俺が有馬の家に急いで着き、すぐさま有馬に電話して家に入れて貰うと有馬の両親は激しい言い争いをしていた。
「アンタみたいな収入が少ない人と結婚なんてするんじゃなかったわ!」
「ふざけるな! 俺が仕事をしていたからこそ生活が出来るんだろが!」
「仕事仕事って……いつも偉そうに言うけど、家の事は何もしないし、かなの面倒なんて見た事無いくせに!」
「家と子供の面倒を見るのは女の仕事だろうが! それに知ってるんだぞお前がかなのお金でホストクラブで豪遊してる事をなぁ!」
「くぅ……あんただって会社の部下を相手に不倫してるじゃないの!」
「しょ……証拠でもあるのか!?」
「そっちだって証拠はある!?」
両者一歩も引かずに言い争いはどんどん激化していく
「カミキ……私どうすれば……パパとママが喧嘩してるとこなんて……みたくないよぅ」
大粒の涙を零しながらも俺に懇願してくる有馬だけど……これはもうどうにもならないレベルだ。
早いか遅いかの話になるが最後の言葉は決まってるが、一旦ここで止めに入るか……
「二人ともそこまで!」
腹の底から大きな声を出したおかげで……二人の言い争いは止まったが、ちょっと出し過ぎた所為で耳がキーンとなってしまったかも……家と言う狭い空間だからってのもあるが、俺が突然やった事で3人共動きが止まってしまった。
少しして聴覚が戻ったようで、有馬の母親・父親共に落ち着いたようだ。
「もう耳は大丈夫ですか?」
「あ、ああ……私は大丈夫です。君は一体……」
「奥さんはお久しぶりですが、ご主人とは初対面でしたね。私は役者をやってるカミキヒカルと申します。え~有馬かなさんから喧嘩を止めて欲しいと連絡があり、飛んできました」
出来れば家庭を築いてる上原パイセンと愛梨パイセンも連れて来たかったけど……二人が何を言い出すか全く分からないし、『今この場で仲直りのセックスをしろ』とか平気で言いかねないので、流石にそれは有馬にとって一生物のトラウマになってしまうから呼ぶのは断念した。
「そ、そうですか……」
それに納得出来たのかは分からないが……納得出来ないようならさっきの倍の声量で納得して貰うまで説明してやる!
俺が内心でそう思っていたら二人とも先ほどまでとは打って変わり、大人しくし始めた。
うん……やれば出来るじゃねーか!
さて、じゃあ話し合いをするとしよう……
「……有馬さんこれから私は酷な事を言います。……まずこの状態から元の仲良しの状態になる事はありません」
「そ、そんな……」
いや、俺が当事者なら普通にセックスに持ち込んで解決出来るし自信があるし、そもそも言い争いになんかならないからなぁ~
「……なので有馬さんは選ばなければいけません。有馬さんは一体誰と暮らしたいですか? ホスト狂いの母親ですか? それとも仕事だけして家の事は何もしない父親ですか?」
「「……ッ!」」
2人とも動揺してる所申し訳ないけど……子供の前で言い争いをしていた訳だし、有馬には悪いけど原因を改めて言うのは正直胸が痛いのだ。……しかしこればかりはもう誤魔化しは出来ないし、受け入れざるを得ないのだ。
有馬の母親は撮影現場でちょくちょく会っていた事から、俺も挨拶がてらに何度か話したことがあるから、ある程度人間性は把握してるつもりだし、良くも悪くも普通なのは見て分かった。
まー美形の男が好きみたいで、お近づきになりたいと思うのは至って普通の感性だと俺は思うし……正直人妻じゃなかったら俺も手を出しても良いかなって思っていた。
そして、父親の方を見ると……これまた普通なのが見て取れる。
普通の人が浮気なんてする筈が無いと思う人は居るけれど……近寄るのは男からだとは限らない。
若い頃から遊んでる人間ならば勘ずく事もあるが、普通の人は恋愛上手な訳では無いので、美人局に引っかかるものだし……そう言った事件が無くならないのがこの世の中を物語っている。
さて、母親は……家事と子供の面倒で自身の許容量超えてしまっていた部分と父親からのフォローが無いのが原因だ。
家事なんて……俺から言わせればやって当然出来て当たり前位のものだけど、結婚するまで実家暮らしの人が果たしてどれぐらい率先してやっていたかと言えば、ほとんどやる事は無いだろな。
大体が親に言われて渋々手伝う位で、率先して家事を手伝う人は相手を思いやる人ではなく、現実的な思考が出来る人達だけだ。
良い悪いは置いといて、自分達が楽をする為に一人に押し付けるって考えは決して無くなる事は無い。
日本で言えば『大一大万大吉』と言う言葉がある。
意味は『万人が1人のために、1人が万人のために尽くせば、政治や国家は良くなる』ああ、なんて素晴らしい言葉だ……
これを考えた奴はさぞ頭の中がお花畑だったに違いない。
悪く考えれば万人の為に1人を犠牲にすれば良いのだから、これほど使い勝手の良い言葉は存在しない。
何せ自分に当たる確率は1万分の1だから、まず自分に当たる事なんて無いに等しいけれど……当たったら最後1万人分の地獄を味わう事になる。
おっと思考が逸れたが……ようは有馬の家庭は押し付けてきた結果爆発してしまった訳なのだ。
そう言った訳で……家事を重荷と捉えてるこの二人は普通に裕福な家庭に育った普通の人達なのだ。
そんな普通の人達が大金を見たらどうなるか?
それがこの結果だ。
遊びを知らない女性はホストに嵌り、仕事一筋であった男性はそれに不満を抱き別の女に走る。
結局の所愛は金じゃあ買えないが、金が出来れば(無くなれば)愛は無くなるのだ。
「これは……有馬さんが選ばなきゃいけない問題です」
「わたしが……わたしがえらぶの!」
元々赤い有馬の目は涙で更に赤くなっており……声を震わせながらも有馬は告げた。
「……で、その結果今大人気な天才子役様を連れて帰ってきちゃったと……カミキは優しいねぇ~」
カナンはそう言うとジトッとした目で俺の事を見ている。
「……ヒカルさん……? まさかこんな小さい子に手を出すなんてしませんよね!?」
ニノは目からハイライトを消して怖い事を告げる。
「あの……一体私を何だと思っているんですか?」
「「女たらしのカミキヒカルです(だよ)」」
二人は同じタイミングで言って来た。
全く仲のよろしいことで……
「……か、カミキって女たらしなの!」
信じられないって顔をして俺の顔を下か見上げているけれど、俺の膝の上から降りようとしないどころかコアラの様に抱き着いて離れない有馬
「ええ、そうですけど……それが何か?」
「私のパパの事カミキは文句言えないじゃない!」
いや、言えないって言うかパパさんに関しては何も言ってないぞ?