会った事も無いお父さんとお母さんへ
今お元気ですか? 私は今……宮崎に車で向かっております。
もうかれこれ5時間程高速道路をかっ飛ばしておりますが……まだ1/3も超えておりません。
外の景色は代わり映えのしない風景であり、最初の一時間は良かったのですが……今ではもう地獄以外の何物でもありません。
唯一の楽しみがサービスエリアでの食事位しかありません。
やはり……飛行機で行くべきでした。
「カミキ~もう少しでサービスエリアに着くぞ~」
恐らく死んだような目をしている俺とは対照的に上原先輩は元気いっぱいだった。
「……分かりました。着いたら起こして貰って良いですか?」
「おう!」
力強い返事ではあるけど……何でそんなに元気なんだろう?
俺には理解出来なかった。
「……カミキ? サービスエリアに着いたぞ!」
体を揺さぶられる感覚があり、目を覚ますと車は既に止まっており目の前には商業施設があった。
「あ……パイセンありがとうございます」
俺がそう言うと上原パイセンはニカっと笑いながらもここのサービスエリアに着いて教えてくれた。
「おう! ところでカミキここのレストランなんだが……海鮮丼が結構うまい見たいで口コミなんかも評判良いみたいだぞ」
「そうなんですか? じゃあ食べてみたいです」
パイセンはそう言うと高速道路のサービスエリア特集を見ながら説明してくれたけど……これが付箋だらけで物凄い事になって居た。
食事のおすすめから始まり、お土産コーナーにおいても何が特産品なのかもあらかじめ全て調べ切っているのだ。
これがモテる男の執念なのだろう……
そして、この努力を見てしまった以上俺はどうして飛行機で行きますと言えるのだろうか? ……いや、実は一回言ったんだけど、その瞬間ゴットファーザーの愛のテーマを愛梨パイセンがとびっきりの笑顔で歌い出した時はびっくりした。
まさか経った一日でここまで調べて来るとは思いもしなかったし……
そんな事を考えつつ、パイセンと一緒にレストランに入ると……平日なのに家族連れも多くいた。
「……以外と家族の方々が多くいますね」
「ああ、ここはちょっと有名なサービスエリアだからここを目当てに来る人たちも多いけど……その分夜はガラが悪い奴も来るから気を付けないとなぁ~」
上原パイセン? ニヤって笑ってますけど……血の気が多いよ!
「……とりあえずメニューを見ましょうか?」
俺がメニューを取って見ると色々な種類があるものの……やはり目を惹くのは海鮮丼だった。
そして、金額はサービスエリアって事もあり、お値段も割かし高めの気がするが……まぁ、稼いでいる訳だし問題は無い。
問題なのは……
「……ところでパイセンってウニ好きですか?」
「ああ、好きだけどどうかしたか?」
俺ウニ苦手なんだよなぁ~
前世で親が美味しそうに食っていたから、少し食べてみたけれど……俺の口には合わなかったのだ。
そして、何故こんな質問をしたかと言えば……
どの海鮮丼もウニが入っているのだ。
「パイセン……ウニ食って貰って良いですか? 俺ウニ苦手なんですよ……」
「そ、そうなのか!? まーウニは俺が食べてやるから……他に何か嫌いな物あるか?」
「……いえ、後は大丈夫です」
「そっか……ちなみにサーモンとかはイケるのか?」
「それなら大丈夫です」
「良し! じゃあ俺のサーモンとカミキのウニで交換な」
「ありがとうございます」
そんな事もありながら俺とパイセンは海鮮丼を食べ始めた。
ここの海鮮丼は実にうまかった。
腹も膨れた事だし、一旦車に戻って俺とパイセンは仮眠をとる事にしたのだけど……
パイセンがレストランで言っていた夜はガラの悪い奴がいるって話を思い出したのは寝て起きてすぐの事だった。
車のドアをガチャガチャしてる音で起きてしまった俺は……窓を見ると2、3人の男がこっちを見ていた。
「上原パイセン起きてください!」
俺が横で寝ているパイセンを起こすとパイセンはすぐさま起きて……無言でドアを開けて外に出てしまった。
「おいボコボコにされたくなぎゃぁぁ!」
相手はドスの聞いた声で喋りだすも、上原パイセンは有無を言わさず相手のこめかみをぶん殴った。
相手は一発で地面に沈んだまま起き上がって来ない
一撃で大の男を仕留めて見せたのだ。
輩達の表情が一気に青ざめた瞬間だった。
上原パイセンは倒れた相手の……恐らく肩を踏み抜いた。
その瞬間まるでポッキーが折れたような渇いた音が響いたと思えた瞬間。踏まれた輩の絶叫が響いた。
「ああああああ」
「やべー!逃げるぞぉぉぉ」
「で、でも……」
後の二人はすぐさま逃げようとするも上原パイセンの行動が早く二人の両肩を掴み一言呟いた。
「逃げたら殺す」
上原パイセンの言葉を直に聞いた輩達は俺の方を見て助けを懇願するけど……
いや、無理です。だって……パイセン目が本気なんだもん。
俺にはどうする事も出来ないのでそっと目を逸らした。
輩達は何もしなければ自分たちがどんな目に合うか分からない為、2人揃って抵抗しようとするも……上原パイセンって握力100キロ位あるみたいなので、そのまま2人の肩を握り締めながらトイレのある場所に引きずって行ってしまった。
1時間後にはスッキリしたのか……晴れ晴れとした顔をして上原パイセンが戻って来た。
「悪いカミキ遅くなった! これお小遣いな」
上原パイセンはそう言うと万札をくれたけど……深く考えないでおこう
「あ、ありがとうございます。……ところで地面に寝ているこれはどうしますか?」
「ああ、これの友達に言って来たから大丈夫だ」
恐らくトイレの個室で今頃泣いてると思うけど……ボコられるのと掘られるのどっちが良いかとか究極の二択過ぎる。
「いやーやっぱり旅って言うのは中々良いよなカミキ! 美味い飯に上質な睡眠に刺激も有って性欲も解消できる!」
いや、そんなに嬉しそうに言えるのは上原パイセンだけだから!
「……そ、そっすか……」
「ところでカミキそろそろ本題に入ってくれないか? 俺はカミキとどんな形であれ旅行に行けて物凄く楽しいけど……今回の旅行目的は一体なんだ?」
まだ一日も経っていないけど俺自身はお腹いっぱいの出来事なんだけど……なんで上原パイセンはアトラクション気分なんだと思いつつも、最終的にはリョースケからゴローを守るのが目的だけど……二人ともあった事無いから、今は何とも言えないし、とりあえずは……
「……実はアイが俺の子を妊娠しており、宮崎の高千穂ってところにある病院に出産の為入院してまして……」
「ほうほう」
「……別れている状態ではあるものの、生まれる赤ちゃんを見に来ないかと言われたので行くことにしました。まーよりを戻す訳ではないですけど……」
「お、おう……なんて言うか……アイちゃんって独特なセンスがあるな……」
上原パイセンも首を傾げて思わずそう言ったけど……俺から言わせて貰えばパイセン達の方が独特過ぎて理解が出来ない部分があるけど……
「……凡人には理解できないのが天才ですからね」
「そうだな……俺もピカソの絵に関しては何が凄いのかさっぱり分からないし……」
うんうん頷いてる上原パイセンだけど……あんたもとある分野に置いては十分天才だからね?