はありがとうございました。 今日だけでかなりの金額が稼げたけど……ちょっとやりすぎじゃないですか?」
確かにちょっとやり過ぎた部分はあるけど……歌に関してはカナンなら問題無いだろうという信頼がある。
「カナンなら大丈夫ですよ。何せ私みたいな偽物でも出来たんです。本物に出来ない道理はありません」
「……偽物? まーカミキさんがそう言うなら、じゃあコレはお礼です」
黒須さんはそう言うと分厚くなった封筒を渡してくれた。
それは感覚的には100……いや、200近くはありそうだな。
「ありがたく頂きます」
とりあえず、やるべきことはちゃんとやったし……後は引っ越しの為にも、物件も探さないとな。
今はニノに我慢して貰ってるが……今月中には引っ越さないと、良い物件があれば良いけど芸能人であることから、セキュリティーがしっかりしているところを探さないといけないし、まさかそんな事を考慮して物件を探す事になるなんて、俺も変わったものだ。
そんな事を考えながら、バイクに跨って帰路着いた。
「ただいま」
玄関を開けて部屋に入ると、カナンがエプロンを付けて料理を作っていた。
「お……お帰りカミキ! ご、ご飯にする? お風呂にする? そ……それとも私にする?」
まるで新妻みたいな事やっているけど……聞けばカナンは俺の一個下だから、手を出すのはどうなのかと考えてしまう?
いや、誘われている以上は男なら行くべきなんだが……顔を赤く染めて、若干体を震わせている以上は中々判断が難しい。
「……もし、カナンが本気であるなら私は答えますけどどうします?」
「……バカ。こんな事冗談で言わないもん」
「分かりました。とりあえず……お風呂入ってきます」
「うん……待ってるね」
さっきまで手を出すのは~なんて考えて居たのに今じゃあカナンを抱きたいと考えて居るんだから、俺も大層度し難いものだし……このままいけばロクな死に方しそうにないな。