カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第64話

「「御馳走様でした」」

 

 不知火姉妹は巨大なおにぎりを見事に完食して満足にしていたけれど……あのおにぎりには具が入ってる様には見えなかった。

 

「……あの大きさのおにぎりが一体どこに収納されるの?」

 

 かなはぼそっと呟いていたけれど……マジレスするならば不知火姉妹の消化能力が常人以上の可能性があり、溶けて無くなったんじゃねーかな? 知らんけど……

 

「……子供はいっぱい食べると成長しますからね」

「その割にはカミキは小さいわね」

「私は成長期の時には栄養不足でしたから仕方がありません」

 

 まー食事以外にも睡眠不足に夜の営業と色々と不摂生があった訳なので身長が低いのは仕方が無いが……身長が低いからこそ見える世界があるのだ。

 

「モデルのカミキヒカルさんですよね?」

 

 不知火ころもは笑顔で訪ねて来たけど、これは耐性の無い男性ならばいちころ何だろうな……

 

「ええ、そうですけどご存じですか?」

「私の通ってる学校で良く話題になりますからね~可愛い恰好したと思えばスーツなんかも映えますしすっごい人気なんですよ!」

 

 ころもがそう言うとフリルは無表情ながらもコクコクと頷いて同意を示すが……とは言っても、どの年代も満遍なく見るかって言えばそういう訳じゃ無いし、あくまで若い子をターゲットにしてるので、流行りが終わればそれまでだから左手団扇で寛げる訳じゃないので、今は良いけど先の事を考えると長くても5年程度しか持たないと思うんだよな俺の年齢的にも……

 

「そう言って頂けると凄く嬉しいですね」

 

 それはそれとして褒められれば嬉しいものだ。

 

「そうだ! カミキさんって役者もやってますよね? 何かアドバイスってお願い出来ますか?」

 

 ”役者も”じゃなくてどちらかと言えば”モデルも”やってるが正しいけど……まぁー相手からすれば卵が先か鶏が先かって位どうでも良いな。

 

「うーんアドバイスって言われましても……私は今回台本を見てませんから全体の流れが分からないですよ」

「私のだけど見て」

 

 フリルが自身の台本を俺に渡してきたけど……うーんこういうのって実はあんまり良く無いんだよな~

 今回は俺の事を知ってる監督だから特に気にしないだろうけど……指示系統は乱さない方が良いのは当たり前なのだ。

 チラッと監督の方を見ると監督もこっちを見ており拝むポーズをしている所からも寧ろお願いしてる。

 

「……わかりました。じゃあちょっと見させて貰いますね」

 

 フリルが差し出した台本を受け取りパラパラとめくりながらこの映画のテンテンの人物像を想像する。

 

 原作同様孤児ではあるものの……金お姉さんを本当の姉の様に慕っている事から甘えん坊ではあるものの、相変わらずのお転婆でもある。

 アクションシーンに関しては原作はワイヤーアクションを取り入れていたけれど、スタントマンらしき人物は居ないが、これは不知火姉妹が実際にやるのだろうか? まーゆっくり動いて早送りってのが一番無難ではあるものの……中国拳法特有の凝った動きは無理だから、そこはCGか何かで被せるのだろう。

 今人気のあるアイドルに傷が付いたらそれこそ賠償金がどうなるか分かったもんじゃ無いからな。

 となると……俺が伝えるべきアドバイスはあくまで人物像を伝える位が良いかもしれないな

 

「……そうですね。台本を見た感じだと、金お姉さんを本当の姉の様に慕っているので、姉に対しての愛情を表現を強調する位が良いと思います」

「……ころもお姉ちゃんに普段と同じ接し方じゃだめなの?」

 

 フリルは無表情でそう言うけど……君達姉妹には今日初めてあったから、姉妹の普段を俺は知らんよ?

 

「……普段はどんな感じなんですか?」

 

 ころもにそう尋ねると困った感じで笑いながら答えた。

 

「フリルちゃんは……すり寄って来るタイプじゃあないかなー?」

「……テンテンとは真逆ですね」

「真逆……じゃあ逆の事すれば……」

 

 俺がそう言うとフリルはブツブツと何か言い始めたけれど……これは役者あるあるなので良いとしよう。

 

「じゃあ私達は離れるね~」

「あっカミキさんアドバイスありがとうございました」

「いえいえ、頑張ってくださいね」

 

 不知火姉妹はそう言って離れてしまった。

 俺個人の考えでは自分と正反対の人間を演じるのは意外と簡単だと思う。

 相手に対して普段と反対の事ををすれば良いだけだし……後は監督がどうにかするだろう。

 

 俺は気楽にそう思いつつも撮影が再開するのを待っていた。

 

「カミキさん……この後のシーンだけど私達ってどうするんですか?」

 

 黒川はいつのまにか監督の所から戻って来て俺に尋ねてきたが……

 

「黒川さんはご飯食べましたか? まだ時間はあるので早く食べた方が良いですよ?」

「……いえ、少しでも良い演技をしたいのでもうちょっとだけ役作りしたいです」

「そうは言ってもですね。次の出番は10秒程度ですし……役作りも何もこんな大きな札を顔に着けてるので、表情は見えないですしピョンピョンするだけですよ」

 

 そして、その10秒のシーンで俺達の出番は終了なのだ。

 

「そ、そうなんですか? ちなみに……カミキさんとかなちゃんはこの後終わったら帰るんですか?」

「私はカミキが帰るなら一緒に帰るけど」

「私も今日はこの後仕事は無いので帰りますね」

「……出来れば演技の事で相談したいですけど?」

「それは……撮影が終わったら場所変えてからにしましょうか」

「分かりました」

 

 とりあえず黒川も納得してくれた様で自身のお弁当を取り出して食べ始めたが……

 

「あかねのお弁当を見ると……やっぱりニノのお弁当は特に異彩放つわね」

「ニノのは見た目も悪くないですし、味だって良かったと思いますけど?」

「量が凄かったじゃない! あんなのフードファイターのレベルよ!」

 

 そうかなぁ~? そうかもしれないが……もしそうだとしても、カナンが良く食べるからだと思うけどなぁ~

 

「ま、なんにせよ。食べられないのは辛いですからね」

「物には限度ってものがあるわよ」

 

 かなからのありがたい言葉を受け止めつつも休憩時間は過ぎて行った。

 黒川は急いでお弁当を食べ始めたが食べ方が小動物みたいなので、微笑ましいけれど……

 

「黒川さん? そんなに慌てて食べなくてもお弁当は逃げませんし、ご飯くらいはゆっくり食べた方が良いですよ?」

「でも……私こんな良い機会だからもっと頑張りたいんです」

「慌てたって演技力は一朝一夕でどうにかなるものじゃないわよ?」

「かなちゃんと違って……私は役が無かったから爪痕残さないといけないの!」

 

 確かに子役の仕事があんまりなかった黒川の焦りは分かるけど……そんなに焦っても失敗するだけなんだよな。

 

「じゃあ黒川さんは爪痕を残すには今回どうすれば良いと思いますか?」

「それは……誰よりも凄い演技をする事ですよね?」

 

 何でか皆勘違いするけれど……爪痕を残すってのはここぞって時に活躍する事であって、凄い演技をする事ではない

 

「……まずはその辺りからちゃんと教えて行かないといけないな」

 

 目立つ事をするのは決して良い事では無いのだから……

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