かなと一緒にカフェで寛いでる時だった。
「カミキヒカルゥゥー」
ドアをバァン! と思いっきり開けて俺の名前をフルネームで呼んできたやべぇー奴がヅカヅカと歩み寄って来た。
「な、何よ一体!?」
かなは思わずびっくりしてしまったようだけど……
「何か用でしょうか姫野さん?」
「なっ! この私がわざわざ会いに来たんだからもっと喜びなさい!」
そんな事言われたって……お前が来るときって面倒事ばっかりだから嫌なんだよな
俺が内心ため息を吐いてるとかなは怪訝な顔をして聞いて来た。
「カミキこの女性は誰よ?」
「ええっと……こちらは「私は姫野千佳! 国内トップの天才ピアニストですわ!」……だそうです」ところであなたは有馬かなさんですよね?」
「……ええ、私の事知ってるの?」
「勿論ですわ! 貴方の演技は正に天才そのもの! この私姫野千佳が認める凄いものでしたわ!」
おお、この高飛車お嬢様の姫野がこんなに絶賛するなんて……まぁ確かにかなの演技力は大人顔負けだし、成長すれば愛梨パイセンを超える可能性はあると俺は見ている。
「ふふん……良く分かってるじゃない!」
「勿論天才は天才を見抜きますわ!」
褒められて嬉しくない人は居ないし……かなも嬉しそうだったが……
「……ところで姫野さん私に何か用があったんじゃ?」
「そうでしたわ! カミキヒカル……あなた今年もミス東大にエントリーしてますけどどういうつもりですか!?」
え?! 知らんがな!
「……あの……なんで、私がまたミス東大に?」
「私のサークルの連中が騒いで居たから事の真相を確かめに来ましたの!」
腰に手を当ててドヤる姫野が憎たらしいが、背筋を伸ばしたおかげか大きなメロンが反動で揺れてとても眼福だが、それとは別に……
またか! またピアノサークルの連中の所為か! あいつらは本当に邪魔ばかりしてきやがる! あいつらは事あるごとに俺にいちゃもん付けてきやがるから正直かなりムカつく!
ある時は『金髪のチャラ男が東大に通うなんて品性を疑います』って文句を言うし、またある時は『学力が低い金髪チャラ男が居ると迷惑だって気が付かないんですか?』とかまー色々言って来るから……テストだって20位以内には入る様に努力してる。
しかし、文句を言ってくるピアノサークルの奴らは200位以下で、俺よりも忙しい姫野だけは50位以内に入ってる事から、姫野は間違いなく天才なんだよなぁ~
ちょっとあっぱっぱーだが、決して悪い女では無く、スタイル抜群で顔も美少女なのがそそるんだけど……やっぱりあっぱっぱーは擁護出来ねーな。
そんな事を考えて居たらジト目で俺の事を見ながらメロンソーダをストローでズズッっと吸ってるかなに気が付いた。
「どうかしましたか?」
「……この人カミキの女?」
「ちょ……有馬さん!」
かなの発言に滅茶苦茶動揺して姫野は顔を赤くしてしまったけどだけどそんな分かりやすい反応すれば……
「カミキの女たらし!」
まーバレるよな……
「……否定はしません」
いや、だって……こんな可愛い子がウザがらみしてくれば俺だって我慢出来ないし……やる事やってしまうのは仕方ないのだ。
「……で、ミス東大はどうするんですの?」
「出場取り消しは?」
「もう取り消し不可ですわね」
はぁーあいつら本当〆てやろうかな?
「……わかりました。やるからには優勝目指します」
役者の本気を見せてやる!
「とりあえずニノとカナンには報告しとくからね」
かなの死刑宣告は無視したいけど……それはそれで不味いから、今日帰ったら二人とも足腰立たない様に分からせないとな!
「それでこそカミキヒカルですわ! じゃあ早速こちらのメイド服を……」
姫野はそう言うと嬉しそうにメイド服を取り出したけど……姫野お前やってんな!
「姫野さんカミキのメイド服って……ヤバくない?」
「ええ! カミキヒカルは元の素材が良いので何でも似合いますし……捗りますわね!」
一体何が捗るって言うのだろうか……詳しく聞きたい所ではあるけれど、墓穴掘りそうな気がしてならないな
こうして俺は授業が始まる時間まで姫野の手によって着せ替え人形のごとく何着もの服を着る羽目になった。
今日は一日が長く感じる日だった。
かなを連れてようやく家に帰宅するもニノとカナンはまだ帰っていないようだし……今のうちに掃除や夕食の支度もしなくては……
「お風呂掃除しちゃいますから、終わったらかなは先にお風呂に入る様に」
「分かったわー」
そう言うとかなはソファーで寛ぎ始めたから今のうちにやるべき事をやらないとな!
そんな時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴り響いた。
時刻を確認すると17時を回った位だから……アクアとルビーかな?
ドアを開けると案の定アクアとルビーと雨宮さんも居た。
「やあ、ヒカル君! それじゃあ、アクアとルビーの事お願いね」
「勿論です」
雨宮さんは申し訳なさそうにしていたけれど……俺としてはやっぱり子供達の事が心配だからこういう時は頼ってくれた方が嬉しく思う。
「パパ抱っこして!」
「……今から掃除するのでおんぶでお願いします。ルビーはかなと遊んでてくださいね」
「はーい」
アクアは俺の背中に飛び着くとそのまま大人しくなるから良いけど……ルビーはどうなのだろうか? 特にかなと親しくしている訳では無いけれど……気まずいような関係でも無いし、こっちに居る時はアイが出てる番組を目を皿の様にして見て居るけど、飽きないのだろうか?
うーんアイドルを追いかけるファンの心理ってのは俺には良く分からないけれど、来年は小学生になるんだから、少しばかりは勉強した方が良いんじゃないかなっと思いながらも俺は掃除を熟していた。
「パパ……どうすれば僕もかなちゃんみたいに売れるようになるかな?」
アクアは突然そう呟いたけど……
「……中々難しいですね。今アクアは誰かに演技の指導して貰ってますか?」
「うん……ママの知り合いの五反田監督って人に演技を教えて貰ってるんだけどね。まだ全然仕事が増えないの」
アクアの演技は見た事が無いから何とも言えないし、そもそも五反田監督の指導も適切かどうかも分からないから何とも言えないけれど……演技指導をされたからすぐさま売れる程役者の世界は甘くないのだ。
そもそも、舞台に上がるのだって大変だしそこで結果……もとい爪痕を残さないと次に続かない訳なんだけど、女の子はかなが居るし、男の子は大輝君が活躍中だからハッキリいうと子役は今の時代はかなり厳しいだろうなぁ~
そう言えば黒川だって演技は良くなってきているけど……引っ込み思案の所為かコミュニケーション能力はそこまで高く無いから難しいし、同じ劇団員として……いや、先輩として仕事も回してあげないといけないけれど、俺が今出てるドラマって子役必要として無いからなぁ~
「……役者はすぐに売れる物では無いですからね。才能の有無はありますが……やっぱり練習あるのみですよ。だからアクアもが……」
っと……危ない! 頑張ってる子にもっと頑張れは逆効果って話だから気をつけないと
「パパ?」
「稽古を続けてくださいね。それが一番の近道ですからね」
「……分かった。頑張る! 僕ピーマンなんかに負けないもん」
良い返事だが……ピーマンって一体何のことだ?