カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第61話

 かなの劇団入り自体は概ね問題無いけれど……一点忘れていたことがあった。

 

「そう言えばかなの事務所的にはこういったのはどうなんですか?」

「……そうゆうのは全部お母さんがやってくれてたから良く分からない」

 

 そりゃ契約内容なんて大人でも覚えている人は居ないのだから、子供であるかなならなおさら分からないだろうし……ママさんがやっていたのなら特にそうだろう。

 

「おいおい、まさか事務所には許可取っていないのか?」

 

 金田一さんは驚いた様子で聞いて来たけど……

 

「まぁーララライにはまだ入った訳ではありませんから……問題は無いでしょう。とりあえず後日かなの事務所に行って話を付けてきます」

「そうだな……うちにはまだ入った訳じゃ無いし、決まったら教えてくれよ」

「分かりました。ではかな帰りますよ」

「う……うん」

 

 俺はかなを連れて帰ろうとした時だった。

 

「おはようございます」

 

 丁度黒川が入って来た。

 

「黒川さんおはようございます」

「カミキさん!……それにかなちゃ……ううん! 有馬さんも……どうしたんですか?」

 

 なんか黒川の様子がおかしいけど……ま、大した事無いだろう

 

「あんた結構前に出来レースの子役オーディションで会った子よね?」

「……あんなの私は認めない! オーディションは公平に行うべきだもん!」

 

 黒川にとっては信じられない光景だったのかもしれないが、大抵のオーディションなんかは殆ど出来レースだから演技力以外が問われるもんだけど……そう言うのを知らない純粋な子は黒川みたいに傷つくのだろう。

 しかし、公平ってのは一体何を持って公平と判断するのだろうか?

 審査員だって人間である以上気に入った子が居ればそっちに気持ちが揺らぐわけだし、演技は出来ても愛想が悪い奴を使いたいなんて思う訳が無いのだから、如何に自身を良く見せて審査員を口説き落とすかが重要になって来るのだ。

 それに審査する人間を事前に調べるなんてのは常套手段なので、相手に喜んでもらえるように賄賂を贈るなんてのは何処の世界でもあり得るのだ。

……今でこそ無くなったと思うが、ひと昔前だと本命の役者を拉致ってボコるなんて事もあった訳だし、芸能界は怖い世界なのだ。

 しかし、勝つためならどんな手段も厭わないってのは個人的には好感が持てる。

 単略的に考えて暴力に走っただけなら非難されても文句は言えないが、正攻法で成り上がれるほど芸能界は甘くも無いのが事実だし、必要とあらば相手の粗探しも行う必要があるのだ。

 売れるのに必要なのは実力だけで無く身銭を切る覚悟も問われる。

 まーやり過ぎると枕だなんだって事になるんだけど……まぁそれは本人が好きでやってるのならば第三者がとやかく言う事では無いな。

 

「……黒川さんにはオーディションの勝ち方を追々教えてあげますから……」

「この子は真面目だから無理だと思うわよ?」 

 

 余計な事を言わないの!

 

「……カミキさんは出来レースみたいなオーディションをどう思いますか?」

「特には何も思いませんけど……そもそもの話ですが知名度の無い人よりは有る人の方が有利なのは当然じゃないですか? ドラマにしろ映画にしろお金がかかってますから成功する確率が高い方を選ぶのは当たり前ですので、そんな中わざわざ時間を割いて審査員はその基準を超える新人を探すのですから期待に応えられない人が悪いのです」

 

 とは言え、審査員だって新人を取るにはリスクがある訳だ。

 スポンサーから文句を言われるぐらいならまだましだが……最悪スポンサーが離れてしまえば目も当てられないのだから、こればかりはどうにもならない。

 

「では黒川さんに一つ質問しますけど良いですか?」

「ど……どうぞ」

「もし、仮にドラマの主役のオーディションがあった場合『B小町』のアイと『劇団ララライ』のニノがオーディションを受けたとしたらどっちが受かると思いますか?」

「……ニノさんには悪いけどアイさんが受かると思います」

 

 黒川は悲しそうにそう言うけど、残念ながらそれは有り得ないんだよ。

 

「正解はニノが受かります」

「な!……何でですか!」

「ニノが受かる理由は『劇団ララライ』に貸しを作る事が出来るからです」

「それってニノさんの演技力は関係無いって事ですか?」

「いえ、別段ニノがアイに明確に劣っている訳ではありませんが、アイを起用するよりもニノを起用する方がメリットが大きいのです」

「どういうことですか?」

「アイが凄ければ凄い程……アイに変わる人材はあそこの事務所には居ません。しかし、こっちはニノを起用すれば次回は『姫川愛梨』をバーターで利用できるのでそっちの方がメリットがありますからね。なのでオーディションは個人の実力だけでなく受けた人間の人脈も重要なのです」

 

 仕事を回す以上は先輩として責任を取らないといけないし、この場合の責任は相手の要求に答えるのが筋なのだ。

 

「なのでオーディションは受かって当然ではあるものの、それは当然結果を出す事が求められます。黒川さん……あなたは絶対に結果を出せますか? 少なくともかなはそのプレッシャーの中で結果を出して来ました」

「当然じゃない! 私は天才子役の有馬かなよ」

 

 鼻をフンスと鳴らすかなだけど……まぁーこればかりは凄い事だから思う存分誇っていい事だ。

 

「……だって……私だって! チャンスがあれば行けます!」

 

 そうだなぁ~チャンスが無いってのは流石にアレだし……黒川だって劇団ララライに入って数年経過してるんだからねじ込んで見るか?

 

「分かりました。じゃあ私の知り合いの映画監督に頼んでみますのでちょっとやって見ますか?」

「え!?」

「大丈夫です。失敗したら上原パイセンに体張って貰いましょう」

「カミキさんが責任取るんじゃないんですか!?」

 

 黒川は大きな声でツッコミ入れたけど……

 

「任せろ!……黒川安心して失敗して来い! ケツは俺が拭いてやる」

 

 上原パイセンが黒川を安心させるようにそう言って両肩に手を置くが……なんだろう? 上原パイセンがそう言うと危ない意味にしか聞こえないんだけど……?

 

「失敗なんかしませんよ!」

 

 黒川はそう言うとほっぺをぷくーっと膨らまして大股で稽古場に行ってしまった。

 

「……ところで黒川を何の映画に出す気だ?」

「ええ、幽幻〇士の日本版を作りたいって言ってましたので主役のテンテン役にですね」

「それはセーフなのか!?」

 

 まぁー名前は変えるだろけど……個人的には誰がスイカ頭をやるのか非常に気になる作品だ。

 

「ところで幽〇道士って何?」

「ええ、大分昔の映画なんですけど……ジャンル的にはアクションホラーコメディみたいな感じですね」

「主役のテンテンってどんなの?」

「すっごい可愛い少女ですね。あまりの可愛さに社会現象になったぐらいです」

「私がやるわ!」

「……それよりもかなは事務所の契約の確認ですね」

「ちょっと誤魔化さないでよカミキ!」

 

 いや、黒川にもチャンス上げたって良いんじゃないか?

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