カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

52 / 206
そして第40話の時間軸に戻ります。
つまりカミキは大学2年生です。


第52話

 東大に進学してはや一年が経過した……

 アクアは元気にしてるかなぁーなんて思っていたら、久しぶりにアイから電話があり話を聞くとアクアが子役になったは良いもののロクな役を貰えなかった事にアイが不満を爆発させたようだけど……こいつモンペか? と正直頭に浮かんでしまった。

 聞けば家で演技の練習をしているようだけど……ちゃんとした誰かに教わる訳でも無ければ独力で演技が上手くなるなんてことはまずありはしないのだ。

 そして、子役程難しい職業など無いだろう……

 

 求められる年齢もそうだが……子供故に台詞が飛ぶのは当たり前だし、そうなれば現場はピリつくの仕方ないにしても、何よりプレッシャーがきついのだ。

 

 それゆえに子役で成功出来る子は並外れた精神力かはたまた素晴らしい才能の持ち主しかいない。

 大輝君はパイセン達の子って事もある所為か、とんでもなく度胸がある。

 有馬は才能もあるが……子供ながらに努力に努力を重ねているので、結果が出るのは当たり前って位だ。

 

 俺の子役時代はアクア同様に殆どがエキストラで偶に端役位だったなぁ~

 文句なんて言った日にはすぐさま別の子にエキストラさえも盗られて居ただろうし、実際にそう言った子を見て来た訳だから、文句を言える立場ですら無かった。

 寧ろ何がアウトで何がセーフなのかの基準を調べる為に常に観察していた位だし……ボンクラな俺はそうやって生きて来た位だ。

 

 ま……アクアの演技を見た事が無いからちょっとばかり見てみたいけど……悲しい事に共演する事は恐らく無いだろう。

 

 そんな事を考えながら今日の授業は終わったので、この後はララライに顔を出すとしよう!

 

 愛用のバイクに跨って俺はララライに向かった。

 

 

 ララライに着きバイクを停めて中に入ると大勢の人が居た。

 

「おはよう……あれ? 今日って何かイベントでもやってましたか?」

 

 入口に居た暇そうな劇団員に声を掛けてみると……

 

「カミキ先輩おはようございます。今日はうちのテストの日ですよ。カミキ先輩聞いて無かったんですか?」

 

 そう言われてスマホを見て見たけど……俺には連絡は来て居なかった。

 

「……最近は忙しいですし、劇団の人数が増えた所で私に何か出来る事はありませんからね」

「ちなみに……金田一さん言ってましたよ。カミキ先輩にサクラをやらせるって……」

「そんなこと言われても私何も聞いてませんよ?」

 

 ……いきなり無茶過ぎるだろう!

 

「ああ、だが今聞いたろ? 早速で悪いがお前が一番手だ……うちのレベルの高さを見せて来いよカミキ先輩?」

 

 後ろから声が聞こえたから振り向くとそこにはめんどくさそうな顔をしている金田一さんがおり、俺は肩を掴まれてズルズルと引きずられて行った。

 

 劇団ララライ恒例の役者オーディションで篩にかけると言えば聞こえが良いが要は半端者を門前払いする為に実力者を出して、大多数の応募者の心を折る……金田一さんが考えたイカれた審査方法だ。

 いや、確かにこれが一番手っ取り早いし、納得いかずに暴れる人が居ても上原パイセンが居る以上どうにもならないから帰るしかない。

 

 そう考えるとこれは最良の方法なのかもしれないな!

 

 

 

「良し! 時間になったから早速オーディション始める」

 

 別にやるのは構わないけれど……一体俺は何をやらされるのか、不安で仕方が無い

 一番のゼッケンを付けて大多数の前で立たされている俺は内心ため息を吐きだしていた。

 

「じゃあ……お題は入口で配っていたプリントに書かれている『お祭』だ。役に関しては特に指定は無しで、これだと思うものを3分演じてくれ! それでは一番の人からスタート」

 

 え!? 役の指定無しで『お祭り』? 無茶ぶりにも程があるけど……面白いじゃねーか!

 

 俺は取り合えず立ち上がって、腕まくりをして、頭にタオルを巻くような仕草をして……

「へいらっしゃい! うちのたこ焼きは美味しーぞ。おっそこの可愛いお嬢ちゃん! どうだい! たこ焼き食わねーか? 今ならサービスするぜ!」

 

 隣に座っていた小学生ぐらいの女の子を問答無用で巻き込む。

 突然の事に女の子はあわあわし始めたが……まだまだ劇は始まったばかりだ。

 

「お嬢ちゃん……一人かい? 親御さんはどうしたんだい?」

「わ……わたしはぐれちゃって!」

「おっとそりゃ大変だ! とりあえずたこ焼きでも食って元気だしな!」

 

 エアたこ焼きを女の子に渡すと既に彼女は限界を超えたようでテンパり始めていたが即興劇ってのはテンパり始めてからが一番面白いのだ。

 

 女の子は慌てて食べ始めたから、俺は当たり前の事を言う

 

「オイオイお嬢ちゃん! 出来立てだからそんなに慌てて食べたらやけどしちゃうぞ!」

「あっつーい!」

 

 女の子は思い出したかのように叫ぶびそこでようやく……

 

「ああ、見つかって良かった」

「大将迷惑かけたね」

 

 その隣の人も意図を読んでくれた様で乗ってくれた。

 

「いや~大した事無いよ! お代は¥200で構わねーぜ」

「「金取るんかーい!!」」

 

「そこまで!」

 

 オチが着いたところで丁度時間になり、金田一さんからストップが入った。

 

 出来れば後3.4人位巻き込みたかったけど……3分じゃこれぐらいが限界だな。

 

「今の4人は合格! じゃあ……次の方どうぞ!」

 

 即興故に雑味があったのは否めないけれど……それも踏まえてこう言ったのは楽しいものだ。

 他人の世界に引き込まれながらも、何を求められているかを棒読みではあったけど答えられた女の子は良かったし、出来ればもうちょい早く飛び込んで欲しかったけど……最後の二人も親を選んだのはベタだけど……それが良い!

 

 まぁー他にも劇団のサクラが混じってるからある程度は方向性を持ってやれるだろう

 

 

 

 

 次の日

 

「劇団ララライに所属になりました黒川あかねですよろしくお願いします」

 

 この間の女の子は自己紹介を終えて俺の顔を見ると驚いた表情を浮かべて俺の方にすっとんで来た。

 

「お、お兄さんも今日から所属何ですから挨拶してください!」

 

 黒川あかねの言葉に周りの劇団員は笑いを堪えているのか下を向いてるけど……

 

「……そうですね。では改めまして新入りのカミキヒカルです皆さんよろしくお願いします」

 

 俺がそう言った瞬間満足そうにした黒川あかねだけど……

 

「黒川……そこのバカは役者歴13年でお前の先輩だぞ」

「ええ~! そうだったんですか!」

 

 金田一が早くもネタ晴らしをしてしまったがこれはこれで面白かったから良しとしよう。

 

「あの……私はみたのりおって言います。皆さんよろしくお願いします」

「私はとまとジャンです」

 

 のっぺりした感じの女性がとまとジャンでサラリーマンみたいにきっちり七三分けなのがみたのりおね……これって本名じゃなくて芸名だよな?

 ちょっと首を傾げてしまったが……中々個性的な役者の卵が加入した瞬間だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。